2012 Fiscal Year Research-status Report
異文化間葛藤場面におけるコミュニケーション・トレーニングの教材開発に関する研究
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24520567
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
園田 智子 群馬大学, 国際教育・研究センター, 講師 (10455959)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 異文化間コミュニケーション・トレーニング / アサーション / 葛藤 / 日本人大学生 / グローバル人材育成 |
Research Abstract |
平成24年度に開始した本研究は、まず、研究目的「異文化間コミュニケーション・トレーニングの教材開発」のために、基礎研究を行った。日本の高等教育機関における様々な異文化間コミュニケーショントレーニングの実践とその効果について、学術論文を中心にレビューし、「日本の高等教育機関における経験的異文化トレーニング研究概観-実践の目的と理論的背景に着目して-」としてまとめた。本論文は、2013年4月『日本語・日本語教育の研究ーその今、その歴史』(発行:スリーエーネットワーク)の一編として出版予定である。 さらに、年度後半には、異文化間トレーニングの一つとして注目されるアサーション(自己主張・自己表現)に着目し、アメリカ、中国、タイ、日本の大学生におけるアサーション度の違いを、玉瀬ら(2001)による「青年用アサーション尺度」を援用した質問紙調査によって調査した。(調査結果は平成25年度6月の異文化間教育学会にて発表予定)研究対象者は448名で、調査及び統計分析の結果、他3か国の留学生と比較して、日本人学生のアサーション度が有意に低いことが明らかになった。「関係形成因子」では米国人学生の平均値が最も高く、次に中国人学生とタイ人学生の平均値が高く、日本人学生が最も低い。遠慮してしまい、開かれた深い関係性に踏み込めない様子がうかがわれる。また、「説得交渉因子」では、日本人学生のみが有意に平均点が低く、対人葛藤が起こって不平不満があるときにも、受身的で自己抑制してしまう姿がうかがえた。これらの結果から、日本人学生にとっていずれの因子にかかわる異文化場面においてもアサーションに課題があることが考えられる。 このように、本研究の初年度には、基礎調査及び質問紙調査を予定通り実施し、それぞれ成果を得ることができ、また次年度への研究調査への基礎ができたといえる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書において計画した平成24年度の調査研究内容は、文献研究、質問紙調査研究ともに予定どおり実施することができ、文献研究に関しては、論文化、出版化することができ、また、質問紙調査は本来300名の対象者への調査を予定していたが、国籍を4つに増やし、400名以上の協力者を得て、興味深い考察を行うことができた。またその研究結果については25年度の学会発表における個人発表の一つとしてに平成24年度中に採択されており、これも当初の計画のとおりである。 これらの結果から、現在までの達成度はおおむね順調に進展しているといえる。ただし、文献研究においては、さらに「アサーション」にのみ焦点を絞っての調査が必要だろう。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度には、上半期に、前年度の研究成果を学会で発表し、より考察を深めるとともに、予備調査1として計画している「異文化間葛藤の実態調査」として学生の異文化葛藤場面の収集のための自由記述式の質問紙調査を予定している。データの中で特に有用だと思われるものに関しては追加インタビュー調査を実施する。また、質問紙調査のみではなく、文献調査からも事例の収集を進める。 後半期には、調査データの分析を進め、教材作成のためのアサーションの分類、場面の抽出を行う。可能であれば、描画教材の原案を作成する。さらに、その研究結果は最終年度、平成26年度の学会発表において公表し、実際の教材作成を行い、その結果を検証する予定である。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
平成24年度当該助成金が生じたのは、当初の計画では、質問紙調査のために、国内の様々な大学機関への出張旅費が多くかかると予想されていたが、オンライン調査の手法を用いて実施した結果、出張旅費を削減することができ、また、同様の理由で謝金も軽減することができたためである。一方、平成25年度以降に予定している、実際の教材作成のために、第1版(原案)と修正版の作成が必要になる場合、当初の見積額では十分でないことも考えられる。そのため、描画及び実際の教材の作成に研究費を使用することを計画している。
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Research Products
(2 results)