2012 Fiscal Year Research-status Report
越境する雅楽~伝統音楽の海外における発信・受容と展開
Project/Area Number |
24520157
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
寺内 直子 神戸大学, その他の研究科, 教授 (10314452)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 雅楽 / 文化交流 / 伝統文化 / 移民 |
Research Abstract |
海外で実践される雅楽は、1)日本から行く演奏者による公演、ワークショップ、講義(以下、「渡航型」と呼ぶ)と、2)現地に滞在する日本人、日系人、その他による実践(以下、「滞在型」とする)の二つに大別される。2)はさらに、日系人社会が大きく発達した地域と、そうでない地域の実践に分けられる。さらに各々の実践は、都市の規模、人種の構成、歴史、文化的背景によって、演奏される雅楽の種類、演奏の仕方、担い手、演奏の脈絡など様々な点で、微妙に異なる様相を呈する。 初年度は、まず、国内調査で、渡航型の実践者として、雅楽演奏団体の伶楽舍、および、伶楽舎メンバーの個人への聞き取りを行った。具体的には、伶楽舎の6月と12月の国内の演奏会、および、パリ(石井真木作曲・バレエ「輝夜姫」パリオペラ座公演)とニューヨークの演奏会(於コロムビア大学、宮田まゆみ氏、中村仁美氏、笹本武志氏)の取材を行った。 一方、滞在型の事例の海外調査も行い、ドイツとニューヨークの調査を行った。具体的には、ケルン大学雅楽アンサンブルを率いている志水美郎氏へのインタビューと練習見学、ニューヨークでは、コロムビア大学中世日本研究所主催の日本音楽シンポジウムに参加、コロムビア大の雅楽プログラムの見学もした。さらに、NYで日本音楽、日本の音楽家の演奏を支援している、Music from Japanの小野真理氏への聞き取りも行った。当初、二年目に調査予定だった、UCLA雅楽のもとを作ったR. ガルフィアス氏も、たまたま24年度中に来日したため、インタビューを行った。 また、海外での日本音楽の受け入れ、あるいは日本文化理解に関する状況を広く把握するために、イタリアにおけるほとんど唯一の日本音楽研究者のL.ガリアーノ氏へのインタビュー、ベルギーの楽器博物館における日本楽器の展示に関しても調査を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在まで、調査の順番は多少前後しているが、国内外のイベント、演奏会のタイミングをよくつかみ、予定通りの団体への取材ができている。三年計画で、取材・調査できる、ほぼ三分の一の作業は達成できた。また、収集した資料の分析については、インタビューの書起しとメモの整理も、計画通りに進んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
二年目は、国内の団体として、セミプロ・アマチュアによって構成される民間の雅楽団体で聞き取りを行う。 具体的には、現在も活発に海外活動を行う東京の日本雅楽会と大阪の雅亮会の調査を行う。海外公演を行った経 緯、公演内容と背景の意図、マネジメントなどについて聞き取りを行う。 カリフォルニアのUCLAで調査を行う。応募者は、1996年にUCLAでも雅楽の実技指導と講義を行う経験をした。UCLAの雅楽コースは、宮内庁のアメリカ公演をきっかけに1960年代に、雅楽研究で博士号を取得したロベルト・ガルフィアス教授によって創設された。ガルフィアス氏は昨年度たまたま日本に滞在したので、この機にすでにインタビューを行った。25年度は現地で活動する日系人、天理教のユゲの活動をインタビューする。また、また現在のUCLAの民族音楽学科の教授・ティム・ライス氏にも、UCLAの民族音楽コース全体の現状を聞く。 ハワイのホノルルでも調査を行う。ハワイ大学では、やはり1960年頃から民族音楽のバーバラ・スミス教授(故人)によって雅楽サークルが立ち上げられた。指導者は、ホノルルの天理教の社本正登司氏である。社本氏に大学の雅楽サークルの活動と歴史、ハワイにおける天理教の雅楽の活動などについて聞き取りを行う。 その他、カナダもしくは西ヨーロッパで予定されている公演など、適宜フォーローしながら、演奏に関わる人々への取材を行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国内旅費(東京での取材)4万円程度、国外取材経費(アメリカ西海岸、ハワイ、西ヨーロッパもしくはカナダ)に86万円程度、音楽・文化人類学関係書籍と視聴覚資料に約10万円。
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Research Products
(5 results)