2014 Fiscal Year Annual Research Report
15世紀~17世紀日本絵画における中国主題の受容と変容
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24520108
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Research Institution | Kyoto Institute of Technology |
Principal Investigator |
並木 誠士 京都工芸繊維大学, 工芸科学研究科, 教授 (50211446)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 流書手鑑 / 瀟湘八景図 / 韃靼人図 / 狩野派 / 中国絵画 / 君台観左右帳記 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度であるため、これまでの調査結果をまとめて、論文にする作業をすすめた。具体的には、狩野派において、江戸時代初期の狩野探幽、尚信、安信、常信の周辺でさかんに制作されるにようになる一連の流書手鑑の類(大和文華館、栃木県立博物館、福岡市立美術館、東京国立博物館など)において収録されている中国絵画の実態と、仏日庵公物目録、御物御絵目録、君台観左右帳記などの文献史料から判明する、室町将軍家を中心とする14世紀以来の中国受容の実態、および、日本国内に現存する、また、売立目録等により現存したことが確認できる作例とを総体的に比較検討した。 この作業により、室町将軍家を中心とする中国絵画受容の実態と狩野派における中国絵画咀嚼の実態のあいだには微妙なズレがあること、そして、そのズレは、狩野探幽以前の以後で顕著である点から、狩野派における中国絵画受容については、いわゆる古狩野と探幽以降とで大きく変化をしており、その結果としてさかんに制作されたのが、一連の流書手鑑の類であることを明らかにし、同時に、流書手鑑の制作が、探幽以降の中国絵画受容の基本的な方向性を決定づけたことがわかった。 また、中国から伝来した主題のなかで、とくに瀟湘八景図と韃靼人図に焦点をあてて、その受容と展開を具体的に跡づける作業をおこなった。瀟湘八景図の受容史においては、これまでこの文脈で取りあげられることの少なかった朝鮮半島における瀟湘八景図作品を視野に入れて、押絵貼という表現形式との関係も含め考察した。韃靼人図においては、九博本は金地着色の韃靼人図としては最初期の事例であることを論じ、同時に、李按中の伝承と実作品との関係を検討した。
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