2012 Fiscal Year Research-status Report
第二言語学習者における音声語彙の生成機構と習得プロセスの解明
Project/Area Number |
24520650
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (C)
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
浅野 恵子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40407234)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 言語流暢性検査 / 口頭語彙生成 / 音韻流暢性課題 / カテゴリー流暢性課題 / 語彙生成と記憶 |
Research Abstract |
第二言語学習者にとって、4技能の総合的習得が向上への鍵であり、その習得過程で中核的な役割を果たすものは語彙知識であると言われている。本研究において、特に音声語彙を「言語流暢性検査」という言語発達・認知を検査する神経心理学手法を用い、語彙生成のための音韻・カテゴリーという2つの語想起課題を施行する。研究目的は、第二言語学習者と母語話者間で口語語彙生成に異なる特徴性があるかを語彙生成数と生成パターンの面から分析し、さらに生成語彙の質的相違の側面から内在語彙の種類や親密度、生成方法のプロセスを検討することにある。学習者にとって効果的な語彙知識の習得を提示し、第二言語学習法や指導法の開発を試みる。 本研究では、もう一方の話したりする際の語彙運用能力を言語流暢性検査という方法で実施する。この検査方法は神経心理学において、臨床現場(Bolla,1990)や小児語彙発達(村井、2004)を検査する方法として、国内外と問わず広く使用されている(Benton,1983, 伊藤、他,2004)。今までは、臨床現場での使用が中心であった検査法ではあるが、言語発達測定に使用できるという観点から、第二言語学習者への語彙生成の分析に応用可能であると示唆し、実施を試みる。 この言語流暢性検査は、音韻流暢性課題とカテゴリー流暢性課題という、2つの語想起課題から成る。この2つの課題を比較しながら、第二言語学習者と母語話者の音声語彙の生成を量的・質的両側面から分析する。浅野(2011)において、アラビア語話者とタイ語話者の日本語第二言語学習者についても、検討した。さらに異なる系統の言語についても検討していく。また、バイリンガル話者において、どのような第二言語学習者と母語話者間と相違があるか、分析していく。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
24年度は第2言語学習者の生成語彙量的・質的パターンの分析を中心に行った。特に質的パターンの分析を中心にアラビア語、タイ語話者との比較も対象とした。母語話者、バイリンガルにおける生成語彙の分析の面では被験者をさらに増やして分析を行なっている途中であり、結果としては次年度に発表していく予定である。 記憶の組織化や、時間順序に関する検査法である、「レイの15語語彙検査」(Auditory Verbal Learning Test)におけるカテゴリー語彙の生成と比較し、言語流暢性検査におけるカテゴリー生成とに相違があるかを分析する次年度に分析計画をしていた記憶の語想起課題の臨床データを先行研究として今年度は先に行っており、遂行順序は若干前後するものの、おおむね順調に計画通り研究の目的は達成されていると思われる。
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Strategy for Future Research Activity |
25年度は第2言語学習者と母語話者、バイリンガルにおける生成語彙量的パターンの分析を行ない、さらに言語流暢性検査の質的側面とそれに関連した意味記憶について分析を行なう。 属する単語を生成する意味記憶の効率的利用の側面と、ある下位カテゴリーの単語が出尽くした時には別の下位カテゴリーにアクセスを転換していく認知的柔軟性が求められている。Alexander and Stuss(1998)は言語流陽性課題のプロセスを下位カテゴリーに含まれる語を算出するクラスタリング(Clustering)の過程と、下位カテゴリー間を転換していくスイッチング(Switching)のコンポーネントに分けて分析している。 語彙を記憶する時にはその単語の持つ音韻的特徴、視覚的(形態的)特徴、意味的特徴、統語的特徴など、多くのコードを用いて記憶され,カテゴリーが形成される。 記憶の組織化や、時間順序に関する検査法である、「レイの15語語彙検査」(Auditory Verbal Learning Test)におけるカテゴリー語彙の生成と比較し、言語流暢性検査におけるカテゴリー生成とに相違があるかを分析する。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
音韻的生成過程についてさらなる分析を行なう予定である。つまり、音の聞こえない被験者場合何を手掛かりに音を文字としてとらえるか、また音を手掛かりとできない場合に何を代替対象として言語を形成していくかという方向からも研究の目的を達成させようと計画している。今後対象者となる聴覚を手掛かりにしない話者の被験者をさらに募り分析を行なっていく予定である。
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Research Products
(9 results)