2012 Fiscal Year Research-status Report
南北戦争と大衆詩の応砲─讃歌・式典詩の社会的機能から音楽・美術への文化的影響まで
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24520266
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
澤入 要仁 東北大学, 国際文化研究科, 准教授 (20261539)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 南北戦争 / アメリカ文学 / アメリカ詩 / 大衆詩 / ユーモア詩 / ニュー・オリンズ / ワシントン砲兵隊 |
Research Abstract |
南北戦争期の大衆詩のうち、本年度は、南部で書かれた詩を中心に研究を進めた。とくに歌にうたわれた大衆詩に焦点を合わせた。 本年度の調査の過程で最大の注目を引いたのは、南軍のユーモア詩「あの喇叭卒」である。その最大の理由は、自由や共和国といった高尚な理念をうたった北軍の「自由の雄叫び」や「リパブリック讃歌」などとちがって、この歌は無名の兵士が従軍生活の日常をうたった卑俗な詩だからだ。まさに大衆詩だからである。 本研究ではまず、この詩の作者と伝えられるA. G. Knightについて、南軍の従軍兵名簿や、ローカル新聞の死亡記事などを利用して調査した。その結果、正確な名前はAlfred George Knightといい、1819年、イギリスに生まれ、ニューオリンズでペンキ屋を営んでいた1861年、砲兵隊に入隊ののち、1870年、心臓病により没した経歴が明らかになった。おそらく文学の素養のない無名の詩人だった。 さらに詩「あの喇叭卒」を分析した結果、以下のことが詳らかになった。この詩は、残酷なまでに厳格な喇叭卒に苦しめられるユーモラスな内容になっているのだが、けっして従軍生活を恨む詩にはなっていない。なぜなら、その喇叭卒を兵士たち共通の敵にすることによって、部隊の中に一体感を生みだしているからだ。詩の中では、その逆説的な仕組みが「あの」という指示形容詞によって巧みに表されていた。それは、「またあの」という、繰り返される怒りを表し、さらには、「あの」というだけで兵士たちに通じる共通の敵になっていたからである。すなわち、この詩はユーモア詩であるだけでなく、部隊の戦意高揚にも貢献していたのである。卑俗に聞こえるユーモア詩が戦闘に役立つ軍歌になっていたのである。これは大衆詩ならではの機能と思われる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の達成度は「おおむね順調に進展している」と評価した。なぜなら、申請書に記載した本年度の計画とはその進め方が少し異なってしまったものの、申請書に明示した目的を鑑みれば、本年度の達成度は順調と考えられるからである。 アメリカ文学史上、南北戦争をうたった詩としては、ウォルト・ホイットマンの『軍鼓のひびき』やハーマン・メルヴィルの『戦闘小品集』などが知られている。その他、当時の代表的詩人たちは、南北戦争のさなか、しばしば式典詩を書き、それらを出陣式、凱旋式、追悼会などの式典で披露した。けれども、南北戦争をうたった大衆詩を研究するのが本研究であることを考えれば、敗北した南軍の無名の従軍兵士が書いたユーモア詩というのは、まさに本研究にふさわしい大衆詩といえる。その意味で、本研究の初年度の進捗として、いいスタートを切ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度の研究からも明らかになったように、詩という形態は、一度に多様な機能を果たすことが出来る。詩「あの喇叭卒」に関していえば、戦地の緊張の中で笑いを誘うユーモア詩であると同時に、部隊の団結心を高め戦意を高揚する詩にもなっていた。次年度も、このような複相的な機能を果たす大衆詩を調査したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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Research Products
(1 results)