2013 Fiscal Year Research-status Report
19-20世紀転換期のブラック・フェミニズムにおける政治的言説
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24520308
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
宮津 多美子 順天堂大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (60509660)
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Keywords | 革新主義時代 / 黒人女性クラブ運動 / 世界コロンビア万国博覧会(シカゴ万博) / 直接行動主義(アクティヴィズム) / メアリー・チャーチ・テレル / アイダ・B・ウェルズ=バーネット |
Research Abstract |
この研究は、19世紀末から20世紀初頭にかけてのアフリカ系アメリカ人(黒人)女性指導者(作家、教育者、活動家)による著作における政治的言説を歴史的文脈の中に位置づけるものである。平成25年度は、昨年度から扱っていたメアリー・チャーチ・テレルに加え、トランスナショナルな観点から同時期の日本のフェミニストに関してもリサーチを行い、日米の二人フェミニスト(テレルと平塚らいてう)の比較研究を行った。そして、その研究成果を海外の国際学会で発表した。さらに、アイダ・B・ウェルズ=バーネットについてもリサーチを行い、テレル、ウェルズ=バーネットが大きく関わった黒人女性クラブ運動とのその政治的意義について国内の学会で発表を行った。 前者では、日米二人のフェミニストの出自・教育・思想などを比較しながら、彼女らがそれぞれのエスニシティーの女性らに対して果たした指導的役割について分析を行った。両者の思想には同時期の欧米の白人女性フェミニストらの直接行動主義の影響が認められる。19世紀末から1920年代までの間にこれらの急進的フェミニズム思想がメディアを通して国境を越えて他国の女性らに伝播・浸透し、女性らを政治的に覚醒させたことが明らかとなった。 後者では、黒人女性クラブ運動発展のきっかけとなった世界コロンビア万博から世紀転換期までのテレルとウェルズ=バーネットの著作・活動について研究を行った。二人はともに初期クラブ運動の指導者であり、スポークスマンでもあった。この時期、高等教育機関で学歴を得た中(上)流階級の黒人女性らが積極的に政治的メッセージを発し、社会・意識改革を先導した。この構造はその半世紀前の白人女性フェミニズムと全く同様であった。ただ異なるのは、黒人クラブ女性らは女性だけでなく、民族の全体の向上を担っていた点である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
今年度は資料を収集・精読し、追加リサーチを行って、国内および国際学会の発表につなげることができた。特に国際女性歴史学会では欧米の研究者から研究に関わる重要な示唆を得た。今後はこれらの口頭発表原稿を加筆・修正し、論文の形に仕上げて発表したい。
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Strategy for Future Research Activity |
反リンチ活動家であるウェルズ=バーネットの他、黒人女性教育者のパイオニアの一人であるアンナ・ジュリア・クーパー、教育者メアリー・マクラウド・ベシューンに関してさらに研究を進め、学会発表・論文執筆につなげていきたい。クーパーはそのフェミニスト的著書A Voice from the South(1892年)で知られるが、その後のキャリアにおいて徐々に政治的言説を控えるようになる。社会的背景・個人的背景の双方から彼女の思想の変化を見ていきたい。NACW(National Association of Colored Women)会長も務めたベシューンは後のF・ルーズベルト大統領のもとで黒人問題担当局長を務めるなど、社会政治的に黒人の地位向上に貢献した人物である。「教育者」ベシューンの政治的言説に注目してリサーチを進めたい。 さらに、今年度の研究において取り上げたこの時期のトランスナショナル(グローバル)なフェミニズムに関しても研究を進めていきたい。19世紀末から20世紀初頭にかけては各国においてフェミニズムが進展した時期でもある。フェミニズムが国境を越えて直接的・間接的に女性らを突き動かした過程に注目したい。
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Research Products
(2 results)