2013 Fiscal Year Research-status Report
第二言語学習者における音声語彙の生成機構と習得プロセスの解明
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24520650
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Research Institution | Juntendo University |
Principal Investigator |
浅野 恵子 順天堂大学, 医学部, 准教授 (40407234)
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Keywords | 言語流暢性検査 / 口頭語彙生成 / 語彙生成記憶 / 音韻流暢性課題 / カテゴリー流暢性課題 |
Research Abstract |
本研究では、特に第二言語学習者の音声語彙を「言語流暢性検査」という言語発達・認知を検査する神経心理学手法を用い、語彙生成のための音韻・カテゴリーという2つの語想起課題を施行することで検証を試みた。第二言語学習者にとって、4技能の総合的習得が向上への鍵であり、その習得過程で中核的な役割を果たすものは語彙知識であると言われている。この語彙運用能力を検査する言語流暢性という検査方法は神経心理学において、臨床現場(Bolla,1990)や小児語彙発達(村井、2004)を検査する方法として、国内外と問わず広く使用されている(Benton,1983,伊藤、他,2004)。今までは、臨床現場での使用が中心であった検査法ではあるが、言語発達測定に使用できるという観点から、第二言語学習者への語彙生成の分析に応用可能であると示唆し、実施を試みてきている。また、詳細の課題としては、音韻流暢性課題とカテゴリー流暢性課題という、2つの語想起課題から成り、この2つの課題を比較しながら、第二言語学習者と母語話者の音声語彙の生成を量的・質的両側面から分析する。研究目的は、第二言語学習者と母語話者間で口語語彙生成に異なる特徴性があるかを語彙生成数と生成パターンの面から分析し、さらに生成語彙の質的相違の側面から内在語彙の種類や親密度、生成方法のプロセスを検討することにある。学習者にとって効果的な語彙知識の習得を提示し、今後、第二言語学習法や指導法の開発を試みる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
特に平成25年度の研究においては、音韻性流暢性課題を実施している際の想起プロセスに注目し、Troyer and Moscovitch (1997)が提唱している、クラスタリング・スイッチング法を用いて検証を実施した。属する単語を生成する意味記憶の効率的利用の側面と、ある下位カテゴリーの単語が出尽くした時には別の下位カテゴリーにアクセスを転換していく認知的柔軟性が求められている。「クラスタリング」とはある種の音韻的つながりを持ちながら前後の単語が生成されているかを調べ、「スイッチング」とは新しい音韻つながりを見つけ効果的にシフトする能力を検証する方法である。対象調査者は習熟度の異なる第2、3言語学習者、日英語バイリンガル話者また発話言語に流暢性困難がある症例患者である。さらに語彙を記憶する時にはその単語の持つ音韻的特徴、視覚的(形態的)特徴、意味的特徴、統語的特徴など、多くのコードを用いて記憶され,カテゴリーが形成されるといわれている。記憶の組織化や、時間順序に関する検査法である、「レイの15語語彙検査」(Auditory Verbal Learning Test)におけるカテゴリー 語彙の生成と比較し、言語流暢性検査におけるカテゴリー生成とに相違があるかを分析する。両検証方法において、異なる調査対象者に共通した特徴は、習熟度が浅い、もしくは発話困難がよりある場合の話者は特定の音素、あるいは音韻抽出方法を用いて口語語彙生成を行なっているという結果がえられた。
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Strategy for Future Research Activity |
26年度は第2言語学習者と母語話者、バイリンガルにおける生成語彙質的パターンの分析を行なう。特に、平成25年度の研究において、特定の音素や語彙生成産出時の一定の抽出パターンが検証できたので、さらに言語流暢性検査の質的側面とそれに関連した意味記憶について分析を行なう。従来、音韻流暢性課題とカテゴリー流暢性課題を想起している際に活動する脳領域が異なると言われている。本研究が行動実験としての観点から、両流暢性課題における相違点にも検討を加えて行く。 又引き続き、記憶の組織化や、時間順序に関する検査法である、「レイの15語語彙検査」(Auditory Verbal Learning Test)におけるカテゴリー語彙の生成と比較し、言語流暢性検査におけるカテゴリー生成とに相違があるかを分析する。
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Research Products
(14 results)