2014 Fiscal Year Research-status Report
方言調査法の方法論的検討-方言調査データの信頼性の測定-
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24520492
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Research Institution | Fukushima University |
Principal Investigator |
半沢 康 福島大学, 人間発達文化学類, 教授 (10254822)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 拓 仙台高等専門学校, その他部局等, 教授 (20290695)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 宮城県方言 / 福島県方言 / 計量分析 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は以下の2点である。(1)方言調査におけるさまざまな調査法を用いた場合,それぞれの調査データがどの程度安定するのかという点を定量的に明らかにし,各調査法の信頼性を表す指標(信頼性係数)を求める。(2)各調査法によってこれまでに収集した方言調査データ(言語変化の解明を目的とする社会言語学的多人数調査データ)の再分析を行なう。 標記目的を達成するため,26年度は以下の研究活動を行なった。 [1]面接質問法による調査:面接調査法の信頼性係数を求めるために,同一のインフォーマントに対して,同一の方法による実験的調査を複数回実施し,その結果の安定性を把握する。今年度は昨年度実施した福島県田村郡小野町多人数調査の第2回目の調査を実施した。25年度のインフォーマントへ再調査を依頼し,1年間の間隔をおいて同一項目を調査した。これにより社会言語学的多人数調査に関する信頼性検討のためのデータセットを得た。さらに昨年度までに調査が終了した宮城県伊具地方での言語地理学的調査についてはデータの分析を進め,研究代表者および研究協力者(本多真史)が結果を学術論文として発表するとともに調査報告書を刊行した。 [2]自記式調査法による調査:自記式調査法についても,[1]と同様,同一インフォーマントに対して同一の調査票を用いた2回の実験的調査を実施し,データセットを得ている。本調査データについては引き続き分析を進めている。 [3]インタビュー法による調査:インタビュー法調査についても福島県内各地で自由談話収集を行ない,同様にデータを収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成26年度までに実施を予定していた[1]面接調査法による調査(伊具地方調査,小野町調査),[2]自記式調査法による実験的調査,[3]インタビュー法による談話調査とも,いずれも計画通り実施できた。分析作業についても結果を公開研究会等で報告するとともに,学術論文,報告書を刊行した。小野町調査の分析の過程で気づいた方言の新しい変化の状況を把握するために研究期間を1年間延長して調査を継続しているが,当初の計画に照らして,研究は順調に進捗していると判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は以下の調査を実施するとともに,研究の最終年度としてこれまで得たデータセットの分析を引き続き実施し,学術論文を刊行する。 [1]福島県田村郡小野町方言の補充調査:25,26年の2年間で,小野町において各世代多人数を対象とした2回の繰り返し調査を実施し,面接質問法の信頼性を推定するための2回分のデータセットを得た。1年間の調査間隔をあけることで第1次調査に対するインフォーマントの記憶が薄れ,その影響を排除できる。一方1年程度であれば言語変化が格段に進行するとは考えられず,経年変化の可能性も無視できるので2回の調査結果の異なりを「調査法に起因する誤差」とみなすことができる。 またこのデータは同時に「見かけ時間」による方言変化をとらえるためのデータとしても活用できる。データ分析を進める中で,若年層に向けて新たな方言変化が発生していると思しき事象が見つかったため,新たに若年層を対象とした補充調査を実施する。この調査結果を含め,3年間の小野町調査の結果について,最終的な報告書を刊行する。 なお本研究は2010年度科研費に採択され,南相馬市小高区および伊達郡川俣町山木屋地区において調査に着手していたが,その後発生した東京電力原発事故の影響でこれら地域の調査継続が困難となったため「東日本大震災の影響を受けた研究代表者の重複応募制限の特例」を利用して2012年度科研費に応募,採択されたものである。小高区,山木屋地区での調査再開についても検討を進めていたが,本研究期間内の避難区域指定解除は難しい状況にあり,当該地域での調査再開は断念せざるを得ないと考えている。
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Causes of Carryover |
26年度は研究の最終年度として,既刊の伊具地方調査報告書と併せ,小野町調査についても報告書を刊行する予定であったが,上記の通り分析の過程で小野町方言の新しい変化と思しき現象が確認されたために,新たに若年層を対象とした調査の必要性を感じ,研究期間を延長することとした。報告書もこの調査を行った後に刊行することとし,調査費用および刊行費用を留保した。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
既述の通り,27年度に福島県田村郡小野町において若年層を対象とした補充調査を予定している。研究代表者,研究協力者および調査員を委嘱する学生の調査旅費として使用する。小野町調査の最終報告書を刊行する費用も必要となる。
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Research Products
(3 results)