2013 Fiscal Year Research-status Report
中国語母語話者のための漢字音教材作成2-方言字音識別・学習者調査に基づいて-
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24520565
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Research Institution | Yamagata University |
Principal Investigator |
黒沢 晶子 山形大学, 基盤教育院, 教授 (50375333)
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Keywords | 漢字音 / 中国語母語話者 / 入声音 / 教材 / 台湾閔南語 / 音符 |
Research Abstract |
1 基礎調査 台湾閔南語・北京語話者の発音テスト・方言使用インタビュー:方言字音および日本語同形語の発音テストを実施した。促音の接続時間は個人差が大きく、方言に入声音のあることが有利に働いているという示唆は得られなかった。また、漢字語を見て方言の発音ができないものも少なくなく、方言の継承語化が進んでいることが改めて確認された。 現代北京語音から見た日本語漢字音(入声): 無気無声阻害音で始まり、第2声を持つ母音終わりの漢字は、ほとんどが入声である(『上海語常用同音字典』にある130字中127字が入声)ことを確認した。これは、中国語母語話者にとって、入声字を見分けるひとつの手立てとなる。ただし、その逆(入声は無気無声阻害音で始まり、第2声を持つ)は成り立たない。第1・3・4声で声母が無気無声阻害音の字を見ると、109字のうち、20字が入声である(例:ba1 八)。また、声母が有気阻害音(例:ku4 酷)や阻害音以外の音(例:mo3 末、墨、没)でも入声はある。 2 教材作成・試用 前年度作成の音変化規則性発見の教材を音声化し、試用した。次に、漢字の音符を利用し、既習字音から未習字音を類推する教材を作成し、試用した。「富fu4」「父fu4」は非入声、「副fu4」「復fu4」は入声だが、現代北京語音ではどれも母音終わりになるため、母語字音からは入声か非入声かの区別が困難である。だが、同じ音符を持つことから、「復fu4」→「覆fu4」(フク) のように字音が類推できる。「結jie1, 2」(ケツ)→「吉ji2」(キチ、キツ)、「記ji4」(キ)→「己ji3」(コ、キ)のように、同音でなくても、入声かどうか区別がつくものも多い。教材では、古い中国語音(入声韻尾)を体系的に維持している韓国語音とも対照させ、音符として生産性の高い62の同形要素(入声52、無韻尾10)を抽出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
基礎データの蓄積、教材の拡充と試用ができた。
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Strategy for Future Research Activity |
1 教材の拡充と完成 1.1 平成24・25年度に作成した入声音の音変化の規則性発見の教材に、語彙表から、重要度レベルと後続音の種類の両面でバランスのとれた漢字語を選択し、教材をさらに改訂する。また、学習者が音になじむための音声教材を拡充する。これらの教材を教室で使用し、効果を検証する。 1.2 平成25年度に作成した、ある漢字が入声か非入声かを類推するために漢字の音符を活用する教材の範囲を広げ、教室での試用を通じて改訂を行う。対象が中国語母語話者に限られない、汎用性の高い教材、多言語対照の協働学習のできる教材をめざす。 1.3 上記の教材を完成させる。
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Research Products
(2 results)