2014 Fiscal Year Annual Research Report
高橋虫麻呂の語りの方法―萬葉和歌史における伝説歌の意義―
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24520260
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Research Institution | Anan National College of Technology |
Principal Investigator |
錦織 浩文 阿南工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (10332066)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 日本文学 / 古代文学 / 萬葉集 / 高橋虫麻呂 / 伝説歌 / ラフカディオ・ハーン / 再話文学 |
Outline of Annual Research Achievements |
最終年度の研究計画は、前年までの研究成果を踏まえて、高橋虫麻呂の伝説歌における改変箇所について考察するとともに、ラフカディオ・ハーンの再話との共通点を指摘し、いわば「再話文学の系譜」について考えることにあった。この計画のとおり、考察を進め、研究成果を発表した。 高橋虫麻呂の伝説歌の改変については、その考察結果を、論文「高橋虫麻呂の東国関係歌―東国的造型について―」にまとめた。この論文を通して、虫麻呂の東国関係歌が都人の視点によってなされていることを明らかにし、珠名娘子歌、真間娘子歌について具体的にそのように理解される箇所を指摘した。珠名娘子歌においては「胸わけの広き我妹」「夜中にも出でてぞ逢ひける」、真間娘子歌においては「沓をだに履かず」「水汲ましけむ」などが、都人の視線による東国的造型の箇所と理解される。これを述べた当該論文は、全国大学国語国文学会『文学・語学』第212号(2015年4月)の「上代文学小特集 上代文学の地方と中央」に掲載される。 虫麻呂の伝説歌とラフカディオ・ハーンの作品との共通性についての考察は、今回は、虫麻呂の浦島子歌とハーンの「夏の日の夢」との比較において行った。ハーンの「夏の日の夢」は、ハーンが熊本から長崎への一人旅を行った際の様子を文章化したもので、その紀行文の中で浦島伝説を回想する。虫麻呂の浦島子歌における再話もハーンの再話も、ともに原話のままではなく、自らの感性によって改変を加えている。その改変の仕方、方向性がよく似ていることを、論文「高橋虫麻呂の浦島伝説歌とラフカディオ・ハーン『夏の日の夢』において考察した。当該論文は、八雲会『へるん』第51号(2014年6月)に掲載され、また第52号(2014年6月)にも掲載される予定である。 以上が最終年度に実施した研究成果である。研究期間を通じて概ね計画通りに研究を進めることができたといえる。
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Research Products
(2 results)