2012 Fiscal Year Research-status Report
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24520146
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
穴山 朝子 お茶の水女子大学, 教務チーム, アカデミック・アシスタント (20303000)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ドイツ / 独裁 / ナチズム / 芸術家 / 文化政策 / 芸術政策 / 教養市民層 / 知識人 |
Research Abstract |
本年度は、当初の研究計画どおり、1920年代から1945年までのヴァイマル共和国期とヒトラー政権期におけるドイツの芸術家たちの動向に対象をしぼり、調査を進めた。とくにベルリンのドイツ連邦文書館所蔵のナチ関係公文書および、南部バイエルン州レーゲンスブルク市に残されたグスタフ・ボッセ(Gustav Bosse)出版社文書との照合作業を行うことによって、独裁政権下の芸術家の言動と行動について、パターン化、データベース化作業を試みている。 これまでの調査の過程で、現地再調査によって研究の成果を補完する必要性が生じたため、平成24年7月、ドイツ各地の文書館員に書面にて調査への助言を請い、また当該領域の専門家とも書面やメール上で意見交換を行った。こうした準備を経て、研究代表者の公務の都合も考慮しつつ、年度末の2013年3月にベルリン連邦文書館において三週間超の調査を実施した。 結果として、これまでの調査に欠如していた文書を収集するだけでなく、ナチ政権の芸術家支援に関する文書、ドイツの芸術家から政府機関にあてた個人書簡や1920年代の著作権にまつわる議論に関する書類などを発見できた。また分析から得られた知見は、ナチ政権による芸術家への経済的、精神的支援や政権に対する芸術家集団の期待の重さを指摘してきた代表者の仮説を実証するものとして、本研究を大いに進展させることになった。 本年度の研究成果は最終的に単行本としてまとめる予定であり、また「ナチ政権下の芸術家 -ある出版社の人的ネットワークを手がかりに-」というテーマで次年度の日本西洋史学会で口頭報告することが決定している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、ナチ文化政策と芸術家との関係について、代表者がこの10年来行ってきた出版社文書と公文書調査の結果を集大成するとともに、ドイツの芸術家が12年のナチ政権存続に果たした役割について、何らかの新しい知見を示すことを狙っている。 なお本年度3月のベルリン調査では、非常に多くの新史料を発見・入手・精査することができ充実した調査となった。調査上の困難やトラブルもなく、本研究は順調に進展してきていると言える。 また本研究の公刊に必要となる①収集したレーゲンスブルクの出版社文書の整理、②国内外のナチズム文化史関係文献のデータベース化、③原稿校正などの作業、については、代表者一人で行うには膨大な時間がかかりすぎることが判明した。したがって、研究遂行の能率化も考え、平成25年度からは入力、チェック等作業を助手となる人物に依頼し、そのための人件費支出を予定している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度と来年度については、まずこれまでの調査、分析結果をよく吟味し、ナチ政権下の芸術家というこの研究を補完、完成させるため、年度末に再度公文書と個人史料双方を対象とした海外調査を行う。また成果の中間発表として、所属学会(日本西洋史学会など)にて報告する事になっている。 なおこのような史料分析作業と並行し、代表者のこれまでの研究成果を、広く我が国の文化政策研究やアートマネージメント研究の枠組みのなかに位置づけ、理論化する試みにも挑戦していく予定である。 また単行本の原稿作成にも出来る限り時間を割くとともに、巻末として添付する史料のデータベース化、膨大な量の文献目録を速やかに完成させたいと思っている。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
成果刊行のための原稿作成、及び文書史料のデータベース完成へ向けて、目録作成や欧文校正、論文・単行本原稿のチェック等の細かな作業が必要となる。したがって当該領域を専門とし、ドイツ語のできる大学院生等の助力を仰ぎたいと代表者は現時点で考えており、そのため本年度と来年度は、研究費のうち毎年10万円程度を謝金として支出する予定である。 なお、本研究で重要な出版社文書をもつレーゲンスブルク市文書館(ドイツ南部)での研究調査を、来年度と再来年度に計画しているため、旅費として約40万円の支出を考えている。また初年度である平成24年度に、すでに消耗品と参考文献等を購入したため、平成25年度以降は大額での物品購入はとくに予定していない。
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Research Products
(3 results)