2013 Fiscal Year Research-status Report
中世百科全書的テキストの成立基盤に関する総合的研究
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24520218
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
小助川 元太 愛媛大学, 教育学部, 准教授 (30353311)
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Keywords | 国文学 / 中世後期 / 百科全書 / *(土+蓋)嚢鈔; / 後素集 / 源平盛衰記 |
Research Abstract |
当該年度は、対象としている百科全書的テキストの構成分析、『帝鑑図説』和訳本の電子化、『後素集』の電子化作業、周辺作品の分析を中心に行った。結果として『後素集』の電子化の方はあまり進まなかったが、以下の大きな成果があった。 1.『*(土+蓋)嚢鈔』『塵袋』『榻鴫暁筆』の構成・内容分析と中国の類書の特徴を比較した作業に基づき「中世後期の類書と随筆」と題する研究発表を行った。 2.和訳本『帝鑑図説』の電子化作業と翻刻本文の公開(巻7~8)を行った。 3.『*(土+蓋)嚢鈔』編者行誉に関する研究の一環として、対馬歴史民俗資料館宗家文庫蔵『八幡愚童訓』に関する研究発表を行った。 4.当該研究の対象作品の一つである『源平盛衰記』について、その特徴の一端を明らかにする「『源平盛衰記』の日付から見える編集意識について」と題する研究発表を行った。 1については、2月23日にキャンパスプラザ京都において開催された伝承文学研究会関西例会において、「中世後期の類書と随筆―『*(土+蓋)嚢鈔』を中心に―」と題する発表を行った。本発表は、日本の中世における「類書」「随筆」というジャンル分けがいかに曖昧であるかという問題に言及したものであるが、中世後期に陸続と現れる百科辞書的編纂物の生成と享受の問題に繋がるものであり、次年度の総まとめに向けた研究として位置づけることができる。また、4の作業を進める中で、百科辞書的編纂物の背後にある歴史認識の問題と中世後期成立の軍記物語異本における教訓書的傾向や百科事典化の問題とが、根本的な部分で繋がっている可能性を見出した。この問題については継続して調査を進め、研究発表や論文という具体的な形でその成果を公開したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
『*(土+蓋)嚢鈔』については、研究発表という形で、『塵袋』や『榻鴫暁筆』、『月庵酔醒記』といった百科全書的テキストの分析や、それらと中国の類書との比較という作業の成果を出すことができた。また、和訳本『帝鑑図説』の電子化作業は予定通り順調に進んでいる。さらに、『源平盛衰記』の構成に関する研究も研究発表という形で成果を出すことができ、『八幡愚童訓』についても研究が進んだ。ただし、他の作業が進んだ反面、『後素集』の電子化作業の方を進めることができなかった。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にめどがつけられそうな作業として、『後素集』の電子化作業を積極的に進めたい。また、今年度は8月末にスロベニアで開催される学会(EAJS)に「乱世の文学」と題するパネルを組んでエントリーしたところ、無事採択されたので、3年間の集大成として、その発表に向けての準備を中心に行う。また、昨年度の研究発表のいくつかを論文としてまとめる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
〈その他〉の項目で、紙焼き写真代として残しておいた予算が、資料の所蔵者から手持ちのデジカメ撮影が許可されたため、使う必要がなくなった。また、次年度に回さずに書籍購入をすることも考えたが、必要な書物を購入するには金額が足りなかったため、次年度に回し、まとまった基本図書を購入するための資金とすることにした。 次年度に繰り越した予算については、当該研究を推進する上で欠かせなかった漢文関係のまとまった基本図書(全集)が、所属学部の資料室から別の場所に移動してしまったため、同じものを自分の研究室に揃えるための購入資金として、今年度の予算に併せて使用する。
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Research Products
(6 results)