2012 Fiscal Year Research-status Report
15世紀~17世紀日本絵画における中国主題の受容と変容
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24520108
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
並木 誠士 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (50211446)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 狩野派 |
Research Abstract |
平成24年度は、中国で成立した主題のひとつである韃靼人図をとりあげて研究をおこない、その成果の一端を美学会西部会で「韃靼人図の初期的様相-行列を描く韃靼人図をてがかりに」として研究発表した。具体的には、九州国立博物館所蔵作品、アメリカ個人所蔵作品、および、台湾・故宮博物院所蔵文姫観猟図などを分析の対象として、これまで注目されてこなかった韃靼人図における行列を考えることにより、この主題が本来は物語性のある内容であったという点、それが伝来し、絵画化されるにあたり、物語的要素に対する理解が希薄になり、むしろ、異国の風俗・風習に対して関心が向けられるようになったという点、そして、その物語の名残として、画面の中に、韃靼人の狩猟や打毬を見守る人物が描かれていることを指摘した。 また、わが国で韃靼人図が受容される状況については、初期的な段階が狩野宗秀によるサンフランシスコ・アジア美術館本や九博本であり、その系譜が変容するのは、狩野探幽の時期であることも示唆した。探幽は『学古帖』により韃靼人図と李安忠との関係を示すだけでなく、大倉集古館所蔵の探幽縮図において、巻物形式の韃靼人図に取材していることが明らかであり、そのような背景が新しい韃靼人図を生み出したと論じた。また、それが探幽様式と言われる紙本墨画淡彩の様式で表現されていることも指摘した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成24年度に調査をおこなった作品も含めて、これまで調査した韃靼人図についての現時点での見解は、平成24年12月の美学会における口頭発表で披露したため。この口頭発表の内容については、加筆して平成25年度中に学会誌『美学』に投稿する予定で、現在準備を進めている。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は韃靼人図を中心に考察をしたため、25年度以降は、帝鑑図、蘭亭曲水図などについての研究を進めてゆき、15世紀から17世紀における日本の、中国画題受容のあり方について総合的にまとめてゆきたいと考えている。具体的には、狩野山楽における帝鑑図の絵画化とその展開、狩野山雪における蘭亭曲水図の絵画化を対象とする。狩野派の作品研究が中心となるが、手本となった中国絵画の存在とそのあり方についてもできるかぎり作品の調査を進めてゆく。そのために、台湾・故宮博物院での調査を予定している。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内にある作品の調査が中心となるため、おもに調査旅費により、作品調査をおこなう。なかでも、台湾・故宮博物院での中国絵画調査を中心として進めてゆく予定である。
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