2013 Fiscal Year Research-status Report
1940年代日本文学における地域性の生成―東北地方における疎開・移住を視座に
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24520201
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
森岡 卓司 山形大学, 人文学部, 准教授 (70369289)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仁平 政人 弘前大学, 教育学部, 講師 (20547393)
高橋 秀太郎 東北工業大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (40513065)
野口 哲也 都留文科大学, 文学部, 准教授 (90533000)
山崎 義光 秋田大学, 教育文化学部, 准教授 (10311044)
高橋 由貴 福島大学, 人間発達文化学類, 准教授 (90625005)
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Keywords | メディア研究 / 地域性 / 戦時下の文化言説 |
Research Abstract |
25年度の中心的な作業は、本研究計画の最大規模調査である、「東北地方紙文芸欄の悉皆調査」であった。24年度に実施した、東奥日報を利用した予備的調査の結果を踏まえ、当面の調査対象期間を1945年1月から1946年8月に限定した上で、東北六県の地方新聞(各県紙)および全国紙(朝日新聞、毎日新聞の2紙を対象とした)の文芸欄を実見し、疎開と地方性とのいずれかに関連する記事を総覧するデータを作成した(ただし、作業行程上の都合で、ごく一部の未調査部分がある)。また、地域性の再帰的な定義に関わる言説については、記事コピーをデータとして収集した。そこからは、「文化/文学」を巡る言説の大きな変動、「詩/小説」を中心とした既存の文学観のとらえ直し、など、多くの興味深い観点が浮上している。 また、ほぼ同時期に発行された地方雑誌の調査も並行して行い、そこで活動した文学者たちの営為について調査を進めた。これらの作業については、今年度は青森、宮城、山形を中心として行い、文学者としては日比野士朗、太宰治、吉本隆明、沢渡恒らがとりあげられた。 以上の調査結果は、研究報告会およびメール会議を通じて研究グループ内で共有し、また、その結果に基づいた学会報告、学術論文、記事執筆などによってその一端を公開しつつある。 以上のように、1940年代東北における疎開現象とそれに伴う地域性の生成について、データに基づいた検証を行い、その特質を総合的に明らかにするという本研究の最終的な目的に向けて、25年度までにその準備段階をほぼ終えたと言うことができる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究における最も重要かつ労力を要すると見られた調査課題「東北地方紙文芸欄の悉皆調査」について、ごく一部を除いて滞りなくそれを終えることができた。このことは、研究の順調な進展を示すといってよい。また、基礎調査を終えた現段階においてすでに、学会発表や論文執筆等、いくつかの手段においてその一端を公開しており、これも、研究の進展の証左として数えることができる。 ただ、当初から予想されていた通り、実際に調査が進展するにつれ、入手した情報とは異なる実態が明らかになったり、資料散逸の現状に突き当たったりなどというアクシデントは生じている。 しかし、それらの事情も、必ずしも計画全体に変更を要するほどのものとは言えず、本研究はおおむね順調に進行していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査で明らかになった東北地方の疎開現象と地域性の生成状況について、その特質を客観的に明らかにするために、総合的な研究成果公開と他地域(あるいは時代)との比較検討とが重要になると考えている。 総合的な研究成果公開に関しては、これまでに行ってきた、各作家あるいはメディアに特化した研究成果公表にとどまることなく、基礎的調査データを前面に押し出した学会パネル発表あるいは論文集のような形態を採用する必要がある。 他地域(あるいは時代)との比較検討については、専門的な知識をもった研究者との意見交換を積極的に行うことが第一の選択肢として考えられるほか、他地域(あるいは時代)の資料調査を実際に手がけることも有効であろうと考える。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
調査実施上の必要から、東北各県への調査旅行計画に変更が生じたことが、主な理由である。 26年度は、26年度に積み残した調査の補遺、およびその資料整理を速やかに行う計画であり、研究期間を通じた研究計画および資金計画に大きな変更は生じない。
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Research Products
(7 results)