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2013 Fiscal Year Research-status Report

ドイツロマン派期の文学と「クンストカマー」受容

Research Project

Project/Area Number 24520339
Research InstitutionNiigata University

Principal Investigator

桑原 聡  新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (10168346)

KeywordsFr. Schlegel / Novalis / クンストカマー / 百科全書 / 神概念
Research Abstract

今年度のテーマは、ノヴァーリスの友人であり、初期ロマン派の理論家の一人であるFr.シュレーゲルの著作に「クンストカマー」的思考があることを証明することであった。そのため、ノヴァーリスとの交流が盛んであった時期(1792~1801年)の著作を中心に精査した。具体的には「ギリシア文学研究」(1795~97年)「アテネウム断片」(1797~98年)「ポエジーについて」(1800年)である。
クンストカマーは、一昨年度既に明らかにしたように、ルネサンス以来ヨーロッパの至る所で見ることのできた蒐集キャビネットであり、ミュージアムの成立とともに没落したものである。クンストカマーはミュージアムと異なり、収集品に区別をつけない。珍しいものにおいてこそ自然・人間の創造力がもっとも明瞭に現れるとする考え方により集められた蒐集物は全体として世界・宇宙を代表するというのがクンストカマーの根本思想である。そこにはミクロコスモスとマクロコスモスの照応という古代以来続く世界観が看取できる。ノヴァーリスにあってはこれに「無限」が付け加わる。
このような思想はシュレーゲルにあって「ロマン主義文学は発展的総合文学である」で始まるかの有名な断片に明確に看取することができる。学問と芸術の総合概念である「ポエジー」「「文学」はシュレーゲルにあって、ノヴァーリスの場合同様、「百科全書」と名づけられる。少なくとも「アテネウム」時代のシュレーゲルにとってはノヴァーリス同様「断片」という形式は彼の思想を表現する重要な媒体となっている。
初期シュレーゲルの思想を辿るとノヴァーリスのそれとの親近性が明瞭となる。現在のところ初期シュレーゲルの著作に「クンストカマー」を比喩とした表現は見られないが、宇宙を反映するポエジーという思想はノヴァーリスが到達した思想でもあったのである。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

当初の予定は以下の通りであった。「シュレーゲルが、詩学としての「断片」という思想に至るに際してクンストカマーの再発見(恐らくノヴァーリスを介して)が果たしたであろう役割、とりわけ「断片」と「無限」の関係を中心に考察することによって、従来ポスト・モダンを導く抽象的思想としてのみ扱われてきた彼の思想を西洋文化史に置くことによって彼の初期哲学の背後にはルネサンス以来のコレクションの思想があることを解明する。」
この目的はほぼ達成されたと考えている。しかしながら当初はシュレーゲルの作品の中に「クンストカマー」という語を見いだすことができると予想していたが、今のところ果たせていない。

Strategy for Future Research Activity

本年度及び来年度は、シュレーゲル研究を続けると同時に、「廃墟の集積」とも称されるJ.パウルの初期小説の分析を開始する。J.パウルは執筆にあたって膨大な抜き書きあるいは事項の収集を行い、それを整理・目録化していたことが判っている。また、J.パウルが自らの作品構成に非常に意識的であったことも指摘されている。J.パウルの文学的方法を考える際に問題になるのは、構成に意識的であることが調和・完結した作品を生み出さないという点にある。「自我」の分裂を経た後の18世紀末、19世紀ドイツ文学にあってもJ.パウルの作品群の逸脱、物語の中断は異様に映る。本年度は、彼の作品の逸脱に注目し、それが一つの原理、すなわち「クンストカマー」の原理に従っており、この部分においてこそ、物語の直線的進行を嫌うJ.パウルの「楽園」としての「第二の世界」が表現されているという仮説を論証する。

Expenditure Plans for the Next FY Research Funding

平成26年度は当初資料収集のための海外渡航旅費を計上していなかった。しかしながら研究が進む内になおドイツ・Wolfenbuettel図書館を初めとする図書館で資料を探索する必要が出たため、その旅費として上記金額を繰り越した。
上に理由を述べたように繰り越し分は、今年度の経費の一部と共に海外での資料収集に当てる予定である。

  • Research Products

    (2 results)

All 2013 Other

All Journal Article (1 results) (of which Peer Reviewed: 1 results) Presentation (1 results)

  • [Journal Article] Die Idee der Kunstkammer als ein Modell fuer die Enzyklopaedistik des Novalis2013

    • Author(s)
      Satoshi Kuwahara
    • Journal Title

      Study of the 19th Century Scholarship

      Volume: Vol. 7 Pages: 17-31

    • Peer Reviewed
  • [Presentation] アタナシウス・キルヒャーとクンストカマー

    • Author(s)
      桑原聡
    • Organizer
      19世紀学学会シンポジウム
    • Place of Presentation
      新潟大学総合教育研究棟大会議室

URL: 

Published: 2015-05-28  

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