2017 Fiscal Year Annual Research Report
Technical Development of the Sevres Manufactory in the 19th century and Oriental Ceramic
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24520105
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Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
今井 祐子 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 准教授 (00377467)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2018-03-31
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Keywords | 美術史 / 陶磁史 / フランス文化史 / ジャポニスム / 日仏文化交流史 / 国際情報交換(フランス) |
Outline of Annual Research Achievements |
平成29年度には、得られた新知見の一部を講演会、論文、新聞コラム等で発表した。研究期間全体を通じて実施した研究の成果は、以下の3点に要約できる知見を得たことである。このうち新硬質磁器については、目下、本研究を発展させた国際共同研究を実施中である。 (1)装飾技法: 19世紀セーヴルを代表する装飾技法のパット・シュル・パットは、中国磁器の技法等から想を得て考案された。民窯では19世紀前半、セーヴルでは1849年から試作が始まったこの技法は、泥漿(クリーム状の素地土)を使って装飾文様を表す点に特徴がある。セーヴルでは、この技法は段階的に少しずつ変化を遂げ、青磁色や濃色の地色の上に白泥漿で文様を表す基本スタイルが作られた後、多彩な色泥漿でも文様を表すより複雑な表現へと更なる変化を遂げた。文様の東洋趣味においては、中国趣味よりはむしろ、動植物をアシンメトリー(左右非対称)の構図で描く日本趣味が好まれた。 (2)素地: 19世紀セーヴルの最大の技術開発は、新硬質磁器の開発である。鮮やかな色釉やエナメル顔料と調和する中国磁器に似た素地を作るために、セーヴルの化学者は中国磁器を化学分析した上で、従来の硬質磁器よりも低温(1280℃)で焼成できる新しい硬質磁器の開発に成功した。これは多彩な装飾と調和する理想的な支持体となった。19世紀末のセーヴルでは、新硬質磁器と同じ温度で焼成できる炻器素地の開発も行われた。 (3)釉薬と顔料: 19世紀末のセーヴルでは、高温焼成(1280℃)される新硬質磁器と炻器のいずれにも調和する色釉と顔料が開発され、その色数が増加した。 本研究では、19世紀のセーヴル製作所が、多彩な装飾で飾った芸術作品を作るために、東洋陶磁、特に中国磁器を参考にして装飾技法・素地(泥漿)・色釉・顔料の技術開発を鋭意行い、色彩表現の幅を拡大させていったことを明らかにした。
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