2014 Fiscal Year Research-status Report
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24520336
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
ヘーゼルハウス ヘラト 筑波大学, 人文社会系, 准教授 (40375382)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | スローターダイク / フクシマ原発事故 / ドイツ文学 / 倫理と政治 / 免疫学と文化 |
Outline of Annual Research Achievements |
当初の研究計画通り、平成26年度はドイツ人哲学者ペーター・スローターダイクの700ページにもわたるエッセイ『生き方を変えよう』を対象とし、そこに見出される修辞、概念、イメージに焦点を当てて研究を遂行した。それと関連して、大学院の授業では西洋における修辞学の伝統や現代的使用について講じた。受講者の大半はそれについて知る機会がほとんどなかったため、この西洋における伝統的な意味伝達の方法を学ぶことに非常に意欲的であった。また、修辞学と関連して、本報告者はつくば市で開催されたJALT (日本言語教育学会)の大会に参加したが、それは結果として、スローターダイクの提唱する概念や方法を通じて、本報告者が本務校で実施している言語教育の組み立てを見直すこととなり、自身のホームページ(herradheselhaus.weebly.com)も開設するきっかけともなった。 また、ヴァンクーバー(カナダ)で開催されたIGALA 8 (国際ジェンダー・文学学会)の災害とジェンダーに関するパネルにて平成26年度の中間報告を行うとともに、筑波大学で開催された第2回グローバル高齢化国際会議では“anthropotechnics”と高齢化について、京都で開催された日本ドイツ文学会ではユーモアにおける修辞学の戦略性について発表した。さらに、3月には、筑波大学の鷲津浩子教授とともに、他大学から法学、宗教学、社会科学を専門とする研究者を招き、法律と免疫論をテーマとした学際的シンポジウムを筑波大学で開催した。さらに、本年度は本研究プロジェクトに関して合計すれば三つの論文を執筆し、ドイツの大学図書館にて新たな研究調査を実施するとともに、ペーター・スローターダイク教授と本報告者の研究ならびに将来の共同研究に向けて話し合いをすることができた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成26年度の研究活動は、平成27年度につながるふたつの重要な収穫を生んだ。 まず、ドイツの著名な哲学者であるペーター・スローターダイク氏が日本(および中国)を訪問し、講義やワークショップを行うことに具体的な興味を示したことである。彼は本報告者の研究と教育カリキュラムに非常に高い熱意を示し、我々は他の組織と合同で筑波大学にてシンポジウムを開催することを予定している。つぎに、5月にプリンスエドワードアイランド大学(UPEI)(カナダ)で開催される学術会議“Climate Change in Culture”にて、本報告者は発表の上、パネルの司会を担当することが決定しており、そこで本研究について説明し、国際的に著名な研究者と議論する予定である。 平成26年度は、“anthropotechnics”や免疫学的戦略など、スローターダイク氏の提唱する概念と「持続可能性(sustainability)」のように国際的に盛んに議論されている概念を接合することに大きな進展をみせた。教育と学生指導に関して言えば、一人の博士課程に在籍する指導学生は、スローターダイク氏に関する本研究プロジェクトとも関連する優れた業績をあげた。とりわけ、文学における災害概念と修辞学的戦略について、国際会議にて英語で発表するとともに、平成27年の5月には日本独文学会ドイツ文学会でシムポジウムに参加し、発表することになった。
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Strategy for Future Research Activity |
本報告者は現在5月にUPEI大学で開催される学術会議“Climate Change in Culture”の発表原稿をまとめ、パネルの準備を進めている。会議には国際的に著名な研究者が多数参加する予定であり、本研究成果について貴重な意見を交換する絶好の機会となるはずである。また、10月には筑波大学にてペーター・スローターダイク氏とのシンポジウム(ないしは学術会議)を予定している。また、本研究は、持続可能性や免疫学、“anthropotechnics”に関する最新の思想を綿密な分析するものであるが、それは同時に異なる言語や文化における思想や概念のトランスナショナルな移動という問題について 新たな知見を得ることにつながるはずである。なお、平成27年度は本研究プロジェクトの出版に向けて準備を進めるとともに、本研究と関連する三つの授業を、大学(学部・修士課程・博士課程)にて実施する予定である。授業では、倫理および責任という概念と異なる言語・文化へのその移動に焦点を当てる。
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Causes of Carryover |
平成26年度の予算のうち残高を平成27年度に持ち越す予定である。これは、ひとつにはペーター・スローターダイク教授を筑波大学に招聘するための資金を確保するためであり、第二にUPEI大学(カナダ)で開催される“Climate Change in Culture”に参加するにあたって多額の費用が必要となるためである。そのほかに、平成27年度には、日本で開催されるJALTでのふたつの講演と、研究資料を収集するためのドイツへの出張を予定している。また、必要な研究資料の購入・複写・印刷、さらにはスローターダイク氏との共同プロジェクトや研究資料に関する翻訳(日本語―ドイツ語―英語)費用を考えている。それに際して、日本語の研究資料のリサーチアシスタントとして、博士課程の指導学生を登用する予定である。これらの研究活動をすべて完遂することで、26年度の繰越金と次年度の研究費のすべてを支出することが必要であると考える。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
次年度の研究費の使用計画は、大別すれば下記の3つに分けることができる。
(1)一次資料・二次資料などの資料購入費・複写・印刷費。(2)国内外の学会への参加・発表と資料調査などの出張費(プリンスエドワード大学〔カナダ〕、ドイツなど)。(3)謝金(ドイツ語・英語・日本語への資料の翻訳、スローターダイク氏の招聘費用など)。特に複数の海外出張を含む(2)とスローターダイク氏の招聘を伴う(3)には、多額の費用が想定されるため、26年度の繰越金はこちらにあてる予定である。
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