2012 Fiscal Year Research-status Report
海外紀行文の総合的研究―視覚的想像力の諸相をめぐって
Project/Area Number |
24520410
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
中川 成美 立命館大学, 文学部, 教授 (70198034)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 海外紀行文 / アジア / 西欧植民地主義 / 国際情報交換 / パリ / タイ / フィリピン |
Research Abstract |
海外紀行文研究の第一期として予定した平成24年度は、1800年代後半におけるアジアの問題を中心に調査を実施した。タイについては平成24年6月15日から18日まで立命館大学研究旅費にて、また平成25年3月13日から20日まで間接経費を用いて調査した。明治期日本人渡航者についてはチュラロンコン大学にてこれを専門とするナムティップ講師の協力を得た。ただ、本年度は、受け入れ先を予定していたフィリピン大学との折衝がうまくいかず、台湾、ベトナム、またインドネシアにおける調査については戦間期を含めた新たな調査予定を立てて次年度以降に繰り越して実施することにした。 平成25年度を予定していた戦間期ヨーロッパ、特にパリの調査に関しては平成24年9月8日から23日まで、パリ第7大学における博士論文審査員としての用務の傍らにプレ調査を行うことが出来た。特に左翼運動とヨーロッパ反ファシズム闘争の関係における日本人のかかわりについての飼料を得ることが出来た。25年度の調査に活用したい。 課題の社会発信として、25年2月23日に立命館大学土曜講座として「旅する視覚」を、また3月26、7日に「トラベルライティングという領域」という国際ワークショップを開催した。 資料分析としては、この時期に渦巻くナショナリズムは一方に欧米植民地主義への反発となって顕現しているが、これらがあらわれた文学を、山田美妙、押川春浪などの著作から得ることが出来た。また24年11月29日から12月3日までソウル・東国大学で開催されたメカデミア世界大会での研究発表の折に現地資料調査を行うことができた。 本年度の調査からわかってきたのは、海外紀行文に投入された近代化への憧憬と、同時に表出された西欧帝国主義への批判は、このジャンルの独自な形態を創出していったという点である。次年度には一層の深化をもった調査を目指したい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
遅れている原因の一つにアジアの調査に体制を充分に構築されていない点にある。特にフィリピンは、フィリピン革命との関係から重要な調査対象であるが、いまのところフィリピン川の資料、また該当領域の研究協力者が見つけられていない。タイを中心とするベトナム、フィリピンとの「南方圏」、および台湾、韓国、中国の東アジア圏とに分けて調査していく必要があることが了解されたが、あまりに広範な調査対象領域なので、随時整理しながら考えていきたいと思う。 ただ、海外実地調査の時間がなくなったことによって、資料分析が進んだ点は幸いであった。国立国会図書館、日本近代文学館、外務省外交史料館などによって多くの資料を得られ、また分析できた点が本年度の成果といえる。また当初計画していなかった韓国での調査から明治期反植民地主義運動と近代化過程の相関的な問題に対する知見を得られたことは大きかった。今後の研究指針にこれを加えて考えて逝きたい。
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Strategy for Future Research Activity |
明治期のアジアの近代化過程を視野に入れた日本人の海外紀行文、および韓国、フィリピン、タイ、ベトナム、台湾からの日本見聞記を比較する作業を始めたい。このためにゆるやかな研究ネットワークを作りたいと考えている。また西欧圏にかんしてはヨーロッパを中心に日本見聞記と日本情報の資料を渉猟して、それらにみられる文化史観を分析していきたい。 25年度にはパリを中心とする左翼系日本人のネットワークを中心に資料収集、分析を行う予定であるが、前述したアジアの近代化への視線を加味した形での研究方向を模索したいとも考えている。具体的には夏季休暇を利用して調査をすすめたい。また春期休暇ではアジアネットワークを中心とする現地調査を行いたい。同時に国際ワークショップを開催して情報交換をする予定である(日時は未定)
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
本年度はアジア現地調査に予定していた費用を積み残してしまったが(707,234円)、それをつかって現地調査、資料収集を実施する予定である。またデータ収集のためにアイパッドを新たに購入したい。 本年度のアジア調査の際に再調整したスケジュールに従って資料調査を行う予定であるが、経費については立命館大学国際言語文化研究所重点化予算が次年度に受給出来ればそれと併用してなるべく効率的に回りたいと考えている。なお、現地研究者、および図書館等の資料機関とはすでに何度かのやりとりがあるため、次年度予算の節約もあって、重点化すべき地域については訪問するが、その他については関係資料をとりよせることになるかと思う。 ヨーロッパについてはフランスに重点化する予定であるが、ユーロの高騰などの条件もあって期間短縮等を考えている。 上記のように、物品費約300000円、海外出張費600000円、資料・図書費300000円、研究会開催費2回(参加者旅費等)500000円程度を考えている。
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Research Products
(7 results)