2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
24520164
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
梅林 郁子 鹿児島大学, 教育学部, 准教授 (10406324)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | フーゴー・ヴォルフ / 音楽批評 / ウィーン・サロン新聞 / ドイツ・リート |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、ヴォルフが1884年から1887年にかけて『ウィーン・サロン新聞』に執筆した113篇の音楽批評文より、音楽に対する彼の評価基準を明らかにするものである。 批評文においては、計230回分のコンサートが扱われ、取り上げられた作曲者・詩人・演奏者などの人物は400人近くに及んだ。ヴォルフの集中的な作曲活動は1888年に始まるので、直前の3年間で、ヴォルフは多数の作品・演奏を聴き、言葉で表現する機会を得たこととなる。 彼の音楽に対する基準として、まず作曲者の意図や作品中心の考え方が挙げられる。これは特に、彼が敬愛していた作曲者の作品批評文に見られ、例えばヴァーグナー作品の上演に関しては、作品自体には無条件な受け入れ姿勢を示したのに対し、演奏や演出には容赦ない批評も行った。また、リートやピアノ作品などの演奏者評では、演奏者の持つ声の質、演奏上の技術や表現力などよりも、作品解釈に優れた演奏者に高い評価を下しており、やはり作品を第一と考える傾向が見られる。また、後にヴォルフが創作の中心とするリートなどの声楽曲に関する批評文では、演奏者に対して作曲者の意図のみならず、例えば、子音の発音や文法上強調すべきでない語句の扱いなど、詩や言葉の表現に対する細やかな配慮も要求した。 ヴォルフの批評文は、特にブラームス作品に対する激しい非難について言及されることが多い。しかし、ヴォルフ自身の音楽活動という観点からは、1887年以前の批評文執筆時期に、作品や詩の重視、演奏者の作品解釈への要求水準が形成されたと考えられる。さらに、この考え方は、1888年以降のヴォルフの作曲への取り組みや、自作を演奏する者に対する厳しさとして、書簡や、先行研究の評伝における逸話などにも様々に現れており、批評文執筆で培われた音楽に対する評価基準は、以降もヴォルフの音楽に関する行動に強い影響を及ぼしたと言えよう。
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Research Products
(3 results)