2012 Fiscal Year Research-status Report
英語教師実践ナラティブにおける書記言語・音声言語、および日本語・英語の選択
Project/Area Number |
24520622
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
柳瀬 陽介 広島大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (70239820)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 達弘 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (10240293)
玉井 健 神戸市外国語大学, 外国語学部, 教授 (20259641)
樫葉 みつ子 広島大学, 教育学研究科(研究院), 准教授 (20582232)
横溝 紳一郎 佐賀大学, 留学生センター, 教授 (60220563)
今井 裕之 兵庫教育大学, 学校教育研究科(研究院), 准教授 (80247759)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | ナラティブ / 実践者研究 / ジャーナル・ライティング |
Research Abstract |
(1) 全国英語教育学会でのシンポジウム開催:本科研のテーマに即し、「英語教師が自らの実践を書くということ(1) ―日本語・公開ライティングと英語・非公開ライティングの事例から―」というタイトルでシンポジウムを開催(2012年8月4日)し、研究代表者(柳瀬)と研究分担者(樫葉)が、4名の実践者を招き、討論を重ねた。オーディエンスは約100名で、終了後も「このような数量化できない質を考察する研究を進めてほしい」「日本でこのような質的研究の発表が見られるとは思わなかった」といった賛同の声も聞かれた。 (2) 『中国地区英語教育学会研究紀要』での論文公刊(査読付き):上記のシンポジウム内容を深めた学術論文を『中国地区英語教育学会研究紀要』のNo.43(2013)61-70ページに掲載した。著者は上記シンポジウムに登壇した4名の連名としたが、本科研の成果発表であることを明記した。本紀要は査読付きであり、各種公共レポジトリでも論文を公開している学術誌であるので、本研究の成果もそれらを通じて広く一般読者に開かれている。 (3) 研究成果のウェブ公開:上記のシンポジウムと論文に至るまでの研究過程を、適宜整理して積極的に研究代表者のブログ(http://yanaseyosuke.blogspot.jp/)でウェブ公開した。主なもので2012年の6月19日(シンポジウム発表要旨掲載)、8月1日(シンポジウム当日資料の掲載とその解説)、10月27日と11月12日と12月10日(ナラティブに頻出するメタファー表現について)、12月18日(質的研究としての当事者研究について)、2013年の1月10日(ナラティブにみられる詩的表現について)がある。これらの公表により「研究の結果にいたるまでの過程がわかり参考になる」といった声が複数寄せられている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、「(1)英語教師実践ナラティブを書記言語による記述に絞って検討して、書記言語の効果を集中的に理論的・実証的に解明し、かつ(2)英語教師の自国語である日本語と、英語教師の目標言語である英語で記述した場合の差異も理論的・実証的に明らかにすることを目的とする」であるが、(1)に関しては、従来ナラティブに認められていた「自己観察と自己記述を通じての、観察力、分析力、思考力の育成による実践改善」に加えて、書記言語では特に「未来の先取り」と「二次的観察の象徴的人格化」が生じやすいことを理論的に解明し、かつ、書くことが目的・内容・読み手・書き手・媒体の相互影響によって定まることを実証的に明らかにした。(2)については、日本語で実践記述を行う現職教師と英語で実践記述を行う現職教師を研究協力者として招き、英語が英語教師にとってすらもまだ実践を語り合う言語として成熟していないことを明らかにした。こういった知見を、シンポジウム・査読付き学術論文・ウェブで公開している以上、本研究は「おおむね順調に進展している」と判断できる。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は、以下の三点において研究を深める。 (1)役割分担をさらに明確にし、書くことの過程を分析する者と、樫葉が書いた結果である授業改善について分析を行う者に分けて研究を進める。 (2)権威主義的な「大学研究者vs中高現場教師」の「指導-拝聴」という構図にひきずられ、対話の対等性が損なわれることを避けるため、抑圧的態度を排した前年度の方針をさらに徹底し、「当事者研究」の方法論に準じて、当事者である実践者が自分自身で納得できる声を出せるようにする。 (3)実践者としては、自らの実践をただ書くだけでなく公刊した実践者(一名は日本語による商業出版、一名は英語による学術論文公刊)を招き、同じ書記言語による実践記述でも、公刊を目指すことにより、書く過程と結果がどのように変容するか研究を深める。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
H24年度予算は10,080円残る形になった(物品10,000円、旅費80円)。これはボールペンやゼムクリップなどの細かな物品を購入して帳尻を合わせるよりも、次年度に回した方が資金の有効活用になると判断した。具体的にはこの10,080円をH25年度の物品費と合わせて、スキャナー(FUJITSU ScanSnap iX500 FI-IX500)を購入する予定である。
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Research Products
(4 results)