2012 Fiscal Year Research-status Report
鑑賞者の情動反応に基づくメディアアート表現の可能性の探求
Project/Area Number |
24520191
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Doshisha Women's College of Liberal Arts |
Principal Investigator |
森 公一 同志社女子大学, 学芸学部, 教授 (60210118)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
真下 武久 成安造形大学, 芸術学部, 講師 (10513682)
二瓶 晃 同志社女子大学, 学芸学部, 助教 (30368435)
砥綿 正之 京都市立芸術大学, 美術学部, 教授 (50249372)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メディアアート / インタラクティヴアート / ニューロサイエンス / 脳神経科学 / 情動 |
Research Abstract |
平成24年度は、fNIRSを用いた先行作品《光・音・脳》(2010)のリフレクションを目的とする研究会からスタートした。美学研究者の岩城覚久氏からは「ニューロエステティック序論」、サウンド・デザイナーの吹田哲二郎氏からは「《光・音・脳》のサウンド」、映像美学研究者の松谷容作氏からは「(映画)鑑賞者におけるイメージ生成の過程」について、それぞれの専門の立場から《光・音・脳》を検証する上で鍵となる情報提供をいただいた。 また平成24年度の研究計画として掲げていた4つの項目のうち、a「情動」「身体」に関わる理論研究の調査については、JST-ERATO岡ノ谷情動情報プロジェクト成果発表会(東京国際フォーラム)など、情動関連研究会への参加や情動関連書籍・論文等の資料収集を実行した。b 芸術と科学を融合するメディアアートの事例調査については、メディアアート研究者の白井雅人氏から専門的知識の供与、とりわけ1967から71年にかけて米国で行われたアート・アンド・テクノロジー・プログラムにおけるRobert IrwinとJames Turrellによる先駆的プロジェクトに関する情報を提供いただき、併せてスタジオアッズーロ展(川崎市民ミュージアム)など、メディアアートと関連の深い作品展の見学を行った。c 情動反応の計測に関わる研究状況の調査については、EEGや皮膚の電気抵抗計測に基づく情動反応の計測、表情分析による情動研究など、情動関連の学術論文を資料収集し、本研究への応用可能性を検討した。d 臨床実験とデータの分析については、精度の高い情動計測の方法を確立することを目的に、映画における情動誘発シーン(恐怖、喜び、性的、疾走感、潜行など)を用い、fNIRS及びfMRIによる計測を行った。計測結果の分析及び検討については現在進行中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、「鑑賞者の情動反応に基づくメディアアート表現の可能性の探求」を目的とし、その成果を医療活動等へと応用することを目指している。とりわけ「光」「音」「身体」をインタラクティヴに関係づけるメディアアートの方法と、「脳」や「身体」の生体機能の情報化技術を接続し、人の「情動」反応を用いた実験作品を制作・発表することによって、芸術と医療の双方にとって有益な成果をもたらそうとするものである。このような目的に沿って、平成24年度については、a 「情動」「身体」に関わる理論研究の調査、b 芸術と科学を融合するメディアアートの事例調査、c 情動反応の計測に関わる研究状況についての調査、d 臨床実験とデータの分析、以上4項目の調査と実験研究を行い、ほぼ目標どおり順調に進展している。 なお、これら4項目の調査・実験をふまえ、平成24年度中にメディアアート作品へと応用するための実験装置の開発を行うとともに、この装置を用いた臨床実験を行うことが望ましいと考えていたが、情動計測の精度を高める方法が容易ではなく、結果として実験作品のためのシステム設計が定まらなかった。そのため平成24年度の予算執行が持ち越しとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25 年度の中心的課題は、平成24 年度における各種調査と実験に基づき、メディアアート作品へと応用するプロジェクトを展開し、芸術表現としての完成度と情動研究のためのデータ取得、それら両方を実現することである。 プロジェクトの一つは、EEGを用いて鑑賞者の情動を誘発する映像と鑑賞者の脳波パターンをインタラクティヴに関係させ、映像と脳波の関係性から情動(怒り、嫌悪、恐怖、幸福感、悲しみなど)の伝染や情動的共感のメカニズムを探る。もう一つは、2010年に発表した《光・音・脳》を発展させ、より精度の高い情動計測を実現した上で、光や音のガンツフェルト的な刺激とfNIRS を用いた脳血流の計測(快・不快判定)を、インタラクティヴに関係させるプロジェクトである。 本プロジェクトは、美術館あるいはオルタナティヴ・スペース等において展示し、可能な限り多くの参加者を募るとともに、参加者から得たデータを蓄積し分析することを通じて、「情動」に関係する芸術系および医療系の今後の研究に対し、有意義な成果を残したいと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成25年度研究費については、本研究の主たる目的である「鑑賞者の情動反応に基づくメディアアート表現の可能性の探求」のための、「作品=実験装置」にかかるハードウェア費や施工費に使用する予定である。加えて作品展示のための会場費、搬入・搬出にかかる旅費・宿泊費等が必要である。その他にメディアアート関連や脳神経科学関連の調査・情報収集に必要な資料費・会費、旅費・宿泊費など、引き続き使用する予定である。
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Research Products
(1 results)