2012 Fiscal Year Research-status Report
MEDICAL HUMANITIES DATABASE JAPAN
Project/Area Number |
24520163
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 医療人文学 |
Research Abstract |
本研究は医療人文学に関する研究である。本研究の目的は,医師の英語コミュニケーション能力の育成を目指し,文学作品や映画を利用した日本初の医療人文学データベース(MHDJ)を構築することである。本研究の概念は,ニューヨーク大学医学部で構築された世界初の医療人文学のデータベースをもとにしている。そのデータベースには,現在2,500以上の文学と250以上の映画が収録されている。本研究は,日本人に特化しているという点で独創的であり,外国語として英語を学んでいる学習者を対象にした医療人文学データベースという点でも世界初の試みである。本研究で構築するMHDJは英語と日本語で表記し,日本の学生や医療人が英語力向上のために使用することを想定している。本研究では,まずデータベースに収録する文学作品や映画を検証するために,20の文学作品と28のグラフィック小説,40の映画を選定した。選定の際は,日本で容易に利用することができ,手頃な価格であることを基準とした。そのため,MHDJに適切な文学作品や映画もあったが,その基準を満たさず選定できないものもあった。最終的に,英米の20の映画を選定し,それぞれに英語で注釈を付記した。さらに,それらを6つの分野に分類し,医学的キーワードを付した。文学作品に関しては,文と絵の両方で物語を伝えているグラフィック小説が英語学習者にとっては理想的でMHDJに最適なジャンルだという結論に達した。そこで医学部4年生を対象にグラフィック小説を用いて研究を行った結果,グラフィック小説は学生の読むことに対する関心とモティベーションを高めることが明らかになった。グラフィック小説は日本においてもインターネット経由で容易に購入でき,価格も1,000~1,500円と安価である。そこで,データベースに収録する作品として,17のグラフィック小説を選定し,それぞれに英語で注釈を付記した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の1年目の目標は,MHDJに収録する40の文学作品と20の映画を選定することであった。映画に関しては,この目標を達成し,データベースに収録するべき20の作品を選定することができた。しかし文学作品に関しては,予測よりも選定作業が複雑であったため,17作品しか選定することができなかった。MHDJ構築の目的は,教室外でも教師の指導なしに効果的に英語を学習することができるということであり,このデータベースの有用性は,日本の学生や医療人が自ら時間とお金をかけても読みたいと考えるかによる。そのため,文学作品の内容に関しては,対象となる学生および医療人が自分で読みたいと思う内容であること,文学的であるが,英語学習者が楽しんで読むことができる内容であることという新たなガイドラインを作成した。文学作品を検証する過程で,そのガイドラインを満たす作品を見つけることは非常に困難であった。学習者が英語を理解できなければ,読むことを楽しむことはできず,読もうというモティベーションの向上にはつながらない。そこで,グラフィック小説という英語学習者のモティベーションを高めることが可能なジャンルを検証するに至った。30のグラフィック小説を検証した結果,このジャンルはMHDJに収録するのに最も適切であるという結論に達した。そのため,短編小説や詩の代わりに,グラフィック小説を収録することを決定した。このような試行錯誤の結果,文学作品の収録作品の選定においては,ややスケジュールに遅れが生じた。 文学作品におけるモティベーションの問題は,映画に関しては生じない。というのも, 外国語の映画であっても日本語の字幕を利用することができるという点で,映画を鑑賞するということは受動的活動であるからだ。また,映画は映像という視覚的効果のために娯楽性が高いため,学習者のモティベーションを高めることができると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度の目標は,日本人のための医療人文学データベース(MHDJ)に収録するグラフィック小説をさらに選定することである。まずインターネットを利用してグラフィック小説を検証し,データベースに収録するのに適切だと思われるものを購入し,さらに内容を吟味する予定である。さらに,グラフィック小説の効果に関して,医学科1・2年生,および看護学科4年生を対象に実証研究を行う予定である。実際に授業で教材としてグラフィック小説を利用することによって,学生のモティベーションを向上させる文学作品の要因について検証することを目的としている。 40のグラフィック小説を選定した後,それぞれに注釈を付記する。データベースには,20の映画と40のグラフィック小説を収録する予定であるが,そのすべてに英語の注釈を付記し,その日本語訳も付す予定である。日本語訳の作成については,翻訳家の協力を得る予定である。 日本人のための医療人文学データベースは今年度中に完成し,ウェブサイトを立ち上げる予定である。ウェブサイトの立ち上げに関しては,専門家に協力を依頼する予定である。ウェブサイトが構築されれば,データベース内の映画や文学作品に関する二カ国語のデータが閲覧できるようになる予定である。 昨年,東京の明治学院大学で行われた学会にて本研究の一端の口頭発表を行った。その学会では,日本で大学教育に携わる文学者と交流することができた。その中で,多くの貴重な助言を得ることが出来たため,今年度もこの学会に参加し,口頭発表を行う予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
2014年度以降の計画 日本人のための医療人文学データベース(MHDJ)構築の最終年度の目標は,収録数を映画に関しては20本から40本に,グラフィック小説に関しては40作品から80作品に増やすことである。そのため,さらに多くの映画やグラフィック小説を検証する予定である。さらに,医学科生や看護学科生を対象に,データベースを教室内での教材として使用した際の映画やグラフィック小説における英語学習のモティベーション向上に関する研究を行う予定である。新しくデータベースに収録する作品の注釈に関しても,日本語訳を付記し,英語と日本語の二カ国語表記とする。さらに,医学科生や看護学科生を対象にした研究を基に,ウェブサイトの管理,利便性などの向上も図りたいと考えている。 また,学生だけでなく,医療人にも実際にこのデータベースを利用してもらい,データベース内に収録されている作品に関するコメントをもとに,初回版のデータベース収録作品が適切であったのか等について検証を行い,改善を図りたい。 さらに,本研究の成果を広く周知してもらい,実際に本研究で構築したMHDJを多くの日本人学生や医療人に利用してもらうために,学会での口頭発表および論文発表を積極的に行いたいと考えている。
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Research Products
(1 results)