2012 Fiscal Year Research-status Report
現代における和語名詞の表記の実態とその背景に関する調査研究
Project/Area Number |
24520511
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
|
Research Institution | Waseda University |
Principal Investigator |
笹原 宏之 早稲田大学, 社会科学総合学術院, 教授 (80269505)
|
Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 和語の表記 / 漢字 / 普通名詞 / 訓読み |
Research Abstract |
現代の日本語を表記するための要素としての文字は数千種に及び、その文字体系にも、漢字、ひらがな、カタカナ、ローマ字などが含まれ、ことに漢字は各々がさらに複数の用法を有するという複雑な原則をもつ。その文字体系には語種と一致する傾向、すなわち漢語は漢字、外来語は片仮名、和語は平仮名ないし訓をもつ漢字などといった対応に、一般的な傾向が観察されることもある。しかし、和語はある漢字の訓読みとして定着していればそれで記すという原則に対しても、現在ではそれを積極的に崩壊させる動きが生じており、和語にも、漢字で表記される傾向の強い語とひらがなで表記される傾向の強い語のほか、カタカナで表記される傾向の強い語、さらにローマ字で表記される傾向をもつ語も多数出現している。 そうした現実の状況を語義やニュアンスのレベルまで視野に入れて具体的に捕捉するために、発行部数や読者層などの条件により新聞全国紙を調査対象に据えて、それらの紙面(広告欄をも含む)に現れる和語名詞等の表記の実態について調査を行った。記事では、読み取りによる採集調査を基本とした。表記規則が明確に設けられていながらも実際の紙面に生じる例外措置についても検討を加えた。 その他、雑誌、テレビなどマスメディアのほか、看板の類、そして近年一般に接触頻度が急激に高まってきたインターネット、パーソナルメディアにおける和語名詞等の表記の実例も、同様に採取を行った。 それらを実施した上で、それぞれの情報媒体間において使用される表記の共通点と相違点に関して確認を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当研究は、「常用漢字表」の改定など漢字を巡る環境に動きのやまない現代において、新聞、雑誌、テレビ、インターネットなど実際に存在している各種のメディア上で、和語(やまとことば)がいかなる文字によって表記されているのかという実態について、普通名詞を中心に把握するものであり、当初の計画に沿って順調に実施している。調査対象として看板の類も参看し得ている。 その表記上に揺れを生じさせる原因についても個々に考察を続けており、さらに誤読、誤解などの問題の起こりにくい表記形とはいかなるものであるのかという点について、種々の観点から検討を加え、新たな視点を獲得し、公表も開始している。
|
Strategy for Future Research Activity |
日本語における和語の名詞を中心に据えた、新聞を初めとする各種の情報媒体に対する用例の採取調査を継続して行い、現状を分析していく。前年度に収集した各種メディアにおける現実の使用例と合わせて、特に細かな分析を要すると判断される表記例を抽出し、それらに対しさらに各種メディアから関連する使用例を追加する。また、辞書・用字集の類に対する分析も実施し、使用実態との比較を行う。 和語表記の揺れの現実とその原因については、きわめて多くの要因が関連しており、さらにその要素は多様な複合を起こしているものであることが予測される。そうした和語の表記を動かす現実の条件に関して、その実例に対し、当該メディアの定めた表記規則、読み取りやすさへの配慮の有無、筆記機材による物理的な制約条件、表記の産出時における生理的な制約条件、地域特性による条件など、その表記のなされた背景にある要素を種々の面から分析、考察する。 それにより採取例に対して分類を施し、表記形をもたらす各種の要因について探究する。既に行った関連しうる調査や試行的な調査の結果からも情報を適宜利用し、比較対象などとして利用する。 それと同時に、国立国語研究所の作成した先行研究などの成果も必要に応じて取り入れながら、現代における年代やメディアにおける和語表記の変化と変異の傾向の差を明らかにするため、使用実態の記述とともに分析を実施していく。 また、文字の使用・選択時における意識や読み取り時に感じ取られている効果などを捕捉するために、一般の文字使用者へのアンケートや意見聴取、専門家らへの聞き取り調査も実施する。
|
Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
漢字、和語や表記に関係する文献の購入や複写と調査、各地での使用状況の調査、専門家への意見聴取などに伴う経費を支出する。
|