2013 Fiscal Year Research-status Report
ジョン・ケージにおけるジャポニズムとオリエンタリズムの再検討
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24520180
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Research Institution | Musashino Art University |
Principal Investigator |
白石 美雪 武蔵野美術大学, 造形学部, 教授 (60298023)
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Keywords | 音楽 / アメリカ / ジョン・ケージ / ジャポニズム / オリエンタリズム / 前衛芸術 / 芸術史 |
Research Abstract |
第2年度は「ケージの言説と批評分析」として、前年に引き続き、研究対象のケージに関する批評および記事、ケージ史料に関する所在と実態を把握すると同時に、オリエンタリズムとジャポニズムをめぐって、ケージの草稿および日米の新聞批評に関する分析を行う計画であり、一部、研究調査に関する予定は変更したが、研究はほぼ計画どおり実施した。計画の実施にあたっては、連携研究者である高橋陽一(武蔵野美術大学)と今岡謙太郎(武蔵野美術大学)から、資料の扱い方に関する助言を得た。 1.アメリカと日本におけるケージを対象とする批評および記事の把握(継続):日米の一般の新聞におけるジョン・ケージに関する批評および記事を簡単なものまで含めて網羅的に調査し、『朝日新聞』『読売新聞』『毎日新聞』などの主要新聞の記事データを1960年代に絞って、目録としてまとめた。 2.オリエンタリズムとジャポニズムに注目した言説分析:ケージ自身の文章と、彼を対象とするアメリカの批評および記事から、オリエンタリズムとジャポニズムに関する記述の言説分析を行った。とくにアメリカにおける初期の新聞批評・記事において、ジャポニズムとオリエンタリズムに関する記述が予想以上に少なかったことが確認された。 3.オリエンタリズムとジャポニズムに注目したケージの作品分析:オリエンタリズムとジャポニズムの観点からケージの作品分析を行った。予定とは異なり、当年度はアメリカへの調査旅行は実施せず、近年、禅や易経との関係を論じた研究書を参考にしながら、出版楽譜から可能な範囲で分析した。 研究成果の発表としては、国立音楽大学大学院研究年報『音楽研究』第26輯に日本の新聞におけるジョン・ケージ記事目録を掲載することができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
国内と国外の新聞調査を前年度からの継続として行い、目録を一部、公開することができた。1950年代、60年代の新聞記事において、アメリカではケージに関する記述でジャポニズム、オリエンタリズムをめぐる言及がほとんどみられず、日本では50年代にそれらの言説が頻出していたにもかかわらず、ケージ初来日以降にはかなり少なくなったことが確認された。今年は予定していたシカゴへの調査旅行は行わなかったが、シカゴの史料のうち、本研究にとって重要なデヴィッド・テュードアとの書簡をすべて掲載したMartin Iddonの新刊書の内容を精査し、書評を音楽学会の学会誌において掲載した。
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Strategy for Future Research Activity |
第3年度は「批評分析の進展と成果発表」をテーマとして、次の課題に取り組む。 1.オリエンタリズムとジャポニズムに注目した言説分析(日米の批評):前年に続き、ケージ自身の文章と彼を対象とするアメリカの批評および記事から、オリエンタリズムとジャポニズムに関する記述の言説分析を行う。さらに、ケージを対象とする日本の批評から、日本・東洋に関する記述の言説分析を行う。 2.ケージ以降の前衛芸術家におけるオリエンタリズムとジャポニズムの言説分析:アラン・カプロー、ディック・ヒギンズらのメモ・草稿を調査し、ケージとの影響関係に留意しながら、オリエンタリズムとジャポニズムに関する言説の分析を行う。 3.研究成果の発表:ジョン・ケージの新聞批評・記事に関する目録のうち、未発表の部分を公開する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
予定していたシカゴへの調査旅行を行わなかったことから、次年度使用額が生じた。シカゴでの調査の目的となる史料のうちケージとテュードアの書簡が全部掲載されたMartin Iddon の本が刊行されたことから、精読することを優先した。 ケージの自筆史料を収蔵している機関のあるシカゴ、ニューヨーク、ロアンジェルスのうち、とくに次年度の研究に必要な調査地をあらためて検討して実施する。また、引き続き、記事調査および成果発表のための作業費用として使用する。
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Research Products
(4 results)