2013 Fiscal Year Research-status Report
朝鮮近代文学の形成過程に関する研究-日本(語)との影響関係を中心に-
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24520408
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Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
布袋 敏博 早稲田大学, 国際教養学術院, 教授 (30367122)
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Keywords | 朝鮮近代文学 / 朝鮮人留学生 / 日本語 / 開化期 / 新聞 / 李光洙 / 南宮璧 / 金東仁 |
Research Abstract |
助成第2年度の本年度は、大きな行事として、2013年10月26日(土)に韓国および、日本各地から研究者を招き、国際シンポジウム「朝鮮近代文学、その萌芽と展開」を開催し、これをはさんで10月25日(金)に打ち合わせを兼ねた座談会、27日(日)に文学踏査と、3日間の行事を行なった。ここでは、基調講演として金允植ソウル大名誉教授による「民族の解放と自由から個人の解放と自由へ-朝鮮近代文学と外国文学の関係」をはじめ、最初の新小説の作者である李人稙の『帝国新聞』所載「血の涙 下篇」についての研究や、朝鮮近代文学の先駆者たる李光洙が1913年に翻訳した作品を中心にした文体分析、1910年代翻案家庭小説の位置、また布袋による「朝鮮人留学生学報・開化期会報誌と近代文学」などが発表され、朝鮮近代文学における文体形成について、深度のある論議が繰り広げられた。 また、研究代表者である布袋は、李光洙が留学中に仲間たちと出していた同人回覧誌が近年発掘されたのをうけて、やはり同時代の朝鮮人留学生、南宮璧の文章などと比較し、李光洙が文体創出や時代意識などの点で傑出していることは疑えないが、だからと言って彼一人に帰することはできず、当時の朝鮮人留学生全体をより深く詳しく考察する必要性を指摘した。 これらは、前年度末の2013年3月17日~19日に韓国延世大学原州キャンパスで開かれた国際学術セミナー「韓国近代作家研究」で、「金東仁と文体問題」を発表したものとひとつながりのものである。この「金東仁と文体問題」は、やはり初期の留学生の一人であり、朝鮮近代文学の文体形成に大きな貢献をした金東仁について、その文体が、当時日本で発行されていた西洋文学の日本語翻訳書の影響によるところが大きい可能性があることを示したものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究の作業として行おうと考えているのは、①当時の朝鮮人留学生の全体像、即ち、日本に渡ってきた彼らがどこで何を学び、どういう活動をしたかという全体的な把握、②そのうち文学に携わることになった者たちについて整理すること、③彼らの著わした作品の中に、日本の影響がどう表われ、また近代文学の文体形成にあって、日本語また日本語に翻訳された欧米文学作品の影響がどう表われているか、ということを調査・検討することである。 これらはいずれも大変に大掛かりな作業で、多くの時間を要するものである。この点は、申請時に述べたように、今期の助成期間だけですべてが明らかになるものでなく、そうした意味で、現時点では上記のような達成度であると自己評価している。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も、昨年度に引き続き、10月25日(土)に国際シンポジウムを開き、研究成果の一部を公開する予定である。費用は、今年度が最終年度であり、報告書作成費等にも費用がかかることから、残る科研費のみでは開催は困難と思われたが、幸い、他民間財団から研究助成を受けることができるようになったので、両方の基金を使用して開催することにした。 また、研究作業として、1896年に朝鮮における最初のハングル新聞として刊行された『独立新聞』、それに1898年から10年にわたって発行された『帝国新聞』、また最初の新小説とされる「血の涙」(1906)を掲載した『万歳報』、そして熊本出身の日本人団体が1904年から漢城(現ソウル)で発行した朝鮮語新聞『漢城新報』の文体、語彙を比較・分析し、日本語との関係、それらと近代文学との関係を探る予定である。 今年度は最終年度であるので、本研究の一区切りとしての報告書を作成する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
韓国で購入した書籍・資料類について、研究代表者が計算していた額と、領収書を提出した時点でのレート差によって、多少の誤差が生じた。これは帰国後領収書を研究代表者が提出するのが遅れたために生じた誤差である。 これまでと同様に、書籍・資料代として使用する。今度は誤差が生じないよう、使用後間隔を置かず領収書を事務所に提出したい。
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Research Products
(5 results)