2012 Fiscal Year Research-status Report
住吉派の事例にみる古典受容の在り方の解明-画像のパターン分析を中心に-
Project/Area Number |
24520112
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
下原 美保 鹿児島大学, 教育学部, 教授 (20284862)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
江村 知子 独立行政法人国立文化財機構東京文化財研究所, その他部局等, 研究員 (20350382)
高岸 輝 東京大学, 人文社会系研究科, 准教授 (80416263)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 住吉派 / 古典編集 / 画像分析 / 琳派 / 近世やまと絵 / 中世やまと絵 / 国際情報交換(アメリカ・フランス・ドイツ) |
Research Abstract |
【情報交換会】 2012年8月9日に鹿児島大学教育学部において情報交換会を行った。参加者は研究代表者の下原と分担者の髙岸・江村、連帯研究者の佐藤及び研究補助の長友季巳(鹿児島大学理工学研究科1年)、シカゴ大学准教授のチェルシー・フォックスウェルの6名であった。下原より6月に行った寛永寺での絵巻調査の報告がなされ、髙岸からは「乙宝寺縁起絵巻」の紹介、江村からは職務内容と専門分野の紹介が行われた。また、長友からは画像分析の現状報告があり、研究手法の改変が求められた。最後にフォックスウェルから「明治維新を越えたやまと絵-住吉広賢とフェノロサ」についての研究発表が行われた。 【研究代表者・分担者の研究状況】 下原は情報交換会(8月)及び報告会(2013年3月)を主催した。下原と髙岸は、6月に寛永寺において住吉具慶筆「慈眼大師縁起絵巻」及び「元三大師縁起絵巻」の調査を行った。また、下原と長友は、2013年2月に絵巻における画像分析の先駆者である熊本大学教授の植田宏を訪ね、研究手法についてご助言いただいた。 【研究報告会】 本年度のまとめとして、2013年3月20日に東京大学文学部において報告会を開催した。参加者は、研究代表者の下原と分担者の髙岸・江村、研究協力者の赤澤真理、研究補助の長友(鹿児島大学理工学研究科1年)及び、ハーバード大学教授メリッサ・マコーミック教授とパリ国立東洋言語大学准教授エステル・ボエール・エステルの7名であった。本報告会では、赤澤より「住吉如慶・具慶の物語絵に示された古代住宅観」について、髙岸より「中世後期絵巻の様式展開」について、江村より「17世紀の古典主題表現-歌仙絵を中心に」について、下原より「住吉派における中殿御会図について-スペンサーコレクション本を中心に-」の発表があり、長友より画像分析研究の現状が報告された。最後に来年度の研究スケジュールが確認された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度における研究実施計画では、古典作品の画像分析を行うため、構図、色彩構成、モチーフのパターンモデルを作成する予定であった。そのため、画像データベースとする複数画像から局所特徴量を抽出するBag-of-Faturesで画像表現を行ったが、全絵巻データをデータベース画像とした場合、本来出力されてほしい画像が出てこない、出力されても類似度の順位が一番でないなどの問題点が明らかになった。 そこで、より着手しやすく、結果を出しやすい方法、つまり、画像中の直線を抽出し、建造物の斜角を割り出し、グループ化する方法を模索することにした。このことによって、時代や工房、絵師の違いが推定できると考えたからである。絵巻における画像分析の先駆者である熊本大学教授の植田宏氏によると、これまでの画像分析は人の手によるトレースをもとに行われていた。しかしながら、この手法では大量画像を処理することは難しく、得られた情報にも幅があるため、本研究では画像をスキャンし、ハフ変換を行うこととした。ハフ変換とは、直角座標上の点P(x,y)を通るすべての直線が、その直線と直角に交わる垂線軸(x)との角度(θ)と、原点からの距離(ρ)で表されるため、x,yをθとρの組み合わせに変換することである。巻によって作者や時代が異なる「石山寺縁起絵巻」の各巻の代表的な場面の直線をハフ変換によって抽出すると、絵画様式の違いによって推定された時代や工房の違いが、直線データの斜角の傾向とほぼ一致することが確認できた。 一方、これまで図版化されていない近世やまと絵の作品として寛永寺所蔵の「慈眼大師縁起絵巻」「元三大師縁起絵巻」の調査を行い、画像データを入手した。 また、年度末の報告会では米・仏の研究者より海外での画像分析の研究状況についてご教示いただいた。
|
Strategy for Future Research Activity |
【画像分析】 平成24年度で確立した画像分析の手法を、住吉派の作品例と古典絵巻に適用する。住吉派の作品としては、平成24年度に調査した「慈眼大師縁起絵巻」や「元三大師縁起絵巻」(寛永寺)、本年度調査予定の住吉具慶筆「箱崎八幡縁起」(筥崎宮)、住吉如慶筆「紀州東照宮縁起絵巻」(紀州東照宮)を、古典作品としては、中世絵巻の規範となった高階隆兼筆「春日権現験記絵巻」(修復中のため図版画像を使用)や「玄奘三蔵絵伝」(藤田美術館)を用いる予定である。これらの画像分析によって得られた結果は、データベースとして蓄積し、従来の図様や文献による研究と照合していく予定である。 【作品調査】 国内では、住吉如慶の代表作であり、図版化されていない「紀州東照宮縁起絵巻」(紀州東照宮蔵)や住吉具慶筆「箱崎八幡縁起」を調査する予定である。また、住吉・板谷派関連作品約20点がリンデン美術館(ドイツ)に所蔵されていることを『ベルツ・コレクション 日本絵画』(講談社 1991年)より確認したため、本年はこれらの作品も併せて調査し、欧米に残る近世やまと絵作品の情報を収集する予定である。 【研究会・報告会】 平成25年10月に、1)絵巻における画像分析の手法、2)近世やまと絵と江戸初期の朝幕関係をテーマとした研究会(於東京)を行う予定である。1)については長友が発表し、2)については近世史の研究者を招聘し、ご講演いただく予定である。また、年度末には、研究報告会(於鹿児島)として、研究代表者、分担者による本年度の研究状況を報告する予定である。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
該当なし
|
Research Products
(9 results)