2014 Fiscal Year Research-status Report
日本語・中国語・タイ語受動文の比較統語論研究及びデータベースの構築
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24520423
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Research Institution | Mie University |
Principal Investigator |
綾野 誠紀 三重大学, 教養教育機構, 教授 (00222703)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 統語論 / 受動文 / 日本語 / 中国語 / タイ語 |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は、タイ国内の政情不安により、当初予定していたタイ国マヒドン大学アジア言語文化研究所における、さらなる調査を実施することが出来なかった。その為、平成24年度及び25年度において収集した調査結果について詳細な検討を行った。特に、平成25年度に収集したタイ語の受動文に関するデータを基に、対象句の移動の有無について、また、受動文中の他の文要素との統語関係について、イディオム、照応表現、数量詞、否定極性表現等を用いたデータに基づき検討を行った。その結果、対象句の移動を示す事実を確認することができたが、一方で、中国語同様に、対象句の基底生成分析を支持する事実も存在することが分かった。なお、タイ語の受動文は、中国語や日本語のそれとは異なり、意志を持つ有性名詞句が主語位置に要求される為に、中国語や日本語では可能な受動構文が得られないこともあり、検証困難なケースがあることも判明した。このタイ語の特性は、受動態形態素の統語特性を反映していると考えられ、平成27年度にさらなる検討を行う予定である。 さらに、平成26年度の後半では、日本語と中国語の所有受動文の統語構造について、特に、主語位置に現れる所有者句の統語特性について考察を行った。何れの統語構造についても、移動分析と基底生成分析が存在するが、移動分析を支持する事実について、日本語については尊敬語化の事実を基に考察を行った。平成27年度は、中国語の移動分析を支持する事実について今後検討する予定であると同時に、タイ語の所有受動文の事実及びその統語特性についても検討する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
タイ国内の政治事情により、平成26年度に予定していたタイにおける調査ができなかった為。
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Strategy for Future Research Activity |
平成27年度の前半は、さらなるデータ収集・調査を実施し、後半では、4年間の研究の総括を行う。日本語・中国語・タイ語の受動形態素のもつ特性の類似点・相違点を明らかにし、3言語の受動文の統語構造を決定づけていると考えられる受動態形態素を構成する種々の素性について考察する。また、受動文の派生に関わる操作についても検討し、統語部門における計算処理への示唆を検討する。4年間を通じて収集・整理した日本語・中国語・タイ語のデータベースについてはすべてローマ字表記に変換し、さらには英語逐語訳及び英訳を付した上で、データベースを構築する。その際、中国語及びタイ語の母語話者に最終的なデータの確認を依頼する。研究成果の一部については学会等において報告すると同時に、タイ語と中国語の比較統語論の視点からの研究成果は、タイ語及び中国語の母語話者が多く集まる研究集会において報告し、最終的な評価を関係する研究者から頂く。
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Causes of Carryover |
タイ国内の政情不安定により調査を行うことができなかったため。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
現地調査及び成果発表に充当する予定である。
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Research Products
(5 results)