2014 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520498
|
Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
沖 裕子 信州大学, 学術研究院人文科学系, 教授 (30214034)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 言語学 / 日本語学 / 日本語教育学 / 談話論 / 社会言語学 / 国際研究者交流 / 大韓民国 / 中華人民共和国 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究の目的は、(1)談話記述のための方法論の開拓、(2)日本語談話の記述、(3)日本語談話の発想と表現に関する特徴の抽出、の3点にある。本年度実施した内容は、下記の通りである。談話論の理論的、実証的研究に貢献する点で重要性と意義を有した研究になっていれば幸いである。 1)談話記述方法論の開拓については、前年度から継続して、実例談話資料と内省談話資料の特徴について、両者の長所と短所を比較検討した。談話種の弁別的特徴を分析するためには、内省談話資料を用いる方法が有効であるという見通しを得た。 2)日本語談話の記述のために、本年度は主として、語彙、文法レベルの特徴が、談話レベルの表現の形成に及ぼす影響について注目して行った。第1の成果として、沖裕子「方言にみる頼みかたの表現と発想」(小林隆編『柳田方言学の現代的意義ーあいさつ表現と方言形成論―』ひつじ書房 pp.125-142)をまとめた。依頼の表現型は、語彙、文法に影響を受けながら、地域独自の表現型を組み立てている様を、日本全国の依頼の表現型の変種を観察しつつ、分析考察したものである。また、第2の成果として、沖裕子「松本方言終助詞の文法体系―談話研究の基礎―」(『信州大学人文科学論集』pp.233~250)をまとめた。終助詞は、談話展開を左右する語詞のひとつであり、また、話しことばのなかで使用されることから、地域差が大きい語詞でもある。そこで、一地域の終助詞の文法体系を記述することによって、談話論への橋渡しをする前段の研究を行った。 3)日本語談話の発想と表現に関する特徴は、社会文化、意識、内容の構造、表現の4層に現れていることを、日本語の命令談話を記述しつつ、具体例をあげながら説明した。成果は、沖裕子「談話論からみた命令表現」(『日本語学』第33巻第4号, pp.14-22)にまとめた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでのところ、成果を発表物にまとめることができ、十分な成果をあげえているといえるかと思う。ただし、次に述べる経緯から、助成金の一部を積極的に翌年度使用に供することにした。そのため、おおむね順調であるという評価をくだしたものである。 談話記述の方法論を検討している途中で、内省談話資料分析という方法を用いることによって、談話種の連続性が有効に記述される可能性に気づいた。その気づきを研究的に具体化させるために、国際会議開催を遅らせることにし、研究の発展的解決をはかることにした。研究の深化によって発見したこの課題を有効に進展させておくためには、少なくとも約半年の時間をさらにかけることが妥当であると判断した。 以上、研究目的に掲げた(1)談話記述方法論の開拓、(2)談話記述の推進、(3)談話にみる発想と表現の分析、という3点に鑑み、方法論の開拓が談話記述をさらに推進し、談話にみる発想と表現の分析の研究にさらに進展をもたらす余地があることを考慮したものである。
|
Strategy for Future Research Activity |
研究目的に掲げた、談話記述方法論の開拓、談話記述の推進、談話にみる発想と表現の分析、という3点のうち、談話記述方法論の開拓をさらに推進させることにしたい。 依頼談話に焦点をあてた研究を展開してきたが、依頼談話をより正確に位置づけ、記述するためには、依頼談話に隣接する談話種についても記述しておく必要があるといえる。そのために、命令談話を、依頼談話との連続性の中ですでに記述したが、他の談話種についても体系的に位置付けておく必要性をより明確に理解したものである。 隣接する談話種を体系的網羅的に記述するためには、方法論に工夫を要する。実例談話の収集に入る前に、研究者の内省を有効に用いて対照談話論的に観察する方法を、海外共同研究者との共同研究によって検討する。ここに成功すれば、談話記述、および発想と表現の関係についても、よい成果をあげうると考えている。具体的には、個別に内省分析を進めたうえで、国際会議を開いて対面の討議を行い、談話種分析の観点の異なりを綿密に把握していきたい。
|
Causes of Carryover |
当初計画していた国際会議開催を次年度に延期したいため、次年度使用額が生じた。
|
Expenditure Plan for Carryover Budget |
集中的な資料収集後に国際会議を招集するために、使用する。具体的には、海外共同研究者である姜錫祐教授(韓国カトリック大学)、趙華敏教授(北京大学教授)、連携研究者である西尾純二准教授(大阪府立大学)とともに、2015年夏に大阪国際会議開催を予定する。また、今回の計画変更でさらに確実な成果が見込めるため、研究発表旅費としても使用する。社会言語科学会、韓国日本語学会を予定。
|
Research Products
(6 results)