2012 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮近代文学の形成過程に関する研究-日本(語)との影響関係を中心に-
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24520408
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
布袋 敏博 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (30367122)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 文体 / 日本語 / 朝鮮語 / 翻訳 / 日本文学 / 西洋文学 / 近代 / 外国語 |
Research Abstract |
初年度は、資料の調査、整理に重点を置き、それに伴い、海外での資料調査に比較的多くの時間を割いた。また、それらを整理するためPCを購入する予定でいたが、Windows8が発売されるとの情報を得、その発売を待って実物を見たところ、Windows7で作成してきたこれまでのデータとの継続性、整合性、また使用方法などの点で多くの困難さが見られたため購入を見送った。一方で、研究発表の準備として海外での資料調査に出かけ、こちらは相当な成果を得ることができた。出張は次のとおりである。 ・平成24(2012)年5月22日~27日、韓国。これは平成25(2013)年秋に開催予定の国際シンポジウムの打ち合わせのためである。 ・同8月23日~9月7日:韓国(うち、8月26日~9月2日:中国・延辺)。 ・同9月11日~23日:米国・ワシントンDC、ボストン。 こうした調査をもとに、同年10月24日~28日と韓国に赴き、延世大学原州キャンパスで開催される「第12回近代韓国学研究所 国際シンポジウム」に参加、発表する予定であったが、飛行機に乗り込むべくカウンターで荷物を預けた途端に父の様態悪化の連絡を受け、すべてキャンセルして帰省した。父は結局年明けの1月8日に死去した。この時の発表原稿「金東仁と文体問題」はいったん宙に浮いたが、平成25年3月に、再度延世大学原州キャンパスで開かれたシンポジウムに参加して発表することができた。こうした個人的事情により、予定していただけの研究を行なうことができず、資料の収集と1本の発表論文にとどまったのは残念であったが、肉親の病気と闘病生活の介護、入院・手術、そして死去という予定外の出来事から、やむを得ないことでもあった。ただ、この時に収集できた資料は、次年度以降に有効に生かせることは間違いがないので、次年度以降に期したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初年度の達成度は、40%程度にとどまったと判断する。その大きな原因は、概要にも記したことだが、父親の病気の進行等があげられる。 父は2006年にパーキンソンを発病した(あるいは発病はもっと以前からだったかもしれないが、病院で偶然なことから指摘を受けたのがこの年)。それに対し、できる限り自宅で暮らす日常を優先させたいと、在宅介護を選択したが、老母一人ではとうてい手に負えないため、私がほぼ毎週末帰省し、夏季休暇などの長期休暇時には実家で過ごすということを繰り返し、またサバティカル期間も実家で過ごすというような時間を送ってきた。そこへ昨年2月に、これもやはり長く患っていた「多発性多臓器骨髄腫」の数値が限界点を超え、癌に転化した。それに加えて同年3月と4月には、ケアハウスにショートステイとして預けていた時に、職員の不注意から転倒し、背骨と右ひじを骨折し、右ひじは即入院・手術と診断され、4月13日から入院生活が始まった。 皮肉にもこの入院によって、私が動ける時間ができ、結果的にひと夏、資料収集に海外を経巡ることができた。動けるときに動くしかないと、当初の計画以上に海外での資料調査に時間を割いたが、この時の判断は正しかったと思っている。 というのも、9月下旬に米国から帰国したあとは、再三再四呼び戻され、研究に集中することがかなわなかったからである。結局本年1月8日に父は亡くなった。その後もその事後処理などに多くの時間を取られたが、ようやく落ち着いてきているところである。 そうした中で不十分ながら一度、シンポジウムで発表でき、また相当な分量の資料を収集できたことはせめてものことであったと言わねばならない。
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Strategy for Future Research Activity |
第2年度は、初年度が父の病状の悪化、死去などによって思うように研究が進まなかったその積み残し分も含め、研究を進める予定である。即ち、初年度に収集した文献も含めた必要資料の整理、分析を行なう。それに加えて、本年進める予定でいる開化期朝鮮人留学生たちの残した文章を総ざらいし、分析して論文としてまとめる。また夏には、昨年同様海外に赴き、資料調査を行なう。秋には、予定通り、10月25日~27日に国際シンポジウムを開催する。できれば、国内、国外で各1本ずつ論文を発表する予定である。さらに、作品目録の作業を進めているが、間に合えば第2年度に刊行するが、間に合わなければ、当初の予定通り最終年度に刊行する。 課題である朝鮮語がどのように近代語、文学語として形を整えていったか、発展していったかの過程を示すのに必要な当時の文献の収集、および分析、読み合わせの作業は引き続き行なうが、これも申請時に記したとおり、今回の助成期間だけで作業が終了するとは思われないので、できるところまで作業を進め、次に続けていく。第1期としての成果物は、できるだけまとめていって、形として提供したいと考えている。 また、2001年からこれまで刊行してきている『近代朝鮮文学日本語作品集』の第4期として「セレクション2」全8巻(予定)を刊行すべく準備を進めている。これは、日本語を通して近代文学を吸収していった朝鮮人文学者たちが残した日本語資料を集大成すべく続けている作業で、ここにみられる朝鮮人文学者たちの作品群は、本研究と緊密な関係のある基本資料群である。この資料集は今回が最終期と考えているが、資料集の完結後はそれらをもとに、本研究成果となるであろう開化期、およびそれ以降の日本(語)と朝鮮(語)の影響関係も含め、『日本語文学論』(仮題)としてまとめる予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
研究助成第2年度にあたる平成25(2013)年度には、申請した通り、10月25日~27日(招聘期間は移動に前後1日を加え、24日~28日)に早稲田大学で国際シンポジウムを開催する。研究費は主にこのシンポジウム開催に使用する予定であるが、そのシンポジウム打ち合わせのため韓国を数度訪問する。また、初年度に購入予定であったがWindows8の発売のほうを得て控えていたPC(Windows7)を購入する。それ以外に、この年度にも必要資料の購入、および夏などの長期休暇期間には海外に資料調査に出かける予定である。
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Research Products
(1 results)