2012 Fiscal Year Research-status Report
ジャポニスム以後の日本美術・工芸研究の諸相:ジョルジュ・ド・トレッサンを中心に
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24520119
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
南 明日香 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (20329212)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 「国際情報交換」ジャポニスム(西欧、北米) / 西ヨーロッパ / 日本 / 美術研究史 / 鐔 / 20世紀初頭 |
Research Abstract |
ジャポニスム学会論文集「ジャポニスム研究32号」(2012年11月)に、「ジョルジュ・ド・トレッサンの室町時代の絵画論-水墨画はどのように評価し得たのか」の題で投稿し、査読の上掲載が決定。フランスでは装飾的な絵柄が好まれていたという従来の理解に対して、実は絵師の活動や技法など日本からの最新の研究に基づいて理解しており、中国絵画論から学んだ精神性や「心持ち」に注目し高く評価していたことを実証した。 ブルターニュ地方美術館共通開催イヴェント「ジャポニスムの領域」における国際シンポジウム「Territoires du japonisme」で「Georges de Tressan (1877-1914) (後略)」の表題で発表(9月28国立レンヌ第2大学)。トレッサンの日本研究の意義を、新資料を交えて発表。発表を踏まえた論文が論文集として2013年に出版予定。 滞仏中(9月21日~30日)に、遺族の元や装飾美術館などで鐔等に関して書簡や写真資料を調査した。その成果を元に、論文「二〇世紀初頭の鐔研究-ジョルジュ・ド・トレッサンを中心に」を「相模女子大学紀要76A」(2013年3月)に掲載。本格的な鐔の研究が20世紀初頭に始まり、日仏独で情報を交換しながら進められ、その中心にトレッサンがいたことを明らかにした。尚下記滞仏時にフランス陸軍アーカイヴで、トレッサンとその父について調査。 さらにオスカー・ミュンスターベルクの著作目録と旧蔵書の書誌を、2013年2月23日~3月12日の滞仏中でのBULAC図書館、ギメ美術館図書室及び東北大学附属図書館、同大学史料館、東京大学東洋文化研究所他で調査した上で、作成。東北帝大の購入経緯を調査。また孫のMarjorie Munsterberg氏を探しだすことに成功し、資料の提供がかない伝記上の情報が得られた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジョルジュ・ド・トレッサンに関しての調査と研究は、ほぼ予定通り遂行できた。但し、レンヌでの国際シンポジウムの論文集の出版が予定より大幅に遅れて、次年度に持ち越された。 アンリ・L・ジョリについては、ロンドンの日英協会の雑誌なども調査し著書目録はほぼ出来たが、伝記的情報がまだ不足。パリのCabinet Portierなどに問い合わせ中。 オスカー・ミュンスターベルクについては、調査の上著作目録がほぼ完成。約1600点の東アジアを中心とした彼が研究のために蒐集した旧蔵書の図書、雑誌、切り抜きのリストを作成し、ほぼ完成。ただしファイルのまま未整理の資料も多数あり、保存状態が悪いことも手伝って書誌をとるのに大変な時間を要した。なお旧蔵書は散逸しており、東北大学付属図書館以外の現在の所蔵先の確認はまだ出来ていない。帝国大学への購入にあたっての事情も調査したが、回答が得られず。ただ一人の遺族のMarjorie氏を捜し出すことが出来たので、資料の提供を得たが、それらも踏まえた成果の発表は次年度以降の予定。
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Strategy for Future Research Activity |
オスカー・ミュンスターベルクについて、息子の極東美術研究家のヒューゴ・ムンスターバーグ とも合わせて、8月初めにポーランドのシュチェチンで開催されるのIASA国際アメリカ学学会第6回大会で口頭発表が決定。その準備(英文による伝記の完成、著作雑誌初出の確認と複写、関係者の確認、同時代の評価)と英文論文の執筆を4月から7月まで予定。内容はそれぞれの伝記と著作目録紹介、日本と中国の美術工芸研究の意義について。オスカーの旧蔵書リストは、さらに執筆者それぞれの略歴の調査も合わせて完成させる。それに合わせて東北大学付属図書館等国内機関に出張する。引き続き東北帝国大学以外での購入経緯の調査、及び旧京城大学蔵書も確認。 アンリ・L・ジョリ・については、改めて8月初めに彼の居住地であったロンドンで調査予定。 ジョルジュ・ド・トレッサンについては、彼が準備と解説執筆をした鐔や漆工芸品の展覧会について、同時期に同じく装飾美術館で開催された6回の浮世絵展とも合わせて調査し、論文にまとめる予定。さらに10月19日のジャポニスム学会と畠山記念館との共催による「墨と書のジャポニスム」で、発表予定。彼の本来の職業であるフランス陸軍での役割などについては7月末にフランス陸軍アーカイヴで再調査。 この他、いつ新資料が発見もしくは提供されるか不明であり、それについては柔軟に対応したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ポーランドでの発表と、その前後のパリやロンドンでの調査のために7月に渡欧する。さらに2月にフランスと、出来れば鐔の研究家の多かった北イタリアでの調査も予定。ミュンスターベルク旧蔵書の追跡のために、短期のソウル大学図書館での調査もする。尚、2011年の計画当初に比して3割以上の円安となり、この状況が続く可能性が高く、海外旅費の使用額が大幅に増えることが予想される。東北大学付属図書館等国内出張も予定。 ドイツ語、英語、フランス語の直筆書簡などの読み取りや、外国語での論文の執筆の母語話者による添削、Exelでの大量の表作成などに対して謝金が必要とされる。 執筆論文の抜き刷りの印刷代も見込まれる。 海外流出の日本美術工芸品の里帰り展覧会などの図録や、研究書の購入は国内外で必要である。 論文の抜き刷りの献呈や国外からの大量の資料などの郵送費、pc付属品(コンピュータソフト、インク、メモリーカード等)などの消耗品、国内外の図書館での複写料金などへの使用が予定される。 なお、2013年2月末からの渡航費と、3月中の使用に対しては2013年度分に組み込まれる。
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