2012 Fiscal Year Research-status Report
Project/Area Number |
24520610
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
片山 晶子 東京大学, 教養学部, 講師 (10622805)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | JGSS / 英語使用の目的 / 性差と学歴差 |
Research Abstract |
研究初年度である平成23年度は研究全体の計画準備をすると同時に、主として研究協力者が担当した量的データJGSS(Japanese General Social Surveys)の二次分析の結果を、研究協力者とともに考察し検討した。 準備の主な活動は論理背景となるPierre Bourdieuの資本の概念に関する文献研究、本研究に関連する発表、基調講演がある学会への参加(JALT2012浜松)、研究後半で収集分析する質的データの整理保存と管理分析をするための質的研究ソフトウェアNVivoの講習受講等である。 研究活動としては、2012年10月に来日したこの分野の研究で世界的権威であるサンフランシスコ州立大学名誉教授サンドラ・マッケイ博士に研究関連の「国際言語としての英語」に関する講義と、本研究の分析方法に関する指導助言を受けた。その後JGSS2002/2003を研究協力者とともに分析検討し、結果、英語の有用性を唱える政策やマスメディアの言説に反し、大多数の日本人が英語をほぼ全く使用しておらず、少数の使用しているグループでは性別学歴によって英語使用の目的に大きな偏りがあることが浮き彫りになった。このことに焦点をあて、英語の資本性の高学歴男女間の隔たりを論じた研究報告が、アメリカ応用言語学会年次大会(AAAL 2013, 2013年3月ダラス)に採択され、研究協力者と共に発表した。 平成24年度の終わりには、量的分析の結果から25年度以降の質的研究の準備を始めた。研究後半の質的部分であるインタビュー調査の研究参加者を選抜にとりかかった。統計データから特に英語の日本における資本性の特徴をなす属性をもった人をプロファイリングした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究で初年度に達成しようと計画した4点―1.研究代表者が研究協力者の指導のもと量的データのリソースとして使用するJGSS(Japanese General Social Surveys)http://ssjda.iss.u-tokyo.ac.jp/ )について学習する。2.この期間にのちに質的データの管理と分析に使用する質的研究用ソフトウエアのチュートリアルを受ける。3.研究協力者とともにJGSSのデータから、「日本人にとっての英語の資本性」を示すと考えられる項目を検証する。4.年齢、性別、学歴、収入、未婚既婚、職業、居住地域等から質的研究で焦点をあてるべきプロファイルを作る―は平成24年度にほぼすべて達成することができた。本年度もっとも重要な活動であったJGSSデータの二次分析では、日本人にとっての英語運用能力の資本性を検討するにあたってのいくつかの特徴的発見があった。日本人の英語使用の全体像、具体的には居住地域、社会経済階層、性別、学歴、年齢などの属性ごとの英語使用の特徴を示すデータが得られ、次年度行う質的研究(インタビュー)の研究参加者選出(プロファイリング)の方向性が出た。 今後の課題としては、平成24年度段階では、発表に使用することが許されているJGSSデータが2003年までであったので、さらに新しいデータでの同様の分析を試みて、結果にどのような違いがあるか、あるいははないか、を確認する必要がある。 研究目的として科研出願時に記した「研究手法上の貢献」と「世界の研究活動への寄与」に関しては、2013年3月米国テキサス州ダラスで開催された米国応用言語学会年次大会で研究発表がかない、特に本研究が応用言語学の研究ではまれな無作為抽出の大規模データを使っている点に関心を集めることができたと思う。本研究のテーマと手法が国際的にも意義のあるものであるという手ごたえを得た。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度の研究計画はほぼ科研申請時のものと同様である。平成25年度前期(8月まで)に質的研究部分のリサーチデザインを確定し、研究参加者(インタビュー)を全員選定し、協力を依頼する。当初データ収集は9月以降としていたが、研究参加者の一部が早く決まったことと、研究後半の分析にかかる負担を考慮し、インタビューデータ収集は5月後半から始める予定である。インタビュー方法は計画通りである。1.データは原則研究参加者の生活する現場で収集する、2.主たる収集方法は録音を伴うインタビューと、録画を伴わないオブザベーションとする。ただし記録の方法は、参加者と現場の事情を配慮して、適宜決定する。3.質的研究の精度を高めるため同一参加者とその環境を長期にわたって(1年程度)観察する。 申請時の計画書にも記したとおりインタビューは職業、経済状態、学歴などプライバシーにかかわる情報を含む内容となる可能性が高いので、参加者の性格や心情に配慮しながらペース配分をし、ほぼ1年をかけ3回程度に分けて行う予定である。インタビューデータ収集に関しては特に、研究参加者の事情に合わせて計画の変更がありうることも十分視野に入れ、柔軟に対応していきたい。 平成25年度も国内外の関連学会、研究会等で、積極的に本研究の理論的背景部分と中間データの仮分析を発表し、内外の研究者の批判批評を仰ぐ予定である。また平成24年度に購入した質的研究ソフトウエアNVivoについては、引き続きメーカー主催の講習をうけ、データ整理と分析の技術を習得する。特に日本語インタビューデータ(書き起こし)のソフトウエアによる処理について十分学びたい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
「該当なし」
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Research Products
(1 results)