2013 Fiscal Year Research-status Report
日英語の指示表現と名詞節化形式の選択・出没の普遍性と個別性に関する総合的研究
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24520534
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
大竹 芳夫 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 教授 (60272126)
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Keywords | 日英語比較研究 / 名詞節化形式 / 指示表現 / 換言 / That is構文 / I hate to say it構文 / It turns out that節構文 / 接続表現 |
Research Abstract |
本研究目的は、日英語の指示表現と名詞節化形式の選択・出没という言語事象を通して、両言語の普遍性と個別性を原理的に解明することである。本年度は初年度の研究成果を踏まえつつ、It turns out that節構文、That is構文、I hate to say {it/this/that}構文の分析を通して、英語の指示表現の選択と出没現象の背後のメカニズムを明らかにした。大竹(2013)では、It turns out that節構文が過去の判明を伝達するときしばしば主節動詞turnに単純現在形が用いられる言語現象を「時間の隔たり」意識の具現化という視点から説明した。大竹(2014a)では、英語の談話で頻用されるつなぎ表現、“that is”や“that is to say”の諸特性を解明した。That is構文の基本的機能は先行情報の換言である。このことから、先行する情報が聞き手にとって直接的すぎる内容であるために不安や同様を与える可能性があるような場合に、That is構文を介して客観的、具体的に言い直すことにより聞き手を安心、納得させる緩衝機能が派生することを明らかにした。また、先行する情報を単に換言するのではなく、すでに述べた条件内容を再度聞き手の意識に残すことを合図するために“that is”が用いられる用例も確認した。大竹(2014b)では、伝達するのに抵抗感があることを断り告げる構文のひとつであるX位置に指示表現を伴うI hate to say X構文を取り上げ、その意味と機能を実証的に考察した。具体的には、I hate to say X構文のX位置に現れる指示表現itやthisは、言うのが憚られる内容を発話に先立って話し手が心中で受け止めていたことを聞き手に積極的に合図することから、聞き手に対する配慮意識が表現されることを主張した。次年度は本年度の知見をさらに深化、発展させながら、得られた研究成果を国内外に向けて積極的に発信してゆく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度は、研究初年度の研究成果を踏まえながら、日英語の指示表現と名詞節化形式の選択や出没がどのように理論的枠組みに位置づけられるかについて検討した。また、談話や発話場面を分析し、指示表現の選択が語用論的要請によって動機付けられている諸現象を検証した。具体的には、英語の指示表現を伴うIt turns out that節構文、That is構文、I hate to say it構文を中心に分析した。本年度の研究成果として、大竹芳夫(2013)「主節部に単純現在形が現れるIt turns out that節構文に関する記述的研究」,『新潟大学言語文化研究』第18号, pp.13-26.、大竹芳夫(2014a)「指示表現と換言:That is構文がつなぐ情報」,『新潟大学経済論集』第96号, pp.171-183.、大竹芳夫(2014b)「文をつなぐ指示表現の出没と選択に関する意味論的・語用論的研究:I hate to say X構文が指示表現Xでつなぐもの」,『言語の普遍性と個別性』 第5号, pp.15-32.を挙げることができる。研究最終年度の次年度は、本年度の知見をさらに深化させて、指示表現と名詞節化形式の選択・出没という言語事象を通し英語と日本語の個別性、普遍性の両面を体系的・原理的に明らかにする。
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Strategy for Future Research Activity |
研究最終年度は指示表現と名詞節化形式の選択・出没という言語事象を通して、英語と日本語の個別性、普遍性の両面を体系的・原理的に明らかにする。また、本研究で得られた知見の他言語への敷衍可能性について提示する。本研究成果の理論的・記述的意義を取りまとめて国際的学術誌に投稿・報告すると同時に書籍出版も試みる。併せて、本研究で得られた言語学的知見が英語教育、日本語教育でどのような波及効果や教育的意義をもつのかについても取りまとめて学会に発表し、示唆と提言を行う。
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Research Products
(4 results)