• Search Research Projects
  • Search Researchers
  • How to Use
  1. Back to project page

2014 Fiscal Year Research-status Report

江戸語・東京語におけるコミュニケーション類型の研究

Research Project

Project/Area Number 24520510
Research InstitutionMusashi University

Principal Investigator

小川 栄一  武蔵大学, 人文学部, 教授 (70160744)

Project Period (FY) 2012-04-01 – 2017-03-31
Keywords夏目漱石 / 東京語 / 下町ことば / 東京訛り / 森田草平
Outline of Annual Research Achievements

本研究では、日本語コミュニケーション(談話)の近世から近代にかけての変遷の究明を目的としている。その成果を論文「夏目漱石の小説作品における「訛り」について-森田草平『文章道と漱石先生』を手がかりにして-」(『武蔵大学人文学会雑誌』第46巻第3・4号 平成27年3月)に公表した。以下、その概要を述べる。
漱石作品の会話には当時の東京語が用いられているが、漱石の弟子の一人森田草平『文章道と漱石先生』(大正8年<1919>)にも指摘されているとおり、当時の標準的な語彙・語法と異なるものがある。たとえば、(1)音訛に関するもの:「まぼしい」「くすぼる」「さみしい」「どうれで」、(2)複合語に関するもの:「よこたて」「はかまはおり」「しぜんてんねん」「命のほしい」、(3)清濁・促音に関するもの:「しけじけ」「ちょっきり結び」「じれったい」等である。これらは当時の東京語の一部であり、漱石以外の作品・資料等にも類例があり、森田のいう漱石の「訛り」や「癖」ではない。
このほか、(1)助詞・助動詞等の音訛:①助詞「は」がアとなるもの、②助詞連続「とは」がタアとなるもの、③「という」がテーとなるもの、④動詞の語尾「る」に終助詞「わ」のついた「るわ」がラーとなるもの、⑤「ですわ」がデサーとなるもの、⑥「ますわ」がマサーとなるもの、⑦「なんぞは」が変化したナンザ・ナンザー、⑧副詞等の語末のリがシとなるもの、(2)助詞・助動詞:①動詞の連用形について命令を表す「ねえ」、②丁寧を表す「がす」、③丁寧を表す「げす」、(3)語彙:①自称代名詞「わっし」、「わっち」、②自称代名詞「こちとら」、③感動詞の「べらぼう」、④「がんがらがん」など、東京語特有の語彙・語法がある。
漱石作品において東京語を多用する理由は、登場人物を活写するための漱石の意図的な使用と見なすことができる。

Current Status of Research Progress
Current Status of Research Progress

2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.

Reason

平成26年度に予定していた夏目漱石の小説作品における東京語の研究が進展し、その成果を論文「夏目漱石の小説作品における「訛り」について-森田草平『文章道と漱石先生』を手がかりにして-」(『武蔵大学人文学会雑誌』46-3・4 平成27年3月)の形で公表した。

Strategy for Future Research Activity

今後も引き続き夏目漱石の小説作品を取り上げて、コミュニケーションに関する研究を行う。最終年度には冊子体の論文集を作成する。まず平成27年度の研究の見通しについて略述する。
漱石作品には伝聞やうわさによる表現が数多く見られる。当時のコミュニケーションの現状からすれば、多くの情報が口伝てで伝えられたことは疑いないが、それにしても漱石作品には多くの伝聞・うわさ表現がある。しかも同一の人物や事実に関する評価においても、好意的なもの、批判的なものと全く分かれるものがあり、それが人の話として伝えられる例がある。このような手法によって漱石は人物や事実のあり方を多面的、立体的に描こうとしたものと推測される。
以上の見通しをもって漱石作品における伝聞・うわさ表現の整理と分析を行うとともに、論文として公表する予定である。

Causes of Carryover

当初、近世・近代の日本語資料を電子データにして、テキストデータベースを作成することを企画し、アルバイト謝金の使用を予定していた。しかし、今年度は夏目漱石の作品のみを資料として研究を行ったため、夏目漱石作品のデータベースは不完全ながらすでに作成済みであったので、謝金を使用せず、次年度使用額が発生した。

Expenditure Plan for Carryover Budget

最終年度に冊子の研究報告を作成する予定であり、そのために多くの印刷・製本費、郵送費などが必要となる。未使用額は主としてそれに使うことを予定している。

  • Research Products

    (1 results)

All 2015

All Journal Article (1 results) (of which Open Access: 1 results)

  • [Journal Article] 夏目漱石の小説作品における「訛り」について-森田草平『文章道と漱石先生』を手がかりにして-2015

    • Author(s)
      小川 栄一
    • Journal Title

      武蔵大学人文学会雑誌

      Volume: 46-3・4 Pages: 431-462

    • Open Access

URL: 

Published: 2016-05-27  

Information User Guide FAQ News Terms of Use Attribution of KAKENHI

Powered by NII kakenhi