2012 Fiscal Year Research-status Report
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24520096
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | International Research Center for Japanese Studies |
Principal Investigator |
末木 文美士 国際日本文化研究センター, 研究部, 教授 (90114511)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 密教 / 京都学派 / 世界哲学会議 / 中日仏学会議 |
Research Abstract |
本研究の目的は、日本中世仏教の最新の研究を推し進めるとともに、それを現代哲学にどのように応用できるかを検討することを目的としている。そのために、平成24年度は3回の研究会を開催し、この問題を討議した。 第1回9月9日(国際日本文化研究センター)ーー阿部泰郎、井上克人、永井晋、西平直、末木文美士の参加で、この問題に関して、自由討論を行った。とくに中世密教をどのように見たらよいかという問題をめぐって議論が活発に行われた。 第2回9月10日(法蔵館)ーー前川健一、米田真理子、西村玲、藤井淳の諸氏の参加で、キリシタン文献『妙貞問答』について討論した。 第3回12月2日(名古屋市博物館)ーー阿部泰郎氏他、13名の参加で、同博物館開催の「大須観音展」を参観するとともに、それに関連する討論を行った。 以上のような研究会を開催するとともに、大須観音真福寺の調査を進め、2013年3月には、『中世禅籍叢刊』第1巻栄西集(臨川書店)を刊行した。これは、末木の責任編集で、栄西に関する新出資料(改偏教主決など)を多数収録し、従来禅僧としてしか見られていなかった栄西が、じつは密教に関して非常に重要な成果を上げていたことを明らかにした。このことは、従来仏教を哲学的に考えるうえで、純粋禅や浄土教を中心に見ていたことに対して反省を促し、密教をどのように組み込むかという重要な問題を提起することになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の計画としては、①日本中世仏教の思惟の典型となる文献の収集・解読、②新しい比較思想史研究方法論に関する文献の収集・解読の二つを主要な目標として掲げた。このうち、①に関しては、大須観音真福寺その他の中世資料の調査を行い、「研究実績の概要」に記したように、栄西関係の資料を『中世禅籍叢刊』第1巻にまとめて出版できた。その他にも、中世の重要な潮流である達磨宗関係の新出資料「禅家説」、並びに聖一派・安養寺流の資料も新たに発見し、調査を進めている。 ②に関しては、日本の仏教思想を比較思想的な観点でどのように見直すことができるかという問題を中心に、主として英語文献の解読を進めた。中でも、フェミニズム哲学やケアの哲学と日本思想の近似性が大きな問題となることがわかり、その方面の研究を進めた。とりわけ、日本思想の発想法をintimacy(他者親密的)として特徴づけたThomas P. Kasulis, Intimacy or Integrity、およびそれを受けて、和辻哲郎の倫理学を応用しながら、ケアやフェミニズムの倫理学を考察したErin McCarthy, Ethics Embodiedが注目される成果であることが分かった。 以上のように、二つの分野に関して、当初予定していた研究を進めることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、主として2回の海外発表を中心として、研究を進めたい。第1は、6月20日に北京で行われる中日仏学会議で、これは当初昨年度開催予定であったが、日中関係の悪化で延期されていた。近代仏教を中心として、中日の研究者間の議論が交わされる。ここでは、「日本における近代仏教」について発表を行う予定である。第2は、8月4-11日、アテネで開催される国際哲学会議(WCP)で、世界最大の哲学学会である。ここで、仏教哲学部門の責任者として司会など行うとともに、「京都学派の禅解釈」に関して発表を行う。これは、従来の京都学派解釈と異なり、田辺元の「死の哲学」を中心とした、新しい見方を提示する予定である。 以上の二つの海外発表を中心としながら、昨年以来の大須観音真福寺調査や『妙貞問答』の研究をつづけ、その成果を逐次発表していきたい。また、海外研究者として、韓国の哲学研究者許祐盛氏の招聘を考えている。 以上の成果に基づいて、平成26年度には、最終的に成果をまとめることを考えている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度は、もっとも費用が多くかかるのは、海外出張旅費であり、特にアテネ出張は長期にわたるため、飛行機運賃・現地滞在費を含めてかなりの出費が予想される。 その他は、前年度を補うものとして、パソコン関係の部品やソフトの購入、翻訳等の謝金、会議開催のための旅費などが中心となる。
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Research Products
(6 results)