2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520256
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| Research Institution | Oita Prefectual College of Arts and Culture |
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Principal Investigator |
野坂 昭雄 大分県立芸術文化短期大学, その他部局等, 准教授 (20331936)
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| Keywords | 戦争詩 / 視覚 |
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| Research Abstract |
平成25年度は主に，①批評家・保田與重郎の風景観と身体性に関する考察，②鹿島田真希の小説における小説空間の位相に関する考察，③丸山薫の戦争詩における視覚性と時間意識との考察，に取り組んだ。
①は，平成24年度における蓮田善明の小説論の考察と連続するものである。保田與重郎はもともと日本の伝統的な風景あふれる奈良・櫻井に育ち，欧米の風景は写真等によって目にしてきた。彼はその紀行文において「歩く」という身体的な行為と共に風景を鑑賞していたが，次第に風景は抽象化，歌枕化されていく。目の前の風景が，身体性を離れ，歴史的な意味を担うものとして見出されていくのである。この考察は，昭和初期の重要な雑誌『コギト』における詩と視覚，身体性の関連性を問題とするものであり，戦争詩の描く風景や身体性を考える上で極めて重要な論点であると考える。
②の鹿島田真希は現代作家であり，戦争詩との直接的な関係はないが，彼女の小説『六〇〇〇度の愛』（2005）が特徴的なのは，二つの並行する語りを通してある種「抽象的」ともいうべき空間が現出している点である。鹿島田のそれは精神分析学的な欲望の空間なのだが，戦争詩もまた，現実とは位相を異にし，身体性が希薄となるような抽象的な見世物の場を生成しているという観点を，ここから導き出すことができる。
③丸山薫については，彼の戦争詩における視覚性を，それ以前の詩，散文における時間意識と関わらせて論じ，論文にまとめ，現在，雑誌『日本近代文学』の審査中である。丸山において，映像的なイメージによる時間の提示が，戦争詩におけるパノラマ的な戦地の表象とどのように連続／切断しているかを考察した。視覚という点から，戦争詩をそれ以前の詩のあり方と関わらせて論じるという点に重要性が存する。
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| Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
戦争詩に関わる研究，考察は一定の進捗を見せているものの，考察の方向が多岐にわたっており，うまく研究成果の公表に結び付けられていないというのが第一の理由である。当初の予定にあった丸山薫については漸く現在投稿中の論文にまとめたが，まだまとめ切れていない部分も多い。また，保田與重郎や蓮田善明といった批評家，小説家の風景，身体の問題を，戦争詩一般の問題に接続することには慎重さを要する。また，具体的な個々の戦争詩の検討よりも，戦争詩を中心とした詩史全体の再構築に関心が移動していることで，単純には結論が出しにくい状況になっている。
第二に，平成24年度から進める予定であったホームページの整備が，多忙のために遅れている。データベースの作成は少しずつ進めているが，未だ公表には至っていないので，平成26年度中に一応の完成を目指したい。
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| Strategy for Future Research Activity |
平成26年度は研究の最終年度に当たるため，報告書の作成を第一に考える。報告書では，感覚，特に視覚という点から近代詩を捉えた叙述を念頭に置きながら戦争詩について記述する。基本的には，これまでの研究成果に加え，梶井基次郎における詩と散文の問題なども併せながらまとめていきたいと考えている。
また，ホームページの整備と研究成果の発表については引き続き取り組んでいく。
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| Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
計画では，平成25年度に資料調査と学会参加のため，関東に３回行く予定であったが，実際には関西に１度，学会参加と資料調査を兼ねて旅行するにとどまった。これは，国立国会図書館関西館でも本館と同様にデジタル資料が閲覧でき，また必要な資料がある程度入手できたことによる。また秋に予定していた関東での学会参加は，勤務校の行事と重なったため断念した。
当初の計画では，報告書の作成に関する費用を計上していなかった。平成26年度の予算はそのまま執行することとし，平成24・25年度の残額は報告書の印刷代として使用する計画である。
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Research Products
(4 results)
