2012 Fiscal Year Research-status Report
1940年代日本文学における地域性の生成―東北地方における疎開・移住を視座に
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24520201
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
森岡 卓司 山形大学, 人文学部, 准教授 (70369289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仁平 政人 弘前大学, 教育学部, 講師 (20547393)
高橋 秀太郎 東北工業大学, 公私立大学の部局等, 講師 (40513065)
野口 哲也 都留文科大学, 文学部, 准教授 (90533000)
山崎 義光 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (10311044)
高橋 由貴 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (90625005)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 日本近代文学 / 東北 / 疎開 |
Research Abstract |
東北地方に疎開した文学者の活動とその地域文壇との接触について、専門的知識を持つ研究者を招聘した2回の研究報告会と1回の資料調査旅行を通じて、基礎的な資料調査拠点作りを行い、あわせて基礎的な資料調査を進めた。 青森県における調査では、青森近代文学館及び東奥義塾高等学校の全面的な協力のもと、『月刊東奥』『東奥日報』をはじめとする地方資料の調査を行い、それを高橋秀太郎、仁平政人が分析して報告し、高橋秀太郎は学会発表を行い、仁平は論文化した。また、太宰治が疎開中に関わった金木文化会関係者遺族に連絡を取り、残存資料の動向を確かめ、今後の研究協力を依頼した。この聞き取り調査は25年度に実施の予定である。山形県における調査では、浜田広介記念館の全面的な協力のもと、浜田広介関連資料調査を行い、それを森岡卓司が分析して研究報告会で報告し、学会の招待講演、新聞記事などの形で地域に広く公開した。また、丸山薫(山形)、高村光太郎(岩手)を中心とする東北に疎開した詩人たちが形成したネットワークについて、野口哲也が概要を調査し、研究報告会で報告した。その他、秋田県においては山崎義光が島木健作の疎開について調査し、その成果を学会に発表し、論文化するなど、調査対象の各地において本研究グループは着実に成果を積み重ねている。 これらの研究活動を通じて、各地域における資料体の所在を確認し、調査拠点を確立したことが24年度の成果である。とりわけ青森と山形においては明確な拠点が確立され、資料調査もほぼ計画通りに進んだ。その調査結果は、専門的知識を持つ協力者を雇用して整理した。また、高橋由貴は福島大学に冨澤有爲男『双葉日記』を備え付けるなど、配分資金を利用した研究環境づくりも順調に進行している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の研究計画では、3名を予定していた研究分担者が、5名に増え、山形、宮城、青森だけではなく、秋田、福島にも研究分担者を得ることができた。これによって、研究組織の再編のための研究打ち合わせを再度行わなければならなくなったが、岩手を除く東北5県に研究グループのメンバーが配置されることになり、東北全域の調査及び研究拠点づくりをよりスムーズに進行させることが可能になった。また、本共同研究の資料調査と整理に適した専門的知識を有する研究協力者を新たに加えた。 24年度は、各県の学校における文学教育、同人活動に主眼をおいた調査を計画していたが、実際に調査に着手した結果、各地域で発行される雑誌、及び各地域の文学施設に保管されている原稿、草稿類の資料的価値はやはり無視し得ないものであることが分かり、調査対象を計画から一部変更することとなった。また、疎開作家に関する聞き取りが可能な情報提供者が複数浮上し、次年度への準備として、情報提供者との関係作りに注力した。 調査対象となる作家の精査、資料実体の把握のため、研究グループのメンバーは各担当エリアを精力的に動いており、研究代表者は、県をまたいでの資料探索、調査打ち合わせを行い、研究組織の充実につとめている。また、対象作家・作品を特集した学会には複数のメンバーが参加し、最新の研究動向の把握につとめた。 以上のように、いくつかのやむを得ない事情によって、研究組織・計画の一部に変更を加えることとなったが、それに伴う遅滞を補い、研究期間全体を通じてより大きな成果をあげるよう、共同研究は順調に進行している。その成果公表についても、共同研究初年度としては順調に進んだと言える。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、前年までに研究拠点を築き得た青森、山形について本格的な調査分析を行うこと、及び、東北他県についても研究拠点を築くこと、の2点が主要な計画となる。 青森については、太宰治の疎開に関わる聞き取り調査、資料調査を主として、1940年代の青森、及び宮城県を含む東北全域における文化活動の総体に、疎開作家の文芸活動がいかに位置づけられるのかを明らかにする。そのための調査旅行を複数のメンバーによって行う予定である。山形については、前年度までに一定程度の調査を終えた浜田広介に加えて、丸山薫、横光利一、黒田喜夫についての調査を進める。丸山が高村光太郎と関わりながら東北全域につくりあげた詩人ネットワークの全貌と意義、そして横光や黒田らによる1940年代の「東北」表象の様相について、分析を行う。これについても、複数のメンバーによる調査旅行を予定している。 他県における研究拠点の充実については、新たに研究分担者が加わった地域などに見られる若干の遅れを取り戻すようつとめる。とりわけ、福島エリアについては、具体的な資料体を選択し、その調査研究について研究報告会で充分な検討を重ねる予定である。また、太宰治を中心にした調査を当初予定した宮城エリアでの計画については、調査の進展に伴い、青森エリアとも繋がる東北全域という観点からの分析が有効な面も多いことが明らかになったため、宮城固有の問題と東北全域の問題との両側面を分析するように計画を見直す。 以上の計画を着実に遂行することにより、26年度に予定されている地域横断的調査の焦点を具体的に絞り込み、スムーズに実行できるよう準備することが、本研究課題の推進方策である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
ごく小額ではあるが、次年度使用予定研究費が出たのは、「現在までの達成度」に記述した研究組織・計画の変更ばかりではなく、対象となる作家の選定に時間がかかり、資料整備が遅れたことにも原因がある。この解消については、「今後の研究の推進方策」に示したように、研究グループ全体で取り組む予定であり、次年度使用予定研究費は、予定通り、研究資料体充実のための物品費として使用する予定である。
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Research Products
(6 results)