2013 Fiscal Year Research-status Report
日本語史資料としての中世仮名文書の研究─「話し言葉」資料としての書状類の検証─
Project/Area Number |
24520518
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Research Institution | Kyushu Sangyo University |
Principal Investigator |
辛島 美絵 九州産業大学, 国際文化学部, 教授 (60233996)
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Keywords | 仮名 / 古文書 / 原本 / 文体 / 表現 / 鎌倉時代 / 書状 / 日本語史資料 |
Research Abstract |
本研究は、日本語研究の立場から古文書を取り上げるもので、日本語史研究資料としての仮名文書(仮名が使用されている古文書)の資料性の解明を目的とする。平成25年度は、研究実施計画に従って、仮名文書の用例整理・分析、文書内容と背景の調査を実施し、仮名文書の文体・表現の特色、「話し言葉」の現れ方等について研究を行った。具体的には、禁止の「べからず」の用法を中心に鎌倉期の仮名文書の使用傾向を調査し、それをもとに仮名文書の文体と表現の特色を明確にすべく、おなじく鎌倉時代の文学資料である『徒然草』の「べからず」と比較検討を行った。当初の計画では、奉書を中心に調査することにしていたが、奉書に限らず書状的仮名文書全般に調査範囲を広げたのは<『徒然草』と比較して信頼性の高いデータを出すためには文書の種類を限定するよりも、時代を14世紀初期に限定したほうがよい>と判断したためである。この取り組みの成果は以下の①②として公開した。 ①平成25年度西日本国語国文学会(平成25年9月14日(土)熊本大学)のシンポジウムにて口頭発表 ②『九州産業大学国際文化学部紀要』57号(平成25年3月刊)にて論文「日本語史資料としての仮名文書」を発表 また、24年度から取り組んでいる仮名文書の写真の収集についても継続して実施した。写真集が古書にて入手できる文書は古書を購入し、そうでないものは原本の有無と所蔵者を調査し、所蔵者に複製の許可申請をし、許可が得られたものは、現地に赴き複写し、あるいは所蔵機関に紙焼き送付依頼をし、宮内庁所蔵壬生家文書、勝尾寺所蔵勝尾寺文書、大分歴史博物館所蔵小山田文書・永弘文書ほか、合計約400通あまりの文書の原本の複製を収集した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では500通の見込みで仮名文書の調査と複製の収集を行ったが、24年度には予定よりも調査の範囲を拡大し予定の3倍以上の仮名文書の複製を収集することができ、さらに25年度には当初の予定の4倍ちかくの複製を収集することができた。また、仮名文書の文体・表現の研究についても25年度より予定通りに調査・分析に着手することができた。本格的な用例分析は26年度以降に実施することになるが、「資料性研究」を眼目とする本研究にとって基幹部分である調査底本が充実したこと、ならびに用例分析に着手できたこと、分析結果を成果として口頭発表と論文発表を行ったこと、以上をもって「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は収集した仮名文書の原本の複製を底本として、本格的に「仮名書き用例」と「漢字書き用例」の差異について調査・分析を行う予定である。具体的には25年度に明らかにした「べからず」の仮名書き例における表現の傾向が、漢字書き主体の文書ではどのように変わるか、あるいは変わらないか、その理由は何かといったことを切り口にして、「べし」「ず」以外の語や句、節に調査を拡大する予定である。それをもとに書状類が話し言葉の資料としてどのように利用可能か、ある程度の見通しを示したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
講義のない年度末に原本の資料の調査を予定し、旅費を計上していたが、先方への郵送での複写申請が可能となり、出張が不要となった。しかし、新規の調査については原本所蔵者の許可を得る時間が足りずに実行できなかった。よって次年度使用額が発生した。 仮名文書の原本の写真はほぼそろってきたが、用例研究を実施すると、さらに新規の原本の確認が必要となるため、その出張調査の旅費として使用する。
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Research Products
(2 results)