2014 Fiscal Year Research-status Report
地方都市の復興事業におけるジャズ音楽の活用-日米地域文化の比較研究
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24520147
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
モラスキー マイク 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (80585406)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ジャズ音楽 / 音楽文化 / 文化復興 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度の研究では、日米両国での現地調査を中心に次の問いを究明しようとしたーー(1)日米両国の地方都市におけるジャズ音楽の文化的位置づけが、近年においてどのように変化し、それが音楽現場(ジャズクラブやジャズ喫茶など)に対しどのような影響を及ぼしてきたか、(2)東日本大震災から三年間が過ぎた時点で、被災地で音楽のライブイベントは当初に比べ、開催する意味が薄れたように感じる主催者が多いかどうか、(3)ジャズ喫茶全盛時代がとっくに過ぎた現在では、地方都市で存続する老舗ジャズ喫茶は、地元住民にとって何を提供しているだろうか、現在の店の魅力は何だろうか。以上の一連の問題に対し、各地での音楽現場の関係者(ジャズ喫茶や音楽カフェの店主、コンサートの主催者、ミュージシャンおよび聴衆)にインタビューを実施した。 本年度の研究成果として、とりわけ三陸地方を含め岩手県の現地調査において、ジャズ喫茶にせよ、音楽のイベントを主催する現代風の(つまり、ジャズとは無関係の)カフェにせよ、レコードをかけたり、生演奏のイベントを開催したりすることは、地元人により広い文化地平を開拓する〈きっかけ〉や〈媒体〉として考えている店主が多いことが判明した。その意味では、地方都市では1960-70年代のジャズ喫茶も、現在風の(特殊な)カフェも、舶来文化を紹介する役割を兼ねた昭和初期の音楽喫茶と共通点が見出せることに気づいた。すなわち、〈文化の拠点および発信地〉として機能しており、そこに意外なる歴史の連続性が見受けられるわけである。最終年では、この点をさらに掘り下げたい。 また、今年度には国内外の国際シンポジウムで研究発表を行った。2014年8月には「ヨーロッパの日本研究学会」で被災地の調査を中心に研究報告を行い、2015年1月には成城大学で開催されたポピュラー音楽をめぐるシンポジウムでさらに詳しい研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現地調査を重ねるにつれ、当初の研究計画で予想されなかった上述の発見もあり、研究計画の一部を再考する必要が生じた。そのため、当初の研究計画通りに進んでいるとはいえないが、貴重な発見があったおかげで、最終年度の研究成果報告では、研究結果をより広い歴史的文脈のなかに位置づけることになると思っており、それによって文化史の研究者にも本研究に対する関心が高まると期待したい。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年では、引き続き現地調査を実行し、専門誌向けの論文が提出できるように、準備に着手する予定である。論文執筆の途中で、完成するのにさらなる現地調査が必要と判断した場合、研究代表者の本務校の研究助成に申請する予定である。
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Causes of Carryover |
きわめて小額であり、単に購入する予定の資料や備品が本年度の予定より多少下回っただけである。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の用途は現地調査に当てる。
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Research Products
(2 results)