2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520498
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
沖 裕子 信州大学, 人文学部, 教授 (30214034)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 国際研究者交流 / 中華人民共和国 / 大韓民国 / 談話 / 発想 / 表現 / 作例談話資料 / 自然談話資料 |
Research Abstract |
本研究の目的は、(1)談話記述のための方法論の開拓、(2)日本語談話の記述、(3)日本語談話の発想と表現に関する特徴の抽出、の3点にある。本年度実施した内容は、以下のとおりである。順番に記していく。 (1)① 国際共同研究再開にあたり、共同研究者全員の参加を得て、研究の現状(H19~H22年度科研成果)を振り返る国際会議(於北京大学)をもった。② 次年度の韓国会議に向けて行う作業を討議し、韓国語、中国語と対照させて日本語の発想と表現の特徴を抽出するために、内省談話資料の基本的作成方針を討議、決定した。 (2)① 内省談話資料(作例談話資料)による分析という新手法の長所と短所をより明確に規定するために、自然談話資料(実例談話資料)を用いた分析と記述を行い、口頭発表を行った。② 作例談話と実例談話の両者にまたがる内省分析方法による談話記述を行い、口頭発表と、研究論文発表を行った。 (3)日本語談話の発想と表現に関する特徴を、主として(2)から整理し、次年度への準備とした。 上記の実施内容の意義と重要性は次のとおりである。(1)共同研究チームの全構成員4名(代表者:沖裕子(信州大学)、連携研究者:西尾純二(大阪府立大学)、海外共同研究者:趙華敏(北京大学)、姜錫祐(韓国カトリック大学))が一堂に会して討議することによって、共同研究再開時点の現状と今後の方針を共有することができた。(2)自然談話資料を対象にした談話記述をスタートさせることによって、内省談話資料を用いた新しい談話研究の方法論がもつ長所と短所の特徴を把握することにつながった。自然談話資料は、共通語も含めて言語的には地域語で表現されているため、日本語談話の発想と表現に関して、日本国内の方言的変異についても考察が進んだ。(3)日本語談話の発想と表現的特徴の構造化について、言語・方言の両面から整理できた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の目的の達成度に関しては、全体として、当初の計画以上に進展しているといってよいかと思う。計画では、以下の第1、第3を中心に行う予定であったが、第2の観点を積極的に展開することによって、本研究テーマをさらに有効に追究しえた。 第1に、共同研究者による国際会議の実施と、今後の共同方針の共有ができたことは、当初の計画通りである。内省談話資料作成方法の検討と作成方針の決定は順調に進展している。会議の結果、内省談話資料の妥当性の検証に入る前に、構造化した内省談話資料を蓄積を行うことの重要性が提案、認識され、それにしたがって、次年度の韓国会議までに各自が作業を行う方針を共有できた。ただし、作業の蓄積に関しては、4名の進捗状況について、さらに、作業を進める際の問題点の共有について、インターネットを利用した活発な情報交換を行う必要があるように思われる。 第2に、当初の計画以上に進展した部分は、代表者一人が進めた研究部分である。当初の研究計画をさらに補強するために、内省談話資料と対比される自然談話資料を用いた談話記述をスタートさせた。研究目的にあげた、内省談話資料の作成とそれを用いた談話記述という新しい方法の開拓を進めるにさいして、その長所と短所をより具体的に把握するためには有効な方法であったといえる。自然談話資料は、共通語も含めて地域語としての特徴をそなえているため、日本語談話の発想と表現に関して、日本国内の方言的変異についても考察が進んだ。言語・方言の連続的記述が推進されたことで、音声、語彙、文法などの下位の単位が、談話表現の選択を拘束する影響関係を考察に加える道も開けた。これらの成果は、今後の研究計画の推進を加速させることになるであろう。 第3に、日本語談話の発想と表現についての包括的考察については、上記の研究実施から気づきを蓄積している段階であり、これは計画通りである。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究推進方策は、次の通りである。第1から第3の観点を立て、第1は共同研究、第2、第3は代表者個人の研究として、同時に推進していきたい。当初の計画通り、第1の研究打ち合わせ、第2、第3の資料収集、成果発表のための旅費と消耗品が必要である。 第1の方策は、海外共同研究者も含めた4名の共同研究を推進することである。韓国会議を予定しているが、それまでに、検討課題である作例談話資料の構造化について、インターネット等による事前の情報の共有を行っていくように進めたい。また、中国語、韓国語の発想と表現からみた日本語談話の発想と表現の特徴を抽出するにあたって、談話種に関する考察をできるだけ進めること、また、日本語の音声的、語彙的、文法的特徴が、どのように談話表現の選択を制限しているかについても、できるだけ考察を進めておきたい。 第2の方策は、言語と方言の連続的記述を試みることである。国外の言語と対照させた日本語談話の特徴は、第1の内省談話資料により把握できる可能性が大きいと予測している。これに対して、良質の自然談話資料が存在する国内の方言変種については、それらの資料も積極的に活用することで、分析観点の新たな発見が見込めることと思う。また、母方言談話も積極的に分析することで、内省談話資料と自然談話資料をつなぐ方法論の発見について、模索を続けていく。この第2の点は、平成24年度の成果をふまえながら、進展させていきたい。 第3の方策は、日本語談話の発想と表現について、これまでの気づきを体系化するよう、試行錯誤を続けることである。特に、音声、語彙、文法、談話の同時結節モデルに即して、定式化を追求する年度にしたい。 以上の推進方策にもとづいて、第1に関しては、研究者の内省談話資料を蓄積して、一覧できるようにとりまとめを進めたい。第2、第3については、成果発表を行いたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
当初計画で見込んだよりも安価に研究が完了したため、次年度使用額が生じた。次年度においては、研究打ち合わせのための海外旅費に加えて使用する予定である。
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