2013 Fiscal Year Research-status Report
ジャポニスム以後の日本美術・工芸研究の諸相:ジョルジュ・ド・トレッサンを中心に
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24520119
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Research Institution | Sagami Women's University |
Principal Investigator |
南 明日香 相模女子大学, 学芸学部, 教授 (20329212)
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Keywords | 日本美術(フランス、ドイツ、イギリス) / 日本工芸(フランス、ドイツ、アメリカ) / ジョルジュ・ド・トレッサン / ジャポニスム / ミュンスターベルク / 水墨画(フランス、ドイツ、イギリス) / 鐔(フランス、ドイツ) |
Research Abstract |
オスカー・ミュンスターベルクについて引き続き、東北大学附属図書館で調査し蔵書リストを作成。息子で東洋美術史家のヒューゴ・ムンスターバーグと合わせてIASA第6回コングレスで発表。加筆の上、論文としてReview of international American Studies 2014年9月号に掲載決定。ヒューゴについては個別研究として「東洋美術史家ヒューゴ・ムンスターバーグ(1916-1995)の軌跡ーー中国古代美術から日本の民藝まで」でまとめ、かつ同時代の東洋美術研究や民藝研究と比較。これによって、1930年代からのアメリカを中心とした東洋美術研究史が見えてきた。 トレッサンを中心とした20世紀初頭の鐔研究については、Alain Briot博士による翻訳でフランス語論文"Les etudes sur les tsubas au debut du XXe siecle: Georges de Tressan et son entourage"を発表。これによって欧米の鐔研究者にトレッサンの存在と、当時の日本と西洋での研究状況を伝えることが出来た。 19世紀末から20世紀初頭の水墨画の受容について、第三回畠山公開シンポジウム「水墨のジャポニスム」で発表。同時にワークショップを運営し報告書を作成。発表原稿を大幅加筆し「西洋における水墨画の受容ーーコレクション紹介と文献絵画史の時代」にまとめる。これで水墨画の受容の難しさとその実態、いかに西洋美術のカノンを越えて評価し得たかを跡づけることが出来た。 なお7月25日ー8月15日に仏国立美術史研究所図書館や大英図書館で、3月20日ー4月10日にベルリン東洋博物館、ハンブルク工芸美術館、ライプツィヒ工芸美術館、仏国立東洋語研究所図書館等でトレッサン、ミュンスターベルク、ペトリュッシ、ジョリ、ビニヨン等について調査した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ジョルジュ・ド・トレッサンの伝記研究及び日本研究については、仏陸軍アーカイブや遺族の元での調査により順調に進んでいる。成果をフランス語で発表することも出来た。オスカー・ミュンスターベルクについては、遺族の協力により資料の調査が進み、また学会でその成果を発表した。アンリ・L・ジョリについては資料が見つからなかった。しかし同時代のイギリスで日本美術研究に圧倒的な影響力のあった、ローレンス・ビニョンについての調査ができ、さらにラファエル・ペトリュッシなどとの交流、ペトリュッシ自身の日本美術の研究についてもパリで調査が出来た。ことに中世絵画史について、トレッサンやミュンスターベルクも含む、受容の問題について分析が進んだ。成果はジャポニスム学会主催シンポジウムで発表し、『ジャポニスム研究第33号別冊』に論文として掲載。さらにオスカーの息子でやはり東洋美術工芸研究者のヒューゴについて、調査し論文を発表。これによって対象時期以降での研究の状況が見えてきたことで、非常に見通しが良くなった。よって、「おおむね順調」と見なした。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度になる本年度はまずは単行書『ジャポニスムからジャポノロジーへ:トレッサンとミュンスターベルクの挑戦』(仮題)の執筆のために、これまでの成果を見直しかつ補充をしていくことになる。入稿は9月末を予定し、すでに出版契約と所属機関からの学術書出版助成が確定している。トレッサンについては彼をめぐる鐔研究について、フランス語で一本を発表予定。ミュンスターベルクについては蔵書目録を完成の上、著書とは別に発表を予定。 ペトリュッシとビニヨンについて、後者に宛てた書簡が保存されていることがわかったので調査したい。ただし本研究計画を立てた時点で、1ユーロを100円で消費税を5%で計上している。昨年より1ユーロは140円台、4月から消費税は8パーセントであり、予算面での調整が必要になっている。が、目下のところ最低一回の海外での調査を予定しているが、その滞在費の節約と年度を通じての消耗品購入を控えることが対応策である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
上記の25年度使用額には所属機関の会計年度に合わせて、3月20日から4月10日までに行ったパリとベルリン等での調査・研究に要した渡航費滞在費などは含まれていないため。 すでに3月20日から4月10日までパリ、リール、ベルリン、ハンブルク、ライプツィヒ等での調査・研究を行っており、これに要した渡航費・滞在費(交通費、宿泊費等)は使用している。
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