2013 Fiscal Year Research-status Report
17世紀前半における知の基軸としての光学ーデカルトとその論争者を通してー
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24520093
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Research Institution | Otemon Gakuin University |
Principal Investigator |
武田 裕紀 追手門学院大学, 基盤教育機構, 准教授 (50351721)
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Keywords | 光学 / メルセンヌ / デカルト |
Research Abstract |
メルセンヌの光学研究。メルセンヌは決して独創的な思想家ではないし、体系的な思想の持ち主でもない。いくつかの著作も、様々な学者の見解をいわば剽窃する形で構成されている場合が多い。だがそれだけに、メルセンヌを研究することは、17世紀前半の学問的状況を、ある特定の教義(アリストテレス主義、機械論など)の相のもとに見るのではなく、非党派的な観点で眺めるための視座と、翻って、デカルトやホッブズなどの個性的な思想家の主張の意義を測定するための参照軸を提供することになる。こうした見込みのもと、1637年から1640年にかけてのメルセンヌとデカルトの往復書簡を全訳し、そのうち1638年7月までの書簡を『デカルト全書簡集』第二巻として刊行した。この中には、メルセンヌを介しておこなわれたフェルマとデカルトによる光学論争が含まれている。またこの作業と平行して、1638年8月から1639年12月までのデカルトとメルセンヌの往復書簡を訳出し、これは2015年2月に研究成果公開促進費を得て出版される予定である。ここでは、光学の技術的な側面、すなわちレンズの磨き方や、反射望遠鏡の作成法に関する、かなり具体的な記述が確認され、今後の研究のための準備的な作業を終えることができた。これらは、ほとんど研究者の関心を引いていないテーマであるが、Correspondances du Pere Marin MersenneにおけるWaardの注釈やデカルト『屈折光学』の記述を調査し、適切な訳注を付すことができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究課題はデカルトとその論争者という観点から光学を検討することを目的としているが、そのためには、まずデカルトと実際に論争した人物とデカルトとの書簡を調査しなければならない。その作業は、順調に進んでおり、『デカルト全書簡集』第二巻として、刊行することができ、引き続く第三巻も、2014年度中に刊行が決まっており、そのための準備も2013年度中にきわめて順調に進んでいる。現在、6月の入稿に向けて、最終チェックの段階である。
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Strategy for Future Research Activity |
資料の翻訳は終了しているが、もっとも豊かなエディションであるCorrespondances du Pere MersenneのCornelis de Waardによる注釈は、まだすべてを検討し終えたわけではない。これらのうち、基本的な情報は、翻訳内の訳注に納めているが、より個別的な問題については、論文によって問題点を明らかにしていきたい。とくにレンズ研磨に関する技術的な方法ないしその困難については、一次文献の豊富さに比して先行研究が少なく、探求する余地がある。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
遠方で開催される国内学会、研究会に参加する機会が、予定より少なかったため。 申請段階では予定していなかったが、Andre Charrak氏を招聘して、大阪国際会議場(グランキューブ)にて、Gianni Paganini氏とともに、「デカルトと同時代人Descartes et ses contemporains」と題した国際コロックを開催する予定である。
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