2013 Fiscal Year Research-status Report
フランチェスコ・ディ・ジョルジョの芸術-15世紀後半シエナとウルビーノの芸術交流
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24520099
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
上村 清雄 千葉大学, 普遍教育センター, 教授 (60344959)
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Keywords | フランチェスコ・ディ・ジョルジョ / シエナ / ウルビーノ / フェデリコ・ダ・モンテフェルトロ / アントニオ・バリッリ / ジョヴァンニ・ディ・ステファノ / ピエトロ・ディ・フランチェスコ・オリオーリ / ペルジーノ |
Research Abstract |
本研究は、15世紀後半イタリアで活躍した中部イタリアはシエナ出身の画家、彫刻家、建築家フランチェスコ・ディ・ジョルジョ(1439―1501)を中心に、同時代のシエナと、同じく中部イタリアの宮廷都市ウルビーノとの芸術交流の実際を考察することを目的としている。フランチェスコは1477年からウルビーノ公爵フェデリコ・ダ・モンテフェルトロ(1422―82)に仕え、いずれもシエナ出身の彫刻家ジョヴァンニ・ディ・ステファノ(1444頃―記録は1502年まで)、寄木細工をよくしたアントニオ・バリッリ(1453―1516)、そして画家ピエトロ・ディ・フランチェスコ・オリオーリ(1458―96)などと共同で、公爵宮殿の造営、聖堂の建設、領地内の城砦建設をおこなった。彼は1489年にシエナに戻っている。 フランチェスコらこれらの芸術家がシエナでおこなった芸術制作をあとづけた昨年度の調査にひきつづき、今年度はこれらの芸術家がウルビーノを中心に展開した活動に焦点をあてて、作品調査を文献収集とあわせておこない基本データの入手に努めた。加えてウルビーノの公爵宮殿内小書斎(ストゥディオーロ)の寄木細工装飾の熟覧に加えて、アントニオ・バリッリの活動に注目して実作品の精査をなした。残念ながら実見できなかったものの2012年にウルビーノの国立マルケ美術館で開催された、「理想都市:ピエロ・デッラ・フランチェスカからラファエッロまでのウルビーノにおけるルネサンスのユートピア」展は新しい提言に満ち、本研究にとってもまことに重要である。同展がもたらした具体的な成果について、ウルビーノにおいてマリア・ロザリア・ヴァラッツィ現マルケ州歴史・美術・民俗遺産総監督局長、シエナではアレッサンドロ・アンジェリーニ、シエナ大学准教授、そしてアンドレア・デ・マルキ、フィレンツェ大学准教授とフィレンツェにて意見交換をなした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
フランチェスコ・ディ・ジョルジョをはじめとするシエナの芸術家がウルビーノを中心におこなった活動に注目し、基本情報の入手を文献収集とあわせておこなった。とりわけウルビーノの公爵宮殿内ストゥディオーロの寄木細工の精査に加えて、アントニオ・バリッリの活動に注目し、彼が1484年から89年にファーノのサンタ・マリア・ヌォーヴァ聖堂内聖職者祈祷席に制作した寄木装飾の熟覧を実施した。 2012年にウルビーノの国立マルケ美術館で開催された「理想都市」展は、同美術館に所蔵されている1480年代に制作された同名の板絵を中心に、15世紀後半にウルビーノに展開した遠近法による空間表現の歴史をあとづけた展覧会であり、この作品をフランチェスコに帰属する積極的な意見が提出されているように同展覧会は本研究において重要な意義を有している。同展の監修者であるヴァラッツィ局長と展覧会の具体的な成果について、また同展に啓発されて、現在アメリカはボルティモアに所蔵されている「理想都市」のパネルを中心にシエナの芸術家の全面的な関与を主張する論考をシエナで開催された研究学会にて発表したアンジェリーニ准教授、そして同学会に同じく参加しペルジーノ(1450頃-1523)の貢献を重視する意見を述べているアンドレア・デ・マルキ准教授と意見交換をなした。 今年度はこの展覧会カタログおよび関連論考を入手することができ、さらにアンジェリーニ氏およびデ・マルキ氏の貴重な助言を得たことで、あらためて「理想都市」を成立させ、シエナとウルビーノとの芸術交流を可能とした芸術形成の問題を再考する糸口を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
アントニオ・バリッリの活動に注目し、ひきつづきファーノのサンタ・マリア・ヌォーヴァ聖堂、そしてバリッリの関与が指摘されている同じくマルケ地方はぺーザロのサンタゴスティーノ聖堂内聖職者祈祷席の寄木装飾など関連作品の熟覧を実施する。 またぺルジーノ芸術との関連に留意しながら、ウルビーノでフランチェスコの指導のもとに活動した画家オリオーリあるいは「グリゼルダの画家」と呼ばれるシエナ出身の逸名画家、そして同じくシエナ出身の彫刻家ジョヴァンニ・ディ・ステファノの作品調査および文献収集を進める。 同時に、ウルビーノで活動したこれらシエナの芸術家がシエナ帰還後に展開した活動に注目し、シエナにもたらされた新しい芸術上の特徴について検証をおこなう。 以上の調査を踏まえて、ヴァラッツィ局長、アンジェリーニ准教授、デ・マルキ准教授など研究者との再度の意見交換を経て、フランチェスコ・ディ・ジョルジョを中心とする15世紀後半におけるシエナとウルビーノの芸術交流について研究報告書を作成する。
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