2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520159
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
河添 達也 島根大学, 教育学部, 教授 (20273914)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 作曲 / 比較研究 / 日本人作曲家 / 現代音楽 / 湯浅譲二 / 細川俊夫 |
Research Abstract |
作曲家 湯浅譲二(1929-)と細川俊夫(1955-)の作品および思考を通して、「日本的」と評される作曲作品のコンテクストを探り、さらに同時代の西洋人作品との比較分析を行うことで、日本人作曲家作品の持つ独創性を探ろうとする試みが、本研究の全体構想である。 平成24年度は、湯浅作品を中心に楽曲分析と演奏法研究を行った。湯浅作品の楽曲分析では「始原への眼差し」を中心として行い、演奏法研究はフルート独奏のための「ドメイン」を取り上げた。また「室内オーケストラのためのプロジェクション」については楽曲分析と演奏法研究の双方について取扱い、「プレリュードとフーガ」(J.S.バッハ作曲・平均律1巻・変ロ短調 / 湯浅編曲)については、編曲法および演奏法研究を行った。この「プレリュードとフーガ」は島根大学吹奏楽団の委嘱編曲作品であり、今回、演奏を参考として修正を重ね、最終稿を編集することができたので、近々出版できる予定となった。本研究の成果によって、湯浅氏の編曲作品が国内外で演奏される機会を提供できることは、我が国の吹奏楽界のみならず、国内外の音楽界の発展へ寄与できる。 楽曲分析の研究成果は、随時、講義形式で島根大学音楽教育専門科目群の中で公表してきたが、特に「始原への眼差し」の分析成果については、2013年12月発行予定の島根大学教育学部研究紀要で公表予定である。 「室内オーケストラのためのプロジェクション」は、島根県松江市の「市民大学講座」において実演を伴う楽曲分析を行い、一般音楽愛好家向けへの学術成果の公表として特筆できる。 これらの研究成果をもとに、日本人作曲家の独創性に着目した楽曲を研究者自身が作曲し、演奏による公表も行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度の計画では、(1)楽譜による作品分析、(2)湯浅氏へのインタビューと新作委嘱、(3)湯浅作品における演奏法研究、の3点を掲げていた。 このうち、(1)については湯浅作品の「始原への眼差し」、「室内オーケストラのためのプロジェクション」、および同氏編曲「プレリュードとフーガ」について実施し、その研究成果は2013年12月発行の島根大学教育学部研究紀要に投稿予定であること。 (2)については、2012年11月11日に東京でインタビューを行い、その内容を、上述した研究紀要に盛り込むことや、次年度の合唱作品研究へと発展させる目途がついていること。さらに、吹奏楽編曲作品の修正版を委嘱し、完成稿を電子化して出版への目途を立てることができたこと。 (3)については、2012年度の島根大学管弦楽団定期演奏会および同吹奏楽団定期演奏会において「室内オーケストラのためのプロジェクション」と「バッハ作曲 / 湯浅編曲(委嘱)プレリュードとフーガ」を演奏したこと。また、同氏のフルート独奏曲「ドメイン」を、フルート奏者である本田桂子氏によって学内で試演したこと。 研究者のスケジュールの都合上、国外における新作初演に立ち会うことができず、当初予定の国外旅費に関しては次年度への繰り越しを行った。以上のことから、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
(1)平成24年度に引き続き、湯浅作品についての研究を継続する。 これまでの作品分析の成果を研究紀要で公表するとともに、平成25年度は、特に湯浅氏の合唱作品を(研究者が主宰する)現代音楽セミナーで取り上げ、集中的に分析・演奏研究を行う。 (2)もう一人の研究対象作曲家である細川俊夫氏の作品群についても、新曲の生成過程への参加や鑑賞を手始めとして、作品研究と演奏法研究に着手したい。特に、氏のオペラ「王女メディア」の序曲である「Medea Fragments I」を島根大学管弦楽団定期演奏会で取り上げたい。この作品の序曲単独の演奏は、本邦初演となる予定である。また細川作品に関する精緻な作品研究は、これまでわが国ではほとんど公表されていないことから、本人へのインタビューを交え、細川研究の先鞭となりうる情報を提供したい。 (3)比較研究の対象として、P.ブーレーズ、M.ジャレル、I.フェデレらの作品分析も試みたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
【消耗品費】 湯浅、細川作品および比較対象在外作曲家の作品研究と演奏法研究における楽譜の購入・借用費用、CD・DVD等の記録音源の購入、記録用メディア等にかかる経費。 【旅費】 平成24年度内に研究対象作品の国外初演に立ち会えなかったため、当該の国外旅費が未使用となった。そこで平成25年度以降、この目的を達成するために、研究対象作曲家の新曲をはじめとする演奏鑑賞および生成過程への参加、作曲者へのインタビュー等のための旅費を計上する。 【謝金】 演奏法研究において、必要な特殊奏法の研究のため、演奏家による専門的知識の提供を受ける謝金、外国語論文の翻訳や電子情報処理にかかる謝金等を想定する。平成24年度に予定していた国外初演における作曲者へのインタビューや演奏者による奏法研究謝金が未使用であり(上記【旅費】欄にも記載)、この経費も含めた使用を計画している。
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Research Products
(4 results)