2012 Fiscal Year Research-status Report
アートプロジェクトにおける、市民の「関わり」今日的手法とその変遷について
Project/Area Number |
24520169
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
雨森 信 大阪市立大学, 都市研究プラザ, 特任講師 (40614657)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アートプロジェクト |
Research Abstract |
本研究は、1990年以降、日本各地において急速な増加を見せる地域密着型アートプロジェクトの発生と変遷について明らかにすることを目的とし、そのなかで、プロジェクトの発生にいたるアーティスト(主宰者)の内発的動機とそこから生みだされる表現活動における市民の「関わり」との相互関係に焦点をあてて分析を行う基礎研究である。 具体的な研究計画としては、1) 90年代アートプロジェクトの発生とつながる50年代から70年代の美術の動向についての文献、資料より年表を作成。2) アートプロジェクトの前身となる80年代の動向について関連する文献研究および資料収集、主要関係者(主にアーティスト)を対象にインタビュー調査を行う。インタビューでから個々の内発的動機と鑑賞者(参加者)との関わりついて明らかにする。 3) 90年以降のアートプロジェクトを整理し4)上記、1)-3)より、現在のアートプロジェクトの系譜と類型を示すこととし、この計画のなかで2012年度は、主に上記1)の年表作成のために、アートプロジェクト前史(加治屋2009)と言われる1950年代から1970年代に実施された美術館やギャラリー以外での展示や活動美術の動向の文献調査を行った。 1954年に発足した具体美術協会は、1955年には芦屋公園の松林にて野外展示を開催し、鑑賞者を巻き込む参加体験型の作品も一部あったと記録されているが、その「関わり」について言及はされていない。しかし1950年に創刊された児童詩誌『きりん』のなかで、具体のメンバーがこども向けの美術記事や指導を担当とするなど具体美術と児童美術との接点が明らかにされている。また複数の具体美術作家が小学校や幼稚園などで絵画指導を行っていたことなどからも、特に子どもとの関わり、その相互作用については、更に調査を行う必要性がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
昨年度は、海外出張期間が長かったため、12月から予定していたインタビュー調査に着手出来ていないという点が(3)やや遅れている。を選んだ理由である。研究期間内に明らかにしようとしている1)アートプロジェクトの美術史的背景を先行研究の文献および資料より抽出し、1950年から2011年までのアートプロジェクト前史およびアートプロジェクトの年表を作成する。については、主に1950年から1970年代のデータを収集し、これまで作成していた年表を基に新たな類型化の方法を検討中である。
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Strategy for Future Research Activity |
2013年度はインタビュー調査に重きをおきながら、資料収集、整理、文献調査も引き続いて実施する。インタビュー調査については、下記4つのプロジェクトを中心に実施する。①アートキャンプ白州(1988~1998、山梨県)山梨県北巨摩郡白州町で美術、音楽、演劇、舞踊、文学、伝統芸能、民俗芸能、建築などのジャンルを超えたアーティストや住民が集まって、神社の社殿・境内、林の中や路上、民家の庭など様々な場所で実施されたアートプロジェクトについて、事務局長であり、美術部門を主にディレクションしていた木幡和枝氏(東京芸術大学)を中心にインタビューと情報収集を行う。②牛窓国際芸術祭(1984~1992、岡山県) 牛窓オリーブ園経営者が自身の資金を使って開催された芸術祭いついて、まずは、まず主宰者であるオリーブ園経営者、服部恒雄氏に聞き取りを行い、そこから関係者へのインタビューを検討する。③88環境アートプロジェクト岩国・錦川・錦帯橋(1988、山口)アーティスト殿敷侃(1942~1992年)により企画された市民参加型の大型野外展覧会について、参加アーティスト、柳幸典にインタビューを行い情報収集も行う。④京都アートネットワーク(1983、京都) 京都市立芸術大学の学生40名ほどが参加して、複数のギャラリー、まちなかの店舗、河川(鴨川)などを使って開催された展覧会。その主宰者の一人であったアーティスト、藤浩志を中心にインタビューを行う。 以上、今年度は上記4つのプロジェクトの中心的メンバ―であったアーティストやディレクターにインタビューを実施し、個々の内発的動機を抽出、また固有性および類似性、通底するポイント、当時の社会的背景との連関性について分析する。また作成中の年表を基に、類型化と系譜作成の作業も並行して行う。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
申請当初計画していたインタビュー調査が遅れているため、昨年度の主に調査旅費等、人件費・謝金の使用が計画通りにはいかなかった。そのため、当該研究費は、次年度に持ち越したインタビュー調査の調査旅費および人件費・謝金に使用する予定である。
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Research Products
(2 results)