2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520449
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
鄭 惠先 北海道大学, 留学生センター, 准教授 (40369856)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | メディア言語 / ジャンル / 日韓・韓日翻訳 |
Research Abstract |
本研究は、日韓対照言語学的な視点から、日本と韓国の映像メディアを考察・分析し、その言語表現の特徴を体系的に記述することを目的としている。研究当初は、まず映像メディアのジャンルによる言語的特徴、次に日韓・韓日翻訳時の形式的なズレ、心理的なギャップ、最後に言語教育への応用という3つに注目した。このうち、研究初年度である24年度は、主にジャンルによる言語的特徴と、翻訳時のズレについて分析すべく、両言語による映像メディアを考察し、その結果を様々な場で発表、公開してきた。具体的な研究の成果は、別途記載するので省略するが、主な内容は、「翻訳課程での意図的な改変プロセス」と「言語切換によるキャラクタの再構築」という2つの傾向が明らかになったことである。 まず、前者について簡単に述べる。「翻訳を介した映像メディア」の翻訳字幕は、翻訳者の意図と番組制作者の意図が合体した「二元的変形プロセス」を有することになる。言語的な改変プロセスは、スピーチレベル、キャラクタ、言語表現などの様々なレベルで行われ、その形体も拡張、縮小、省略、無視など多様である。本研究では、これらの改変プロセスを意図的改変と非意図的改変に分けて分析し、その方法と効果を明らかにした。 つぎに、後者について述べる。本来、「翻訳」においてもっとも重視されるのは、目標テキストの受容者(=視聴者)の反応が起点テキストの受容者の反応と等しくなるという「動的等価」であるが、映像メディアでの翻訳においては、元のメッセージを翻訳後の映像メディアの中でどのように表現したいかという、伝達者(=制作者)の意図と目的によって、さまざまな言語的な操作が行われる。その結果、翻訳前の映像メディアには現れていない新しいキャラクタが、翻訳後のメディア上で再創出されるという現象もが観察されるのである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の予定では、日韓両言語による映像メディアのコーパス構築を主目的として研究を進めていた。しかし、著作権の問題や技術的な障害が大きく、個人レベルでの本研究では、公開を見据えたコーパス構築は難しいと判断し、非公開レベルでのデータ収集と分析にとどめる形で、若干の方向転換を余儀なくされた。 しかし、「研究実績の概要」に詳しく述べているように、当初、分析のポイントとしていた3つの言語事象については、問題なくデータ収集と分析が進み、その中間報告も研究発表の形で発信済みである。 よって、今のところ、本研究はおおむね順調に進展していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は、まず、24年度に発表したデータ分析の結果を論文としてまとめる予定である。また、前年度に引き続き、両言語による映像メディアのデータ分析と結果発表を続けていく。この段階で重要なのは、「映像メディアのジャ ンル別特徴」と、「翻訳上の問題点」、「日本語と韓国語の言語構造や表現の違い」という3つの要素を有機的に関連づけて考察することである。とりわけ、24年度の研究成果として明らかになった「翻訳課程での意図的な改変プロセス」と「言語切換によるキャラクタの再構築」という2つの傾向に関連して、その理論的な裏付けを固める必要があると考えている。よって、日韓両言語の映像メディアのデータ分析をさらに進める一方で、「翻訳学」や「コミュニケーション学」などの従来の研究理論を、よりクリティカルな視点に立って再検討することに力を注いでいく予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
まず、次年度使用額304,433円が発生した理由は、もともと予定していた出張が3月後半に集中し(3/13~17、3/20~24)、それらの精算が25年度に入ってから完了したためであり、実質的な繰越額は5万円強である。つぎに、翌年度以降に請求する研究費と合わせた使用計画についてだが、25年度は、研究発表の場をさらに他国に広げていきたいと考えており、旅費の負担がもっとも高くなると思われ、その費用に充てたいと考えている。
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Research Products
(3 results)