2013 Fiscal Year Research-status Report
戦後イギリス社会におけるBBCサードプログラムのラジオドラマ
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24520290
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
川島 健 広島大学, 文学研究科, 准教授 (60409729)
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Keywords | 国際情報交換 / 海外発表 / 演劇 / ラジオ / イギリス / BBC |
Research Abstract |
本研究は1950年代から60年代にかけてのイギリスの社会状況を背景に、BBC(The British Broadcasting Corporation)サードプログラムで制作されたラジオドラマを再評価することを目的にする。特にDylan Thomas、Samuel Beckett、Harold Pinterらの作品を題材にする。まずロンドンを中心とした、文化・芸術の中央集権的政策が生み出した、「都市」と「周縁」という二項対立をそれらのラジオドラマが覆していることを証明する。 2013年度は主にDylan Thomasのラジオドラマについて研究をした。前年度にTexas University, Austin College, Harry Ransom Humanities Centerで収集した、ThomasがBBCのために作成したスクリプトを精査し、彼のラジオドラマにおけるテクニックを分析し、またそれを通して見える彼のEngland観を浮かび上がらせた。その結果として、2013年7月の後半にソルボンヌ大学で行われた国際比較文学会第20回大会にて、"A Voice from Peripheries: Dylan Thomas’s Under Milk Wood and Postwar England"と題された発表をした(発表日は2013年7月24日)。 2013年度後半は、 国際比較文学会で発表した際の様々なアドヴァイス、意見を踏まえ、Under Milk Wood論を書き直しに費やした。またそれとともにThomasの他のBBCラジオドラマのスクリプト("Margate - Past and Present", "Lodoner"など)を考察の対象として、都市や地域のローカルな特性を前景化させるようなレトリックを分析した。これは2014年度にまとめて論文にしたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
毎年のノルマとしている海外での発表を無事消化することができた。また収集した資料の分析も順調で、その結果として論文も書くことができている。以上のような理由で研究はおおむね順調に進展しているといえる。しかし、2013年のバルセロナで開催されたInternational Federation for Theatre Researchが、国際比較文学会と日程が重なっているために参加できたなったこと、また2014年4月に大学を転出したため、2014年2月から3月はその準備のために忙殺され、研究に十分な時間がさけなかった。したがって、予想以上の進展とまではいかなかった。とはいえ、研究が遅れているとはいえず、順調にプロセスを踏んでいると自己評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
2014年度はDonald Cottonの実験的なラジオドラマについて分析をする。その成果は "Floating England: Voices in the Air in the BBC Third Programme"というタイトルをつけ、2014年7月にイギリスのウォーリック大学で行われるInternational Federation for Theatre Researchにて発表をするつもりである。その後は、BBCの創設期から1950年代までの歴史をサーヴェイし、戦間期から戦中期、そして戦後に向けたイギリス社会の流れのなかで、マスメディアとしてのラジオが果たした役割を明らかにし、そのなかでサードプログラムとラジオドラマがどのような要請によって生まれたかを考える。これは本研究全体の序章に当たる部分となる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
様々なデータ保存用のパソコンを購入予定であったが、2013年度は以前から使用していたものを引き続き使用し、そこにデータを一括して蓄積することのほうが、合理的と判断したため。 購入を延期していたパソコンを購入する予定であり、それに充当する。また新しい図書を購入する予定である。
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Research Products
(3 results)