2013 Fiscal Year Research-status Report
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24520677
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Research Institution | Kansai University |
Principal Investigator |
菊地 歌子 関西大学, 外国語学部, 教授 (80286624)
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Keywords | フランス語 / 発音指導 / 口頭運用練習 / 発音評価 / 発音矯正 / 4技能 / 音素 / プロゾディー |
Research Abstract |
学習者の発音上達を観測する為に、複数回の録音を実施した。音声データは音声分析ソフトでフォルマント分析をし、結果を蓄積している。昨年度から本年度にかけて観測の対象としている学習者は、民間の語学学校で実施されている速習クラスの履修者である。この速習クラスでは発音指導が緻密な計画に基づいて行われており、学習者全員の発音の上達が期待でき、上達度の参考値として使用することができる。大学での第二外国語としての授業では、時間の制約から丁寧な発音指導はできない。しかし口頭練習の際に模倣のコツを理解させることができれば、顕著な発音の上達も期待できる。しかし、フランス語教師を対象とした学会でのアトリエや研修の参加者に発音指導の実態について聞き取り調査をした結果、ほとんどの教師が、発音指導は時間がかかるので、授業の中ではほとんど行わないという回答をした。発音指導は口頭運用練習と連動した形ではなく、偶発的に一部の語について練習をするか、あるいは文法の授業で音韻論の側面から知識として学習する形で行われていることが明らかになった。この現状から、教室での口頭運用練習にフランス語発音指導を組み込む方法を解説する必要を認識した。25年度の後半は、音声学の専門知識を持たない教師を対象とする『フランス語発音指導法』の執筆に取りかかった。26年6月には印刷完成を予定している。 音声処理に関する情報収集の為に8月25日-28日に開催されたINTERSPEECH 14TH ANNUAL CONFERENCEに、8月26日-28日の期間参加した。また10月18日-19日にソウルで開催された、韓国フランス語フランス文学界主催の「フランス語フランス文学界国際大会」において、「日本人学生を対象とするフランス語の母音の発音指導」という表題で、教室での口頭運用練習にフランス語発音指導を組み込む方法を紹介した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
当初の研究計画にはなかったが、研究成果公開のための著書の出版が加わったことが原因で、データ収集およびその評価の実験が遅れている。できるだけ多様な学習者の発音の傾向を比較する必要があるが、大学の第二外国語としてのフランス語の授業では、口頭運用練習と連動した発音指導は実践されていない。あるいは、発音は文法の授業で音韻体系の紹介にとどまっている。以上の現状を踏まえ、文法の授業での理論的な解説に留まらず、また発音指導に特化した時間を使わずに、口頭運用練習の授業の中で適切に発音指導をする方法を広く浸透させる必要が明らかになった。発音解説に関係する著書としては、日本人学習者を対象として発音練習を解説した自習書は存在するが、フランス語の発音指導法の解説書は存在しない。学会でのアトリエやフランス語教師のための研修で講師を務め、口頭運用練習と発音指導を組み込む手法について講義をしたが、はじめの1、2回の授業での発音指導の組み立て方の紹介以上のことはできない。以上の背景を踏まえ、発音指導法の解説書の必要性を強く認識し、執筆した。 以上の理由から、学習者の発音に関するデータ収集では、母音に関するデータ収集は殆ど予定通り進んでいるが、イントネーションに関する録音作業が滞っている。
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Strategy for Future Research Activity |
イントネーション、リズムに関して、発音指導中に教師が使う表現と学習者の発音の変化を観察するために、授業中の教師と学習者の音声を録音する方法を模索した。しかし定期的に観察を行っている教室は、語学用のラボであり、教師は生徒の発話をヘッドフォンで聞いて発音指導などを行っている。この装置の音声を外部接続したコンピュータ、あるいは市販のハードディスクレコーダに録音する試みをしているが、ノイズの除去が困難な状況が続いている。録音時の音質の問題を早急に解決したい。発音の評価基準に関する基礎研究の一環として、異なる学習歴で、異なるレベルの学習者の発音をネイティヴが評価し、その理由を詳細に記述する形で参考資料集を作成する。収集した記述文をデータ化し、共通項目を抽出した上で、どの音声学的要素が判断基準として最も頻繁に使われるかを早急に特定したい。平行して、語学学校での授業中の発音指導を収録し、教師の指導法と、特に音素単位での学習者の発音の変化を観察する。また発音指導法に関する著書が完成次第、音韻論および音声学の基礎知識に関する講義やフランス語教師のための研修も企画したい。
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Expenditure Plans for the Next FY Research Funding |
学習者の発音を収録し、分析をするための人件費を計上していたが、録音環境が整わず、計画の一部を延期せざるを得ない状況にあった。著書の出版が決定し、データの処理やグラフ作成などに関して研究協力者の支援を必要とした。その一部の作業が2014年2月から3月に集中したため、この報酬は2014年度に繰り越しとなった。 教室での録音環境の整備。学習者の発音の収録および音声分析、測定値の統計処理などに対する報酬。発音指導に関する研修の開催。
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Research Products
(1 results)