2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520498
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
沖 裕子 信州大学, 人文学部, 教授 (30214034)
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Keywords | 談話 / 発想 / 表現 / 作例談話資料 / 実例談話資料 / わきまえと察し / 国際研究者交流(韓国・中国) / 国際情報交換(インドネシア) |
Research Abstract |
本研究の目的は、1)談話記述のための方法論の開拓、2)日本語談話の記述、3)日本語談話の発想と表現に関する特徴の抽出、の3点にある。これに関わる本年度実績は、以下のとおりである。 (1)昨年度の北京会議に続き、本年度は、海外共同研究者、連携研究者とともにソウル会議(2013年8月9日~12日)を持った。日本語談話、韓国語談話、中国語談話を対照させる方法論について議論を重ねるとともに、音声、語彙、文法などの、談話より下位の言語単位が談話表現の選択を拘束する影響関係について、対照談話論的に検討を進めた。成果の1部を沖裕子(2013)「談話論からみた句末音調の抽出」『国立国語研究所論集5』にまとめた。また、海外共同研究者趙華敏は、中日対照言語学会(於福健師範大学)、東京外国語大学夏季セミナーで、発表、招待講演を行った。 (2)日本語談話表現法の基本的な特徴を分析した(沖裕子2013「談話種変換からみた日本語談話の特徴―わきまえ・察し・見立て・仕立て―」『明海日本語』第8号増刊号)。また、インドネシア日本語教育学会招待講演(2014年2月28日)於国際交流基金インドネシア日本言語文化センター)にて概説し、日本語教育実践への応用可能性について情報交換した。 (3)作例(内省談話資料)と、実例(実例談話資料)の資料的特徴の整理を、両者資料の分析を通して考察した。沖裕子(2013)「大規模方言談話資料にみる受話法の地域差」(熊谷康雄編2013収載)では、音声付自然談話資料を用いて、実例談話資料でのみ分析可能な、受話冒頭の地域差について分析した。また、日本語の配慮体系の基本をなす「わきまえ・察し」は、{場面意識}の結節層にみられる特徴であることから、むしろ作例談話資料からの抽出が優れていることにも言及した。さらに、内省資料の検証と補強を兼ねて、談話種を限って実例談話資料の収集を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究の目的の達成度に関しては、全体として、当初の計画以上に進展しているといってよいかと思う。計画では、以下の第1、第2を中心に行う予定であったが、第3の観点を積極的に展開することによって、本研究テーマをさらに有効に追及しえた。 第1に、海外共同研究者、連携研究者との共同研究が進展したことである。談話記述のための方法論の開拓、談話記述の観点、発想と表現に関する特徴の抽出の3点について、作業と分析、討議を行うことができた。 第2に、談話研究における新たな方法として、作例(内省談話資料)を用いることの有効性について、考察が進んだことである。作例と実例の両方の方法を用いて、談話記述を進めることで、両者の長所と短所の把捉が進んだ。 第3に、日本語談話の発想と表現に関する特徴の抽出が進展したことである。{意識}のレベルに存在する配慮体系の特徴を抽出、記述し、//表現//のレベルにみられる特徴についても指摘しえた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成26年度の研究推進方策は、次の通りである。本研究の最終年度に当たり、次の点を進めるとともに、研究成果の口頭発表と論文化を行いたい。 第1の方策は、海外共同研究者、連携研究者を含めた4名の共同研究をさらに推進することである。日韓中国語母語話者による共同研究という国際的研究ティームの特徴を生かして、各自の内省を働かせながら、収集した作例談話資料と実例談話資料のつきあわせを行い、談話記述方法の新たな開拓について、知見をまとめる。また、この方法を用いた分析成果をまとめる。 第2の方策は、言語と方言の連続的記述に関して、成果をあげることである。日本語談話を、外から観察する視点(対照談話論)と、内から観察する視点(対照方言学)を、統合しつつ、日本語談話の特徴を記述する。 第3の方策は、日本語談話の発想と表現について、体系化を試みることである。談話種の違いを意識しながら記述観点を整理しつつ、日本語談話の記述につなげる。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
国際学会での成果発表を、翌年に行うことにしたため。 研究打ち合わせ、関係文献購入、資料収集、国内外での学会における成果発表に使用予定。
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Research Products
(9 results)