2015 Fiscal Year Annual Research Report
戦後イギリス社会におけるBBCサードプログラムのラジオドラマ
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24520290
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Research Institution | Doshisha University |
Principal Investigator |
川島 健 同志社大学, 文学部, 教授 (60409729)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | BBC / ラジオ / ドラマ / 周縁 / 大衆 / 戦争 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の実績は以下の三点にまとめることができる。(1) BBB Third Programmeのラジオドラマがイギリスの「周縁」を描くことが多ことを確認することができた。ウェールズやアイルランドなど、イギリスの境界線近隣の国々が、ロンドンを中心に、新たに打ち建てられるEnglishnessにはおさまらない差異を表していることが判明した。そこで描かれるのは、都市文化と二項対立の関係にあるローカリティではなく、植民地主義を清算し、小さな福祉国家として生まれ変わろうとするイギリス社会全体を批判する視座を有していた。(2) Third Programmeにおいて、「階級」が頻繁に言及される問題であったことが確認できた。モダニズムの作家たちは、ラジオが新しい知識層をつくりだし、これまでの階級安定性が失われることを危惧し、特定の知識層にのみ理解可能な言語を彫琢していった。それにたいしてBBCラジオ放送は、作家たちを、それまでなかった規模の、不特定多数の読者/聴取者に直面させた。コミュニケーションの新しい対象であった大衆に語り掛けるために、作家たちは、古典作品のフォーマットを利用したり、大衆音楽を利用したりして、文化の大衆化を図っていた。(3) 第二次世界大戦にたいする、作家たちの様々な反応を考察することができた。アメリカに積極的な参戦を呼びかけるプロパガンダ的な放送をしたLouis MacNeiceや、戦争下における市民の連帯のかたちを描いたDylan Thomasなどの作品である。第一次世界大戦が多くの戦争詩を生んだのにたいして、第二次世界大戦に詩的表現を与えた作家は少ない。それに対してBBCラジオは戦争への、より複雑な感情を代弁するメディアになったことが分かった。
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Research Products
(2 results)