2015 Fiscal Year Research-status Report
意味・統語・形態の総合的観点から行う古代日本語の副助詞の研究
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24520508
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Research Institution | University of the Sacred Heart |
Principal Investigator |
小柳 智一 聖心女子大学, 文学部, 教授 (80380377)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2017-03-31
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Keywords | 副助詞 / 文法変化 / 対人化 / 接尾辞 |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、これまでほとんど研究されていなかった副助詞の形態論的考察を、近年進めている文法変化研究の成果を加味しながら行った。その成果は「副助詞の形―「だに」「さへ」「すら」の場合―」(国語語彙史研究会『国語語彙史の研究』34、pp.37-54、和泉書院、2015.3)に発表した。また、これに続く考察のための準備として、研究史を踏まえつつ、名詞の語形変換と接尾辞の母音交替に関する研究を行った。これについては近々公刊する予定である。 次に、前年度に引き続き、文法変化に関する理論的・一般的な研究を行った。1つは、前年度に口頭発表した内容を再検討し、その一部をまとめて、発表を行った学会のProceedingに掲載した。「文法変化の方向」(関西言語学会『KLS』35、pp.323-334、2015.6)がそれである。2つめは、この論文で残した課題に取り組み、文法変化の方向に統語的条件が関わることを明かにする研究を行った。これについても刊行する予定である。3つめは、国立国語研究所国際シンポジウム「文法化:日本語研究と類型論的研究」(2015.7.4、於国立国語研究所)で行った口頭発表の内容を論文にし、「対人化と推意」(国学院大学国語研究会『国語研究』79、pp.71-84、2016.2)として発表した。これは対人的な意味が生じるメカニズムを考察したものである。4つめとしては、語彙と文法に渉る変化の方向を種類分けし、優勢な方向と劣勢な方向を区別した上で、変化全体の見取り図を描くことを試みた。この成果も近々刊行の予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、副助詞に関する研究を進め、これまで気づいていなかった問題を見つけ、それを解決するための方策(形態論的考察)を行うことができた。 前年度に続き、今年度も予定を上回って文法変化の研究を進めることができた。刊行できたのは「文法変化の方向」(関西言語学会『KLS』35、pp.323-334、2015.6)、「対人化と推意」(国学院大学国語研究会『国語研究』79、pp.71-84、2016.2)だが、それ以外に相当程度に成果を上げられたものがある。そして、副助詞の研究と文法変化の研究が結びつきつつある。 以上の研究成果が得られたので、上記のように評価する。
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Strategy for Future Research Activity |
基本的に当初の研究計画通りに進める。ただし、現在の学界の状況が通時的変化に大きな関心を寄せるようになってきていることを考慮して、副助詞についても通時的変化の視点を持って研究し、時代の要請に応えることを考えている。幸いにして、副助詞の研究と平行して文法変化の研究を進めてきており、この2つが結びつきつつある。最終年度である次年度は、2つの研究が交わるような研究、すなわち、副助詞の通時的変化が、文法変化一般に照らしてどのように捉えられるか、を考察することを計画している。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた資料の入手が難しかったため、購入計画を変更した。そのために若干の差額が生じ、研究費の一部を次年度に繰り越すこととなった。
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Expenditure Plan for Carryover Budget |
繰り越した今年度分の研究費と、次年度新たに交付される研究費とを合わせて、次年度も必要な文献資料を購入し、資料収集や、研究に関する意見交換および学会参加のための出張を実施することを計画している。
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